『読売新聞』社説 2013年9月17日付
法科大学院 優秀な人材をどう集めるか
このままでは、優秀な人材が法曹界に集まらなくなるのではないか。
法曹養成の中核である法科大学院が、危機的な状況に陥っている。
今年の司法試験で、法科大学院の修了生の合格者は1929人、合格率は約26%と低迷を続けている。当初想定された7~8割という合格率には遠く及ばない。
こうした現状から、学生の法科大学院離れは進む一方だ。入学志願者は減少し、今春はピーク時の5分の1に落ち込んだ。
大学の法学部人気も低下しており、国公立大学では法学部の志願者がこの2年で約1割減った。
三権の一角を担う法曹界を目指す若者が減れば、法治国家の根幹が揺らぎかねない。
法科大学院は、「質・量ともに豊かな法曹を育てる」という司法制度改革の理念の下、2004年に開校した。専門知識と法的分析力を備えた即戦力の実務家を育成することが期待された。
ところが、文部科学省が広く参入を認めた結果、74校が乱立し、司法試験の合格者数が1けたにとどまるところが続出した。
文科省は来年度、司法試験の合格率低迷など、実績を上げられない法科大学院18校の補助金を減額する方針だ。統廃合を促す狙いがある。養成機能を果たせない法科大学院の淘汰(とうた)はやむを得ない。
一方、法科大学院を修了せずに司法試験の受験資格を得られる「予備試験」経由者の合格が急増している。今年は前年の約2倍の120人を数えた。
予備試験は、経済的理由で法科大学院に通えない人にも司法試験に挑戦する道を開くために設けられた。にもかかわらず、今年の司法試験に合格した予備試験組には法科大学院在学生が目立つ。
法科大学院で学ぶ過程を省く「近道」として予備試験を利用する人が増え続ければ、法科大学院の空洞化が進むだけだ。
法科大学院制度を維持するなら、修了者に対し、司法試験の受験回数の制限を大幅に緩和するなど、学生が法科大学院に進みたいと思うような見直しが必要だ。
無論、法科大学院にも教育の質向上の取り組みが求められる。
司法試験に受かり、弁護士になっても、働き口が見つからない状況も深刻だ。将来の展望が開けないのでは、学生が法曹界を敬遠するのも無理はない。
自治体や企業による雇用拡大など、弁護士の活動領域を広げる方策について、政府と法曹界は早急に検討すべきだ。