『日本経済新聞』2013年12月23日付
投資で稼ぐ米大学 寄付金元に基金で運用
エールは収入の36%、ハーバードも32%
日米の大学の収支構造を比較してみたところ、収益源の多様化という点で米国が進んでいることが分かった。日本の大学は国立大であれば国からの交付金が収入全体の3~4割程度、私立大は入学金や授業料が同じく半分以上と、大きな比率を占めている。これに対して米国の主要私大は株や債券などの投資収入で稼ぐ比率が高い。
専修大の小藤康夫教授(金融論)が米国の主要私立大5校の収入構造を調べたところ、総収入に占める資産運用など投資収入の比率が平均で3割弱に達することが分かった。具体的にみると最も比率が高いエール大は約36%に達し、ハーバード大が約32%と続く。主に株や債券、不動産などに投資して運用収益を稼いでいるという。
背景にあるのが米国の「寄付金文化」だ。卒業生などから受け取った多額の寄付金を元に大学外に設けた基金で運用し、得られた収益を大学が受け取る仕組みだ。基金の運用にはニューヨークのウォール街の第一線で活躍している投資のプロを招くこともあるという。
これに対して日本は投資で稼ぐという文化は希薄だ。そもそも国立大は国債などを除いてリスクの高い金融商品への投資を禁じられている。資産運用で得た収入を示す「財務収益」が2012年度で国立で最多だった東京大でも4億円と、収入全体に占める比率は0.2%。資産運用に積極的な私大の中で「資産運用収入」が最大だった慶応義塾大でも、2.5%にとどまる。交付金や学費が元手では、リスクの高い運用は難しい。
産業競争力強化法施行により、国立大は来年4月からベンチャーキャピタルへの出資も可能となる。だが、「運用益を得るというより、大学に眠る『技術のタネ』を育てる」(文部科学省)という側面が強い。
小藤教授は「少子化が進むなか、大学の収入源の多様化を図ることが必要。中長期的には日本でも投資収入の重要性は高まる」とみている。