【奨学給付金創設】さらに充実、拡大を 『福島民報』論説 2014年1月10日付

『福島民報』論説 2014年1月10日付

【奨学給付金創設】さらに充実、拡大を

政府が返済不要の「奨学給付金」制度創設を決めた。平成26年度から、低所得世帯の国公私立高生を対象に、年間で最大十数万円を支給する。教科書代や通学費にも使える。今春からの高校無償化への所得制限導入で生じる28億円を原資に充てる。教育格差による「貧困の連鎖」に歯止めをかける一助ともなろう。今回の創設を手始めとして、給付型奨学金の充実や対象拡大など、制度の見直しや改善を進めたい。

給付型奨学金の詳細は国会の予算審議を経て正式に決まる。都道府県の取り組みに対する補助として支出する予定で、各自治体で内容が違ってくるという。今後、中学三年生が進路を最終決断する時期を迎える。金額や基準、手続きを早急に示してほしい。

高校無償化が22年に始まり、高校生を持つ家庭の教育費負担は多少軽くなったはずだ。しかし、遺児らを支援する「あしなが育英会」は、同会の奨学金を貸与している高校生のうち、経済的理由で進学を断念して就職を選ぶ割合が2年前より大きく増えている-との調査結果を先月発表した。教育費は66・5%が「不足している」と答えた。

本県では、東日本大震災が追い打ちを掛ける。筆者は同震災復興支援財団が設けた高校生対象の給付型奨学金の選考に関わってきた。「親の仕事先がなくなって収入が激減した」「住宅が破損し、修理に多大な費用が掛かる」「家族がばらばらになって家計費が増えた」…。震災発生から3年近くがたっても、支給を申請する高校生は依然多い。原資には限りがある。公的な制度や安定財源が不可欠だ。

大学に進学すれば、負担はもっと膨れ上がる。日本学生支援機構の育英奨学金は大学生ら130万人以上が利用する。卒業後に返還する「貸与型」が大半で、利息の付く「有利子枠」が半数を超す。

就職難や非正規雇用の増加で収入が不安定となり、返済に苦しむ人が増えている。滞納者は、ここ10年で2倍にもなった。滞納には年利10%の延滞金が加算されるため、解決を難しくしている。あしなが育英会や日弁連などが給付型奨学金創設などを文部科学省や同機構に求めていた。

同省も「学びセーフティーネットの構築」として、26年度予算案に奨学給付金創設に加え、奨学金の「無利子枠」拡大や猶予期間の延長、延滞金の金利引き下げなどに伴う費用を盛り込んだ。

教育は、国の未来をひらく原動力だ。若者が安心して学べる環境づくりに、力をさらに注ぐべきだ。(鈴木 久)

 

 

 

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