【未来支援センター】国が事業資金確保を 『福島民報』論説 2013年11月4日付

『福島民報』論説 2013年11月4日付

【未来支援センター】国が事業資金確保を

福島大の「うつくしまふくしま未来支援センター」が発足3年目を迎えた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に見舞われた本県の復興を目的に設立され、避難者の生活や帰還の支援、産業や地域復興など多方面で大きな成果を上げている。

文部科学省はセンター運営のための補助金を支給するが、支給年限は平成27年度まで最長5年だ。原発事故の避難が長期化する中、センターによる支援は今後も欠かせない。国は、運営費を大学の恒久財源として確保し、活動を支えるべきだ。

センターは震災と原発事故発生直後の23年4月に入戸野修学長が設立を宣言し、始動した。現在、中井勝己センター長はじめスタッフ63人が大学が持つ専門的知見を生かして、被災者に寄り添う現場第一主義の姿勢で活動に取り組む。

農地・住環境空間放射線量マップを作り、水稲を試験栽培した。風評克服へ県産品販売の「ふくしま復興!マルシェ」を開いた。南相馬市の委託を受け、避難者の自宅帰宅用の大型タクシー運行を支援する。被災地に残された文化財の救援・修復を進めた。富岡町おだがいさまセンター運営を支援する。双葉郡8町村住民の被災実態も調べた。

県内外に散り散りの子どもと保護者が交流する「郷土に想[おも]いを寄せる同窓会事業」を展開している。子どもたちの遊びや学習を手助けし、保護者向けの相談室も開く。飲食物による被ばく線量評価、放射線理解へ住民や市町村職員の研修会も開催する。

国は、センターの事業を高く評価する。被災地の文化財救援・修復事業は今年3月に文化庁長官感謝状を受けた。同窓会事業は今年度版の文部科学白書に復興を担う人材育成の好例として紹介された。

国の補助金は初年度の23年度に1億5千3百万円、24年度に1億3千万円、25年度に1億2千万円拠出されたが、補助金だけで事業費は全て賄えない。3年間に寄せられた寄付などの外部資金約3億円が頼りだ。

同様の補助金は福島大のほか福島医大、いわき明星大にも支給されている。宮城、岩手、青森の震災被災県の大学も活用する。本県は震災に加え原発事故との複合災害の渦中にある。廃炉まで40年、復興へ長く細く険しい道のりが見込まれる。

県内大学の支援事業は本県の未来を照らす一筋の光だ。国は外部資金で賄う分も含めて、事業費を大学の恒常的財源である運営費交付金に転換してほしい。(小池 公祐)

 

 

 

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