大学入試改革 教育現場が納得してこそ 『西日本新聞』社説 2013年11月8日付 

『西日本新聞』社説 2013年11月8日付

大学入試改革 教育現場が納得してこそ

大学入試センター試験の前身だった共通1次試験が導入されたのは、1979年のことだ。

それ以前の国立大学は二つのグループに区分され、1期校が3月上旬、2期校が同下旬に各大学独自の入試を実施していた。

90年からは私立大も参加するセンター試験となって現在に至っている。その入試制度が、大きく変わることになるのだろうか。

政府の教育再生実行会議が、大学入試改革案を安倍晋三首相に提言した。センター試験に替え、1点刻みではなく一定幅の段階評価とする共通試験の導入が柱だ。2次試験でも、面接や論文を重視するよう各大学に求めている。

30年以上続いて定着している受験方式だけに、全面的に改めるとなれば教育現場に与える影響も大きい。受験生や高校、大学の理解と納得が不可欠で、まずは関係者への丁寧な説明が必要だろう。

新制度は高校在学中に学習到達度を測る新たな「基礎レベル」テストの創設も盛り込み、段階評価の共通試験となる「発展レベル」と合わせた2本立ての「達成度テスト」(仮称)とし、ともに複数回受験できるようにする。

試験は発展レベルが2次試験の基本的な資格になり、基礎レベルが推薦やアドミッション・オフィス(AO)入試の参考になる。

ただ、課題も多い。試験の実施主体となる組織や、対象教科などは決まっていない。複数回の試験実施についても、大規模に何度も行うのは難しいとの見方がある。

人物重視の選抜も「言うは易(やす)く行うは難(かた)し」である。多大な費用と時間を要し、多くの大学が挑戦しながら撤退してきた。多数の志願者がいる大学では、全員を面接するのは物理的にも困難だろう。

難問や奇問をなくして「入試地獄」を緩和する目的で導入された共通試験だったが、結果的に大学の序列化が進んだことは否めない。大学の使命や役割も、時代の変化や社会のニーズとともに変わってきたはずだ。「大学とは何か」という根本的な視点から入試のあり方を考える時期に来ている。

 

 

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