[大学入試改革] 一発勝負の軽減目指す 『南日本新聞』社説 2013年11月7日付

『南日本新聞』社説 2013年11月7日付

[大学入試改革] 一発勝負の軽減目指す

政府の教育再生実行会議は、現行の大学入試センター試験に替え、1点刻みではなく一定幅の段階評価とする共通試験の導入を提言した。

高校在学中に学習到達度を測る新たなテストの創設も求め、共通試験と合わせた2本建ての「達成度テスト」を年に複数回受験できるようにして受験生の一発勝負のプレッシャーを軽減する。

入試で実際に評価される受験生の能力と、大学側が本来求めている能力のギャップを少しでも埋めようとの狙いである。だが、実現に向けては大学、高校関係者の理解が不可欠で課題も多い。今後具体的な審議をする中教審には慎重な制度設計を望みたい。

提言によれば、達成度テストは基礎的な学習到達度をみる「基礎レベル」と、大学教育を受ける能力を判定する「発展レベル」の2種類で、後者がセンター試験を引き継ぐ。学力は点数に応じて複数段階に分類して、各大学の2次試験の基礎資格とする。

だが、現在でもセンター試験の点数を重視した選抜だけでなく、2次試験の論文や面接を通して多様な学生を受け入れる大学は増えている。人物重視のアドミッションオフィス(AO)入試や推薦入試も広がり、一発勝負とは無縁のこの二つの制度で入学する学生は4割に達している。

提言は、学力低下の原因として二つの制度をやり玉に挙げ「事実上、学力不問の選抜になっている」と批判した。確かにAOなどの多くは学力試験を課さないため、入学後の学力が問題になることがあるという。基礎レベル達成度テストを新設することで、学力の底上げも同時に図ることができるということなのだろう。

だが、提言は一方でセンター試験の問題点として「多数の出願科目の準備や、約55万人が同時に受験するための運営にかかる負担が増大し、限界に達している」とも指摘した。提言は2本建ての達成度テストを年に複数回実施するとしているが、もっと困難なのではないか。

高校で受けることになる基礎レベルテストについても、誰がレベルを設定し問題を作るのかさえ分かっておらず、新たな負担が増える教育現場の反発が予想される。提言の掲げる理想はよいが、これまで以上に手間のかかるシステムになることは間違いあるまい。

下村博文文部科学相は、新たなテストの導入は5、6年先との考えを示したが、高校教育を巻き込んだ改革に発展する可能性がある。関係者の意見を十分聞きながら実現への道を探ってほしい。

 

 

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