『読売新聞』社説 2014年1月18日付
センター試験 改革に功罪の検証は不可欠だ
大学入試センター試験がきょうから2日間、実施される。
参加する大学・短大は843校で、志願者は56万人にのぼる。
多くの受験生が日夜、勉強に励んできたことだろう。試験では実力を存分に発揮してほしい。
試験を実施する大学入試センターと各大学の担当者は、一昨年に起きた問題冊子の配布ミスなどのトラブルを繰り返さぬよう、気を引き締めて臨む必要がある。
センター試験は1990年に導入された。共通一次試験から衣替えし、私立大にも参加の道が開かれた。現在、私立大の約9割が利用している。
推薦入試や、面接などによるAO(アドミッション・オフィス)入試と併用する大学もある。
大学進学に必要な基礎的学力を身に着けているかどうかを判定するための共通試験として、定着してきたと言えるだろう。
試験の問題は、大学教員らが2年近くの時間をかけて作成している。難問奇問を排した良質な問題が多いと評価が高い。
一方、出題科目数は、高校の授業内容の細分化で6教科・29科目にまで増えた。各大学はアラカルト方式によって、利用科目や科目数を自由に決められる。受験生から見ると、科目選択が複雑になり過ぎているのではないか。
加えて年1回の試験結果が受験の成否を大きく左右することが、受験生に過度の心理的負担を強いている面は否定できない。
全国の会場で50万人以上が一斉に受験する現行方式では、スムーズな運営が困難になっているとの指摘もある。
センター試験を巡っては、中央教育審議会で見直し論議が進んでいる。「達成度テスト」の創設を柱とする政府の教育再生実行会議の提言を受けたものだ。
提言は、高校生の基礎学力の到達度を測る「基礎」レベルと、大学の一般入試で活用する「発展」レベルのテストを新設し、それぞれ複数回の受験を認めるよう求めている。これが実現すれば、大学入試は大きく様変わりする。
挑戦する機会が増えるのは、受験生にとって望ましいことだ。
一方で、達成度テストには、出題科目はどうするのか、試験の運営はどこが担うのかといった検討すべき課題が多い。
入試改革は、受験生や教育現場に与える影響が極めて大きい。
まずは、センター試験の功罪をしっかりと検証し、議論を尽くすことが肝要だ。