理由もなく、適正手続にも違反する賃金の切り下げは許されない 茨城大 深谷氏

理由もなく、適正手続にも違反する賃金の切り下げは許されない

he-forumのみなさん

深谷信夫@茨城大学教職員組合執行委員長、です。

全国の国立大学法人などでは、8月の人事院勧告を根拠とする基本賃金とボ-ナスの切り下げをめぐる団体交渉が行われている。いくつかの妥結の報にも接している。もちろん、私たちの大学でも、11月12日に第1回目、11月18日に第2回目の団体交渉を行い、交渉が継続している。

そのなかで、気になることがある。
第一に、期末手当基準日支給条項という賃金規程の規定内容は確認されているのだろうか、ということ
第二に、その規程との関連で、就業規則と賃金規程の適正改定手続は手順を踏んで実行されているのだろうか、ということ
この二つの問題は、賃金交渉の最終局面を左右する重要な法律問題である。

第一の問題。
茨城大学の「基準日」規程を例にすれば、12月1日に在籍していれば、過去6ヶ月間の勤務内容にもとづいて、期末手当を受領する権利がある、ということである。例外として、12月1日に在籍していなくても、支給される場合がある。それはこういうことだ。6月からまじめに仕事をすれば、50万円のボーナスがもらえるといわれて仕事をしてきた、そして、6ヶ月間まじめに働いてきた、12月1日には、約束の50万円が12月10日にもらえることになった、という規定だ。ところが、12月10日になって振り込みを確認したら、30万円になっていた。こんなことは法律的に許されない。どうすればいいのか、どうしなければならないのか。百歩、どころか、百万歩譲って、「基準日」前の11月30日には絶対に個々の教職員に就業規則と賃金規程の改定内容を周知しなければならない。これだって、JALのような経営危機に陥っていなければ、まじめに働いた6ヶ月の最終日である11月30日に、50万円と約束したが、30万円にしてほしい、などという個々の労働者との労働契約内容の一方的変更は許されるものではない。この場面でも、充分に、法律的に争える。しかし、ここでは、議論を手続論に限定する(もう少し広い議論は、組合HP掲載の資料論文を参照してください)。

第二の問題。
11月30日までに、就業規則と賃金規程の改定内容を教職員に周知するためには、その前に、労働基準監督署に届け出なければならない。労基署に届け出るためには、その前に過半数代表者の意見聴取手続きを踏まなければならない。ともかく、すべての教職員の労働条件を変更するためには、就業規則を変更しなければならない。たとえ、労使合意が成立したとしても、就業規則の改定が行われなければならない。ここでも、どういう規定の仕方で、就業規則と賃金規程を改定するのかという問題は残る。将来にわたっての切り下げという規定にするのか、今年度の一時的な改定とするのか、もちろん、後者のように規定すべきだ。そして、団体交渉の場でも、この規定形式の問題は、議論されなければならない。さて、過半数代表者の意見聴取の前には、労働組合との団体交渉の場における誠実交渉義務が履行されなければならない。第四銀行事件最高裁判決では、就業規則による労働条件の不利益変更問題について、労働組合との誠実な交渉の結果の就業規則の不利益変更であるから、例外的に、その不利益変更も認められると判断された。だから、一回、二回の交渉で、団体交渉を打ち切って、使用者が就業規則の不利益変更に進むことは許されない。ともかく、手順を踏んで、制度変更は実施されなければならない。

さて、茨城大学の例でいえば、切り下げの理由と切り下げの内容をめぐって、団体交渉が継続されている。茨城大学教職員の賃金は、他の国立大学法人よりも低く、国家公務員よりも低く水戸市の地方公務員よりも低く、同規模の民間企業の労働者よりも低い、とくに職員は低い、という公的な機関の賃金比較を大学に突きつけている。この事実から、なぜ、賃金とボ-ナスを切り下げなければならないのかと大学に説明を求めている。そして、適正手続を踏む時間はもう残っていないということを主張している(組合は8月人事院勧告の国家公務員への完全実施閣議決定後、再三にわたり、大学方針の早期提案、団体交渉の申し入れをしてきた。しかし、大学から組合へ団体交渉の日程調整依頼がきたのは11月6日、第1回目の団体交渉開催は11月12日であった)。いずれの問題でも、学長は、明確な回答をしていない。こうした状況のなかで、大学がどういう最終提案をしてくるのか、どういう決着を迎えるのか、私も予測がつかない。まさに、団体交渉は、最終盤を迎えている。11月24日に、団体交渉は継続する。

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