『読売新聞』 2014年2月22日付
「便利さ」追求の陰で
「大学の実力」調査によると、学生の意欲をかき立てるため、多くの大学が討論を中心にしたり、グループ学習を盛りこんだりと、授業の形そのものを工夫する。
同時に広がるのが機器や技術の活用だ。その一つがスライド式の発表用ソフト「パワーポイント」。
写真やグラフ、動画も盛りこめ、便利な教材として使われるが、首をかしげたくなる場面にしばしば出くわす。誤字や脱字、要領を得ない文章を、画面上でよく目にするからだ。ある国立大学での授業では、教員が作った教材に、「市場(史上)最高」「気候(機構)改革」など、明らかな変換ミスが続々と。
こうしたケースが例外というわけではないようで、「ソフト使用を禁止しようかと思う」とある国立大学の学長。毎回、画面を印刷した資料が配られるため、学生がノートをとらないことも心配だという。ある私立大学長は「ビジネスの現場で、誤字のある資料は相手にされないのに……」と学生への悪影響を懸念する。
大学改革のうねりの中で、授業の進め方や教材作りに工夫を重ねる教員の姿を見てきた。それだけに、こうした現状をどう受け止めたらいいのか、戸惑うばかりだ。(編集委員 松本美奈)