『毎日新聞』埼玉版 2013年9月21日付
奨学金:返済に苦しむ若者、支援へネットワーク 弁護士や大学教授ら
大学時代に借りた奨学金の返済に苦しむ若者を支援し、返済不要の奨学金創設などを求めようと弁護士や大学教授らが「埼玉奨学金問題ネットワーク」を設立する。失業や低賃金のため返済できない若者が増えており、同ネットは28日に設立総会と弁護士による無料相談会を開き、実態把握を始める。【西田真季子】
◇半数が利用
景気悪化で親の収入が減ったことなどから、大学生の約半数が奨学金を利用しているとされる。このうちの約7割が利用する独立行政法人「日本学生支援機構」(旧日本育英会、本部・横浜市)によると、2011年度に同機構から奨学金を受けた人は約129万人。うち約7割の91万人が利息付きの貸与奨学金を利用しているという。
◇重い負担
同ネット代表に就任する聖学院大学(上尾市)政治経済学部の柴田武男教授によると、利息付き奨学金を上限いっぱいまで借りると返済額は総額840万円以上に上る。20年返済で月額約3万5000円となり、就職したばかりの若者や増加している非正規労働の若者には重い負担だ。
◇督促強化
また、10年ごろから機構による取り立てが強化された。延滞3カ月で一般のローンが組めなくなるブラックリストに登録され、延滞9カ月でほぼ自動的に裁判所に支払い督促申し立てをされるという。
柴田教授は「返済型の奨学金は、知識がないまま18歳で背負わされる借金だ」と強調。奨学金返済に苦しむ若者に身近な場所で相談してもらおうと、県内で多重債務問題に取り組んできた司法書士、弁護士らが同ネットの設立を決めた。
28日は午後1時半から、埼玉教育会館202号室(さいたま市浦和区高砂3)で大学生や奨学金返済をしている若者、高校教諭らによる実態報告と弁護士らによる奨学金問題の説明などが行われる。参加、相談ともに無料。問い合わせは埼玉総合法律事務所(電話048・862・0355)の鴨田譲弁護士まで。