研究拠点節電ショック つくば・学園都市『東京新聞』2011年4月2日付

『東京新聞』2011年4月2日付

研究拠点節電ショック つくば・学園都市

 東日本大震災は茨城県つくば市の筑波研究学園都市や周辺自治体の研究機関にも甚大な影響を及ぼしている。研究装置の損傷に加え、福島第一原発の事故で節電を強いられ、復旧もままならない。大量の電力が必要な研究機関の中には一部機能を移す動きもあり「知の集積地」の空洞化が懸念されている。 (志村彰太)

 県によると、筑波研究学園都市には二十一万人がおり、十分の一が研究者。研究機関は国、独立行政法人、民間を合わせ三百十拠点。新技術や希少金属に代わる素材などの研究を担い、日本の競争力の源となってきた。

 使う電力も膨大だ。高エネルギー加速器研究機構は、小柴昌俊・東大名誉教授がノーベル物理学賞を受賞するきっかけになった観測装置スーパーカミオカンデ(岐阜県)と共同実験しているが、一般家庭の六千世帯分に相当する電力が必要。

 同機構は損傷した機器の修復中だが、「復旧しても電力事情を考えると実験再開は難しい」とする。

 NECや日立製作所などの民間施設も「節電をしながらやるしかない」と研究の鈍化は避けられない状況だ。

 つくば以外の県内施設でも、水を原料に発電するクリーンエネルギーの実用化を目指す日本原子力研究開発機構(那珂市、原子力機構)「短期的には問題ないが、電力不足が続けば装置を動かせなくなる」という。

 機能の一部を西日本などに移転する動きも出始めた。筑波大計算科学研究センターは心臓部のスーパーコンピューターの使用を制限し、名古屋大や京都大などの設備を借りることにした。宇宙航空研究開発機構は人工衛星の開発試験を種子島宇宙センター(鹿児島県)で行うことを検討している。

 原発事故を受けた研究の停滞について、県は「事故が終息しないと流れを変えられそうにない」と声を落とす。

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