国立大予算方針 東大が異議 総長「見通し示されぬ」 『朝日新聞』2010年5月3日付

『朝日新聞』2010年5月3日付

国立大予算方針 東大が異議 総長「見通し示されぬ」

東京大学の浜田純一総長が、同大のホームページに掲載している「第二期中期目標期間の開始に当たって」とする談話が波紋を広げている。国の国立大学法人予算の方針に、「大きな不安に直面」「見通しが示されない」「中期計画の実行を危うくする」「国立大学法人制度の本旨に沿うものではない」など厳しい言葉が並んでいるからだ。

浜田総長の談話は4月7日にアップされた。

2004年度に始まった国立大学法人は、6年ごとに教育や研究、業務運営の中期計画・中期目標とその資金の裏づけになる予算書もつくり、大学から文部科学省に申請し、文部科学相の認可を受ける。

日常的な運営資金は、国からの「運営費交付金」に大きく依存しているが、全体の支給額は年々減り、04年度の1兆2400億円から10年度1兆1600億円になった。10年度の配分方法は、86の大学のうち、東大など12校がマイナス1.8%、30校が同1.4%、44校が同1.0%となっている。

浜田総長の「異議申し立て」の発端になったのは、3月17日付で文科省が、各大学の中期目標計画担当者に出した事務連絡。10年度から6年間の中期計画の予算書をつくる際、10年度の運営費交付金のマイナス比率を、毎年あてはめて計算するように指示する内容だった。

国の予算は単年度主義だが、国立大の中期計画はそれができない。このため、文科省からの連絡が届いた当日、浜田総長は本部で財務担当理事らと協議。もし10年度の対前年度比マイナス1.8%が6年間続くと、国立大学で最も予算規模が大きい東大は累積で180億円という額が減ることを確認した。実行されると、職員数や国際活動の展開、施設の維持管理など大きな打撃を受ける。

一方で、事務連絡には、今回は暫定的な措置であることが明記されていた。浜田総長は国立大学協会の会長でもあり、京大のほか、複数の学長と意見交換。その結果、東大の姿勢として中期計画には、文科省が指示するマイナス分と、意図して独自の増減ゼロの「2種類の予算書」を提出した。二つの予算書案に同調した大学は15校にのぼった。最終的に中期計画は文科省が指示したマイナスの予算で認可された。文科省によると、中期計画を見積もる際は、便宜上、10年度予算編成時と同様の考え方で試算するという。

国立大学の法人化は、大学の自立性を高め、教育や研究を活発化するという狙いだった。

しかし、運営費交付金は減り、財政的な裏打ちには、どの大学も苦慮している。こうした中、予算書作成の過程で起きた「ささやかな抵抗」。国立大学全体にまでは広がらなかったが、ある国立大幹部は「抵抗の姿勢を示したことに意味がある」。ホームページの談話について浜田総長は「今後への問題提起として、国にくぎを刺したものになったと思う」と話している。(編集委員・山上浩二郎)

《2種類の予算書を提出した15大学》

●マイナス1.8% 東京、東北、名古屋、京都、大阪、九州
●マイナス1.4% 北海道、山形、滋賀医科、神戸
●マイナス1.0% 東京芸術、愛知教育、滋賀、政策研究大学院、総合研究大学院

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