【大学入試改革】「人物重視」をどう具体化『高知新聞社説』 2013年11月2日付

『高知新聞社説』 2013年11月2日付

【大学入試改革】「人物重視」をどう具体化

大学入試を点数から人物重視へ―ぜひとも実現したい改革だが、どう具体化するかが問題だ。

政府の教育再生実行会議が大学入試改革を安倍首相に提言した。大きな柱は現行の大学入試センター試験から、複数回受験できる2種類の「達成度テスト」(仮称)への変更だ。

センター試験は、共通1次試験を引き継ぎ1990年に始まった。一発勝負、1点刻みの結果が志望大学選択に直結するため、受験生の大きな心理的負担になってきたのは確かだ。

この状況を踏まえて提言は、1点刻みの選抜をやめ、一定幅の段階評価とすると明記した。複数回の受験機会を設け、面接や論文、留学・ボランティア経験など多様な観点での選抜を大学側に求めた。

さらに高校在学中にも基礎レベルの達成度テストを複数回実施する。結果は推薦入試やアドミッション・オフィス(AO)入試で参考にするよう大学に要望するという。

提言通りに入試改革が進むと、点数至上主義からの大転換となる。ペーパーテストでは分からない、豊かな発想力や経験を持った若者が希望大学に合格するかもしれない。

ただし、実現には課題が多い。

例えば、人物重視の代表的な選抜方法・AO入試を実施する大学は2000年以降増えていたが、最近は廃止、縮小が目立ち始めた。

大きな要因は、長時間の面接や論文審査など選考側にかかる負担の重さだ。私立大には受験者が10万人を超すマンモス校がある。面接や論文による丁寧な選抜は理想だが、提言通りに対応するのは事実上不可能だろう。

2種類の達成度テストを、どの組織が作成し、いつ実施するかも大きな問題だ。複数回用意するとなると作成者も一定数そろえる必要がある。実施時期によっては受験勉強が前倒しされる懸念がある。

そうした大事な制度設計について教育再生会議は何も示していない。中央教育審議会に丸投げした格好だ。

下村文科相は改革時期を「5、6年先」としたようだが、大学入試の在り方は小中高校の教育とも深く関係する。教員や保護者、受験生らの意見を聞き、慎重に制度を整えてほしい。

教育立国・日本の入試制度の足腰が定まらないようでは、将来の人材育成で大きなマイナスとなる。

 

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