医療センター できるか新たな地域連携 『山陽新聞』社説 2009年11月19日付

『山陽新聞』社説 2009年11月19日付

医療センター できるか新たな地域連携

岡山は「医療県」「福祉県」を自認してきた。岡山市と岡山大の協議委員会が基本構想の素案を明らかにした岡山総合医療センター(仮称)は、蓄積された地域医療・福祉の新たな展開拠点を県都で構築することを意図したものだ。

素案によると、センターはER(救急外来)と、保健・医療・福祉の連携の二本柱で構成される。岡山大と連携したER部門は24時間365日、どのような症状の患者も断らずに受け入れ、初期診療の後、症状に応じて院内の各診療科や他の医療機関に振り分ける。

一方、センター内に保健・医療・福祉連携ネットワークセンター(仮称)を設置し、予防からリハビリ、介護まで切れ目のない支援体制を整えるという。

ひっ迫する救急医療の現場にとってはメリットがある。また救急から在宅介護まで、多種多様な社会資源が必要に応じて結びつき、いのちを支えるイメージは、まさに求められる地域医療・福祉の姿だろう。だが、実現には多くの課題がある。

まず、人材が確保できるかどうか。初期診断を行う救急医や、緊急性の判断をして患者を振り分けるトリアージナースらが質量ともに必要だ。

岡山市は人口10万人当たりの病院数、医師数が政令指定都市中2位を占め、医療資源に恵まれている。だが、それだけに患者に合わせて他の医療機関と連携するネットワークづくりは簡単ではなかろう。医療機関の間の公平性の問題もある。これに多彩な保健・福祉メニューの選択を加えたコーディネート機能の確立はとりわけ難しい。

こうした問題を一つずつ解決していくには、各医療機関や関係団体などと丁寧に意見を交わし、議会や市民レベルで議論していくことが欠かせない。

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