国立大の利益、東大が首位 私立は近畿大 12年度『日本経済新聞』2013年12月22日付

『日本経済新聞』2013年12月22日付

国立大の利益、東大が首位 私立は近畿大 12年度

少子化による学生数の減少など厳しい環境が続く中で、2012年度に安定的に利益を稼いだ大学は――。全国の国立と主要私立の計129大学の決算を調べたところ、国立では東京大学、私立では近畿大学がそれぞれ首位となった。国からの交付金は減少傾向だが、付属病院の収入増などが寄与して高水準の利益をあげた。

全国の86国立大(大学院大学を含む)と、大学・大学院の合計学生数が1万人超などの基準で43の私立大(学校法人)を対象に初めて集計した。傘下の小中高の経営成績も含む。企業の最終的なもうけを表す純利益に当たるものとして国立大は「当期総利益」、私立大は「帰属収支差額」を使って比較した。

国立大は収入の3~4割程度に当たる交付金が削減傾向にあるうえ、施設関連の費用増も響いて当期総利益の合計は11年度から3割超減った。12年度に当期総利益が改善したのは全体の3割強の29大学にとどまった。

こうした中で当期総利益が45億円と首位だったのが東大だ。交付金減少を背景に利益額は約4割減ったが、授業料収入は3%増加。また診療報酬の引き上げを背景に「病院収入が安定して伸びた」(同財務部)。特許料、病院収入、授業料などの合計は634億円と法人化した04年度以降で最高となった。

授業料収入をみると、2位の東京医科歯科大学が約1割、3位の大阪大学もわずかに増加。上位の大学ほど安定的に授業料収入を増やしている。

私立大は売上高にあたる「帰属収入」が43大学合計で約1兆8700億円と2%減った。国立大と違い授業料や入学金の比率が半分以上を占める。企業、OBの寄付金が減った大学も目立った。

私立大で帰属収支差額が首位の近畿大学は約3万1千人と、私大屈指の学生数を抱える。10年に総合社会学部を新設した効果もあり「授業料収入の伸びにつながった」(同財務部)。2位の帝京大学も微増となり、国立大と同様に授業料の伸びが収益安定化のカギとなっている。

私立大では11年度に教職員の退職給付費用を一括処理した結果、12年度の負担が軽くなったところが目立つ。近畿大は黒字転換の一因となり、立命館大学はこの理由で黒字がほぼ倍増した。全体の約6割の26大学で帰属収支差額が改善した。

大学は稼ぐことが目的ではない。だが経営力が高いほど教育・研究施設の充実に向けた投資もしやすくなり、大学の魅力度向上につながる。NPO法人「21世紀大学経営協会」の関昭太郎副理事長は「少子化、国際化など大学の課題は山積している。教育内容だけでなく、財務基盤の充実が重要」と指摘する。

大学は稼いだ収益の一部を国立大だと目的積立金、私立大では基本金として資本に組み入れ、施設の充実など今後の投資の原資に活用できる。(関連記事を23日付大学面に)

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