『読売新聞』 2014年1月30日付
大学成績表、面接前に出して…文系で導入増
「選考には影響しない」…人物理解の手がかりに
文系の学生を新卒採用する際、大学の成績表を面接前に提出させる企業が増えている。
インターネットなどで“面接必勝法”が紹介され、多くの学生が同じことを言う状態になったことを受け、面接官が学生としてやるべきことをやったかどうか見極める材料として注目しているようだ。
2012年の採用活動(13年4月入社組)以降、三井物産や帝人などが面接前の成績表提出制を導入したほか、今後導入を検討している企業もある。
大学や教員によって評価基準が異なるため、多くの企業では成績の良い、悪いで選考は行わない。選考書類に大学名の記入欄がないソニーも提出を求めるが、「成績表をみれば大学名はわかるが、選考に影響しない」(広報)と強調する。
企業側の主な狙いは、成績を面接の話題に取り上げて、知的好奇心や根気など企業人として必要な資質について「学生をより深く理解する手がかりにする」(神戸製鋼所)ことだ。例えば「興味がわかない必修科目にどう対処したか」と聞けば、気が乗らない仕事にどう取り組むかという資質を探るのに役立つという。
日本企業の採用活動は学歴主義から人物本位へと変化してきたが、大学の成績は重視されなかった。それでも理系の学生は面接で専門分野について詳しく問われることが多いが、文系の学生は一般的な話題でコミュニケーション能力を見る面接が中心だった。
帝人は、13年の採用活動から、成績表提出を面接前に早めた。人財開発・総務部の藤本治己部長は「学業に熱心な外国人留学生と比べ、日本人は大丈夫か、という漠然とした不安がある」と話す。今年から導入する三菱商事も、「やるべきことをやってきたかを評価項目の一つに加えたい」と狙いを説明している。(庄野和道)
大手就職情報サイト「リクナビ」編集長の岡崎仁美氏 「『海外の大学生は勉強熱心で即戦力』と喧伝(けんでん)される中、日本の企業も語学力などある程度基礎が身に着き、就職後もきちんと勉強して働く、まじめな生活習慣が身に着いた学生を求め始めた。そこを見極める材料の一つとして、成績表を使ってみようという動きだ。ただ、あくまで人物を見極める道具としての利用であって、(在籍大学が最優先された)学歴主義のような、成績主義にはならないだろう」