日本発生生物学会会長声明 山形大 品川氏

日本発生生物学会会長声明

he-forum 読者各位   10/2

私もその末席を汚しております日本発生生物学会が,会長名で、下記の声明を発表するようです。
会員宛に送付されたメールの文章と合わせて,ご紹介致します。

品川敦紀(山形大学理学部)

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日本発生生物学会会員 各位

今般  新政府による最先端研究開発支援プログラム ,来年度科学技術予算配分方針の見直しに対して添付のような学会長声明を出しました。

特に最先端研究開発支援プログラムに関しては

*発生関連で優れた研究が採択されているのに このような見解を出すのは不適当
*採択課題が決まってから否定的声明を出すのはおかしく 選ばれた方々に良いプログラムとなるよう頑張って頂くのが 研究者として期待すべきこと
*自由競争で研究費を獲得した研究者に対して別の研究者が足を引っ張る構図となりかねない
*このような声明を出せば 結局 予算がカットされ別の財源に使われるだけだ
*もっと大きな無駄があり、日頃何も言って来なかったのに 急にこのプログラムだけに何故
*本プログラムは通常の科学技術予算とは別に 経済危機克服に産業構造を変える研究開発目的で構想されたもので 科学技術支援策として批判するのは筋違い
などのご意見があり また
*意見の分かれる政治的色彩をもつことに 学会は関わるべきではない

とのご意見もあると思います。

また 他の学会にも本件に関し呼びかけはしますが 発生生物学会長声明だけが突出し孤立する可能性もあります。

それでも と考えました。
行き過ぎた“選択と集中の論理”と “成果主義” が凌駕する 昨今の科学技術施策には 大いに疑義があり学会も 時を捉えて 疑義くらいは表明すべきではないかという考えによります。
新政府発足のこの機は 数少ない科学技術政策転換の可能性を持つ時でもあります。
かえって悪くなる可能性があるのかもしれません。

声明の責はすべて 学会長の私にあります。

掲示板,事務局へのメイル(jsdbadmin @jsdb.jp) などで ご意見をお寄せ頂けると幸いです。

なお国大協提言についてはhttp://www.kokudaikyo.gr.jp/active/5voice.htmlでご参照下さい。

日本発生生物学会会長
相沢慎一

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日本発生生物学会会長声明

新政府は先に決定された最先端研究開発支援プログラム、更には来年度の科学技術分野の予算配分方針を見直すことが伝えられている。

先の国大協アピール(6月1日)にあるように、科学技術研究活動はこれに携わる者の知的好奇心・探究心に依拠するものであり、それゆえに優れた知的・文化的価値を有することを何よりの科学技術政策の基盤としなければならない。研究者の自由な発想に基づく多様な研究の推進こそが学術政策の基本である。科学技術研究の成果を求めて研究の推進と強化を図ることが、我が国の将来と世界への貢献に必要であることはいうまでもないが、本プログラムに象徴される昨今の行き過ぎた“選択と集中の論理”と “成果主義”は、却って我が国の科学技術研究を跛行させ崩壊させるものである。

本学会は受精に始まる生命の発生の謎を解明する学術的な研究を基盤としつつ、iPS 細胞などの基礎再生医学研究の将来を展望する研究者の集う学会である。その会長として、新政府にあっては以下の点に留意して我が国の科学技術研究推進のあり方を抜本的に再検討されるよう要請する。

1) 科学技術研究の推進強化は、学術研究、基礎研究、応用研究を結びつけ、また基盤的支援と重点的支援を組み合わせて、長期的かつ総合的な計画性をもって実施されるべきである。このような研究推進の方策の原点に立ち返って、科学技術支援策のあり方を再検討されること。

2) 科学技術支援策は、研究の世界的な現状の分析と判断とを基盤として決定されるのが本来の姿である。産業界・政界などより科学技術研究の現状について評価判断や提案のあることは当然であるが、 これに偏重してはならない。科学技術支援策が科学技術研究者の判断を基盤として決定される仕組みに再構築されるよう、総合科学技術会議などのあり方について再検討されること。

平成21年10月3日
日本発生生物学会
会長 相沢 慎一

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