『宮崎日日新聞』 2013年10月6日付
法曹養成改革 需要拡大や制度手直し急げ
政府は法曹養成制度改革推進会議を発足させた。適正な法曹人口の調査や法科大学院改革の検討を進め、2年以内に結論を出すとしている。
司法試験合格者を年間3千人まで増やす計画が閣議決定されて11年。今年7月の関係閣僚会議でこの数値目標が撤回された際に、谷垣禎一法相は「弁護士過疎の解消や企業内弁護士の増加など一定の効果もあった」と述べた。だが弁護士の大都市部偏在は相変わらずで、司法サービスを国内に行き渡らせるとの目標からは程遠い。
さらに弁護士は増えたが、訴訟や法律相談などの需要は伸びず、難関を突破したのに「就職難」の時代を迎えている。全国各地に次々開校した法科大学院は司法試験の合格率低迷と志願者減少に悩まされ、募集停止に追い込まれたところも少なくない。
法曹需要拡大や現行制度手直しなどやるべきことは多い。これ以上の先送りは許されず、早期に具体的改革の道筋を示すべきだ。
■合格率が低い大学院■
今年の司法試験合格者は昨年より53人減の2049人。合格率は26・8%で1・7ポイント上昇した。うち法科大学院修了者は1929人で合格率は25・8%。受験資格を原則として大学院修了者に絞るに当たり「7~8割の合格」が想定されたが、20%台の低迷が続く。
出身校別の合格者数を見ると、74校中の上位10校が全体の6割を占める一方で、1桁が35校、ゼロもあった。
文部科学省は、実績が低い18校に対する2014年度の補助金を削減することを決めた。推進会議では、合格率の低い大学院については、修了しても受験資格を与えないなどの法的措置を取れる制度の導入も検討されるという。だが根本的な解決にはつながらないのではなかろうか。
■弁護士急増で就職難■
法科大学院制度は、実務能力と見識を備えた多様な人材の確保を目指した。だが司法試験に合格する受験技術を優先する傾向は根強く、大学院離れの一因になっている。5年間に3回という受験回数制限の緩和や試験科目の見直しなどは避けて通れないだろう。
弁護士が活躍できる場の確保も急がねばならない。3千人計画以降の10年で法曹人口は1万3千人増えたが、裁判官や検察官の増員は財政事情から難しく、弁護士が急増する結果を招いた。大学院時代に奨学金を借り、司法試験に合格して司法修習生になってからは生活費などの貸与を国から受け、晴れて法曹資格を手にしても仕事がないのでは安心して法曹を目指すことはできない。
国や企業、自治体が連携していっそうの雇用拡大を図る必要がある。また裁判所法は修習生が働くことを禁じているが、2年前に給費制から貸与制に変わってからは、かなり重荷になっているという。そういう点にも目配りが必要だろう。