OECD調査 教育費増は効果的な政策で 『読売新聞』社説 2009年9月10日付

『読売新聞』社説 2009年9月10日付

OECD調査 教育費増は効果的な政策で

先進諸国に見劣りする教育予算を拡充していくことに、誰も異論はあるまい。教育政策に優先順位をつけ、着実に実施していくことが必要だ。

経済協力開発機構(OECD)が、加盟各国の教育関連データを公表した。

国と自治体を合わせた2006年の教育予算が国内総生産(GDP)に占める割合では、各国平均4・9%に対し、日本は3・3%と、下から2番目だった。

教育予算は、各国とも教員の人件費が多いが、対GDP比は、教育への取り組み姿勢を表す国際指標として評価されてきた。

注意が必要なのは、このデータは学校など教育機関への支出に限られている点だ。例えば、民主党が掲げる「子ども手当」も、幼児教育などのために確実に使われる保証がなければ、データには含まれないという。

民主党は政策集で、教育予算について、先進国の平均水準であるGDP比5%以上を目標に引き上げるとしている。

ただ、予算額は具体的な教育政策あってのものだ。数値目標だけを独り歩きさせてはならない。

昨年7月に策定された国の教育振興基本計画には、文部科学省が当初、10年間でGDP比5%まで増やすという数値目標を盛り込もうとした。

だが、その実現には7兆円余りが必要なうえ、文科省の示した内訳も粗雑な内容だったことから、見送られた。

OECDのデータには難点もあるが、重要な示唆もある。

日本は、教育支出のうち、家計を中心とする私費負担が重い。特に、幼児教育は6割近く、高等教育は7割近くを占めており、2、3割程度の加盟国平均に比べ、負担の重さが際立っている。

また、日本の高等教育予算は、GDP比では0・5%と、加盟国平均の半分にすぎない。

大学の授業料が高いのに、奨学金などを受けている学生の割合が低いことが、その一因だ。

民主党は、大学生などの希望者全員が受けられる奨学金制度の創設を打ち出している。

今年3月時点で、大学などの中退者のうち、経済的な理由によるものは15%余りを占める。経済的理由で、進学や学業の継続を断念することのないようにしていかねばならない。

同時に、日本が、科学技術立国として国際競争力をつけるためには、研究・開発費など予算の充実も欠かせない。

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