大学入試改革  課題多く説得力欠く提言だ 『宮崎日日新聞』社説 2013年11月9日付

『宮崎日日新聞』社説 2013年11月9日付

大学入試改革  課題多く説得力欠く提言だ

政府の教育再生実行会議は、現行の大学入試制度を改め、達成度テストを導入するよう提言した。実現すれば、1990年から続いてきたセンター試験は終わり、制度は大きく転換する。

だが、提言にある制度改革の理由に十分な説得力はない。制度設計を審議する中教審は、蒸し返しとの批判を恐れずに根本的な検討をするべきだ。

■AOや推薦を問題視■

提言によると、達成度テストは、基礎的な学習到達度をみる「基礎レベル」と、大学教育を受ける能力を判定する「発展レベル」の2種類。センター試験を引き継ぐ「発展」は年に複数回実施、一発勝負の圧力から受験生を解放する。学力は1点刻みではなくランク分けして評価、知識偏重からの脱却を目指すとしている。

現在、センター試験の点差だけで合否を決めるのではなく、2次試験で論文や面接を課して多様な学生を受け入れる大学・学部も増えている。

人物重視のアドミッションオフィス(AO)入試や推薦入試も広がり、この二つの制度で入学する学生は4割を超える。提言は両制度をやり玉に挙げ「事実上、学力不問の選抜になっている」と批判したが、それはセンター試験の罪ではあるまい。

提言はセンター試験の問題点として「多数の出題科目の準備や約55万人が同時に受験するため運営にかかる負担が増大し、限界に達している」とも指摘する。そうであれば、同種の共通テストを年間に複数回実施することはもっと困難なのではないか。

全高校生が参加する可能性のある「基礎」も複数回実施するとなれば、誰が問題を作り、誰が試験を監督し、採点するのか。その点も課題となってくる。

■年2回は過去に頓挫■

「発展」の複数回実施には、入試の通年化や事務負担の増加を理由に、高校や大学が反対する可能性が高い。実際、2000年に大学審議会がセンター試験の年2回化を求めたときは、高校や大学の反発が強く、頓挫している。

参考にするべきは1999年の中教審答申ではないか。学生に対しては、偏差値で大学を選ぶのではなく、入りたい大学を主体的に選択するよう求めた。また大学には「求める学生像」を明示し、テストで振り落とすのではなく、教育理念に合った生徒を見いだす力を要請した。

入試を学生と大学と「よりよい相互選択」にしようという考え方であり、今回の提言が、グローバル化や少子化の中で、国に資する人材を育てるという視点に貫かれているのとは対照的だ。

入試制度を改革するのなら、何も高校生や浪人生だけを対象に限った話ではないだろう。本当に学びたいことがみつかったときに再挑戦できる社会人入学や、編入学の道を大幅に拡大するという方法も考えるべきではないか。

 

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