大学の危機さらに加速  安倍内閣の「大学改革」 自治の保障、予算増こそ 『しんぶん赤旗』2013年11月25日付

『しんぶん赤旗』2013年11月25日付

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大学の危機さらに加速  安倍内閣の「大学改革」 自治の保障、予算増こそ

改正 充(かいしょう・みつる)

安倍内閣は、6月に決定した「日本再興戦略」で大学改革を「成長戦略」の一環に位置付けました。目玉は「世界大学ランキング100に10校以上入れる」というものですが、内容は大掛かりな大学の反動的再編になっています。2001年以来の「大学の構造改革」の第2ラウンドといえます。

安倍内閣の大学改革の特徴の第一は、「産業競争力強化の観点」から、財界・多国籍企業が求める「グローバル人材」「イノベーション人材」を養成する大学に資金を重点投入し、他の大学を切り捨てることです。

予算を大幅削減

国が「スーパーグローバル大学」と指定する10校に対して、年間100億円を投入します。さらに、国から各国立大学に交付する基盤的運営費の配分を見直し、約1兆円の交付総額のうち3~4割を、国が求める改革を断行する大学に集中配分するとしています。この10年間に年1700億円も削減した大学予算が、多くの大学でさらに大幅な削減を余儀なくされます。

大学教員1500人のポストを外国人研究者に置き換えることとあわせて、大学教員の給与を年棒制にするとしています。年棒制とは、国が交付する退職金をなくし、毎年の業績評価で給与額を決めるシステムであり、いっそうの給与削減と過度な競争に大学教員を追い込むものです。そして、「優秀な若手・外国人材のポスト・給与」の財源にしようというのです。

第二は、文科省が「国立大学改革プラン」として全国の国立大学ごとに改革方針を策定し、「世界水準の教育研究」、「全国的な教育研究」、「地域の中核」など3段階の大学群に分化・差別化することです。そのために、文科省は各大学に対して「それぞれの大学の強み、特色を示す」として具体的な目標や組織改革を提示し、その承認を求めています。

こうした押し付けは、大学間の格差をいっそう広げるばかりか、大学の自主性を大きく損ない、各大学の教育研究がもつ多様な役割をゆがめることになります。宮本岳志議員が衆院文科委員会(11月1日)で追及したように、文科大臣が策定する各大学の中期目標については「国立大学法人が作成する原案を最大限尊重する」とした03年の答弁にも反しています。

第三は、こうした政府の意に沿った改革を各大学で推進するために、「学校教育法の改正など、抜本的なガバナンス改革を行う」、「教授会の役割を明確化する」として、「大学運営決定への教授会の関与の排除」を検討していることです。

教授会は大学の自治をささえる基本組織です。大学の学長などが教授会の多様な意見を尊重し、その総意にもとづいて運営するからこそ、「学問の府」にふさわしい優れた研究をうみだしてきたのです。教授会の権限を奪い、大学運営から排除するなら、その活力が消えうせ、大学自治は崩壊してしまいます。

わが国の大学は、長年の自民党政治によって、深刻な危機に追い込まれています。雑誌『Nature』の調査では、日本の研究者の「処遇満足度」は先進国で最下位となり、学術論文数も唯一日本だけが減少しています。安倍内閣がねらう大学改革は、こうした危機をいっそう加速させるだけです。

共産党 改革提案

日本共産党は、大学の危機を打開するための「大学改革提案」を10年6月に発表しました。その柱は、①大学の基盤的経費の増額と基礎研究支援の拡充をはかる、②大学の自主性を弱めた国立大学法人制度をみなおし、“自治と民主主義”を保障する、③高等教育の段階的な無償化や若手研究者の採用をひろげる、④大学への公費支出を欧米並みにひきあげるというものです。

この方向へ大学政策を転換してこそ、日本の大学が世界に誇りうる研究と教育を発展させていく最も確かな道が開けます。

(党学術・文化委員会事務局次長)

 

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