<声明> 大学自治の根幹である教授会自治を否定する学校教育法改悪に断固反対します 2014年 2月18日 日本私大教連中央執行委員会

<声明>

大学自治の根幹である教授会自治を否定する学校教育法改悪に断固反対します

2014年 2月18日

日本私大教連中央執行委員会

 

1.大学の自治が根底から脅かされようとしています。政府・文部科学省は、学長権限を

抜本的に強化するための学校教育法改正案を開会中の通常国会に提出するとしていま

す。その最大の狙いは、学校教育法第 93条を改悪し、教授会が審議する「重要な事項」

を、学位授与、学生の身分に関する審査、教育課程の編成、教員の教育研究業績等の審

査に限定して、教育研究と不可分である教員の任用、予算の編成、学部・学科の組織改

編などについて教授会に審議させないようにしようというものです。また学部長の選考

についても教授会の審議事項から除外し教員の選挙によらずに学長任命とすること、さ

らには教職員による学長選挙を否定しようとする「学長選考方法の見直し」をも射程に

置いています。

これらは日本国憲法が定める「学問の自由」を担保する「大学の自治」の根幹にかか

わる重大な改悪であり、政治権力による大学自治・大学運営への重大な介入です。私た

ちはこれを断じて容認することはできません。

 

2.学問・研究は、既存の価値や社会の在り方を批判的に検証し、深く真理を探究すると

いう人類的営為であり、学問の府たる大学は、時々の政治的・経済的・宗教的な外圧・

介入に対して自律性を確保するための努力を積み重ねることによって発展してきた歴

史があります。「学問の自由」と「大学の自治」は、学問・研究とそれにもとづいて行

われる教育の本質的性格に根ざすものであり、それゆえ高度の専門学識を担う教員集団

たる教授会は、大学の自治を担う中心的な組織です。ユネスコの『高等教育の教育職員

の地位に関する勧告』(1997年)も、教職員が予算配分等を含む大学の意思決定に参加す

ることを大学自治の原則としています。

わが国においては戦後、憲法第 23 条に規定された「学問の自由」のもとで「大学の

自治」を保障するために、学校教育法第 93 条 1 項に「大学には、重要な事項を審議す

るため、教授会を置かなければならない」と国公私立の別なく規定し、教育公務員特例

法では学長や学部長の選考、教員人事を教授会の審議事項と定めました。こうした理念

と法的枠組みは、私立大学を含めて歴史的に確立されてきたものです。

したがって、学部長等の選考や教員の任用は「経営に関する事項」であり教授会で審

議すべき事項ではないとする主張は誤りです。日々の教育活動に直接的な責任を負って

いる教員集団が、教育課程の編成等の教育活動と密接不可分にある教員人事を審議し、

また自らの長を自ら選出することは、大学に最もふさわしい民主的な手続きです。これ

ら人事に関する事項を、法令改正によって強制的に教授会の審議事項から除外すること

は、大学の自治の根幹を脅かすものに他なりません。

 

3.学校教育法改正によって教授会の権限を制限することは、戦後、大学人が営々として

築いてきた大学の自治の理念と制度を根底から否定するものであるばかりか、とりわけ

私立大学にとっては死活的に重大な問題を生起させることになります。

わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・父

母の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展

を遂げてきました。研究面においても、理系文系を問わず多様な分野において学術研究

の発展に寄与してきました。しかしながら、一部の私立大学では、理事会による教授会

を無視した専断的な運営が行われ、そのことに起因する不祥事が後を絶ちません。この

ような私立大学では学長の権限強化は理事長・理事会の権限強化につながります。2013

年 3月に文部科学大臣の解散命令を受けた群馬県の学校法人では、理事長・学長に権限

を集中させて教授会を無視した専断的な大学運営・学校法人運営を続けてきたことによ

り、社会的信頼を失墜させ経営破たんに至ったことが明らかになっています。

私たち日本私大教連は、私立大学の公共性を担保するための私立学校法の改正を提言

しています。私立大学における教育・研究の質を向上させるためには、教授会自治を尊

重した民主的な大学運営の確立が不可欠です。教授会の権限を縮小させ学長の権限を強

化する学校教育法改悪は、私立大学の専断的運営にいっそう拍車をかけ、私立大学の教

育・研究の発展を阻害するものに他なりません。

 

4.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探

究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるととも

に、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体

の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命を果たすことが求められています。こ

うした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主

性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と

定めています。大学の目的と組織原理は、利潤の最大化を目的とする企業のそれとは決

定的に異なります。政府・文部科学省、財界はこのことを厳粛に受け止め、学校教育法

改正方針を撤回すべきです。

私たちは、教授会の自治と大学の自治を根底から破壊する今回の法改正等に断固とし

て反対するとともに、すべての大学人が反対の声をあげることを呼びかけるものです。

 

 

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