『日本経済新聞』関東・甲信越版2012年1月13日付
茨城大、工学部に防災技術など4分野の新研究組織
茨城大学は工学部の研究教育機能を強化する。防災技術など重点的に取り組む4つの分野それぞれの研究組織を月内に設置するほか、日立キャンパス(茨城県日立市)に新たな研究拠点を整備する。学内外の関係機関や企業と連携して研究に取り組み、新産業育成につなげる。研究資金の確保を巡って大学間の競争が激しくなるなか、体制強化で国の大型研究資金などの獲得を目指す。
設定した重点分野は建造物の耐震化や災害時の情報通信を研究する「防災セキュリティ技術」と福祉機器などを扱う「ライフサポート科学」、鍛造や圧延、プレスなど塑性加工の新技術開発を目指す「塑性加工科学」、環境に配慮した電子装置を探究する「グリーンデバイス」。分野ごとに工学部付属の「教育研究センター」を設けてセンター長を置き、学内外と連携して研究を進める。
日立キャンパスにはX線分析装置や電子顕微鏡といった実験装置を備えた「機器分析センター」を整備し、各教育研究センターが共同で利用できるようにする。教員の負担軽減を狙い、実験装置の操作や管理を担当する専任技術者を置くほか、企業との共同研究や国からの研究資金獲得を支援するコーディネーターや事務補佐員を雇う。
実際の研究開発では各センター長が中心になって工学部外も含めた学内の研究者と連携する。地域の企業や自治体などとは会員制の研究会を設け、産学官連携を進める。「工学部の実験設備の導入や施設整備はセンターを優先するほか、国への予算要求や大型競争資金もセンターが代表して申請する」(友田陽工学部長)という。
2004年の国立大学法人化を受けて、研究資金の獲得などを巡る大学間競争が激化した。茨城大は05年から「SCOPE計画」を打ち出し、学部や学科を超えた研究の活性化などに取り組んできた。
教育研究センターの設置により人員や資金、設備などを拡充、研究者間の連携を一層深めて独自性のある研究開発を加速させる。
15年までには毎年2件程度の大型競争資金を獲得し、企業などとの共同研究を拡大することを目指す。
25日に日立市の工学部構内で開くシンポジウムで一連の取り組みの狙いを企業や関係者に広く公開し、研究会などへの参加を促す。