[14年度概算要求]将来像がよく見えない『沖縄タイムス』社説 2013年9月2日付

『沖縄タイムス』社説 2013年9月2日付

[14年度概算要求]将来像がよく見えない

2014年度予算に対する各省庁の概算要求が出そろった。一般会計の要求総額は、公共事業など各分野で軒並み増額され、過去最大の約99兆2千億円に膨らんだ。本年度予算を7兆円近くも上回っている。

1千兆円を超える借金を抱え、財政危機が叫ばれているにもかかわらず、概算要求からは危機感が伝わってこない。古い自民党に逆戻りしたかのような、メリハリを欠いた要求内容だ。

「財政再建」と「経済成長」を両立させる予算要求だと言えば聞こえはいいが、財政規律を失えば後が怖い。

内閣府沖縄担当部局の要求額は3407億6800万円。沖縄関係予算も要求額が大きく膨らみ、本年度当初予算(3001億円)を406億円余りも上回った。

来年1月からの着工を念頭に、那覇空港第2滑走路の増設事業費として300億円(13年度予算130億円)を要求した。予算化されれば、これが最大の目玉となるが、クリアすべき点も多い。

防衛省は15年度末までに那覇基地のF15部隊を現在の1個飛行隊から2個飛行隊に増やす計画である。第2滑走路を建設した場合、民間機と自衛隊機の運用形態はどうなるのか。自衛隊が一つの滑走路を独占するとなると、沖縄振興予算を使って滑走路を増設することに疑問が生じるだろう。

軍用機と民間機では騒音のレベルが異なる。F15部隊を増やせば騒音のレベルが高まるのは確実である。国には丁寧な情報開示を求めたい。

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仲井真弘多知事は、第2滑走路の予算について、沖縄振興予算とは別枠での予算化を求めている。

予算の別枠化という点で言えば、沖縄科学技術大学院大学の関係経費も本来、沖縄振興予算とは切り離して別枠で処理すべきである。沖縄振興だけを目的にした施設ではないからだ。

今後も引き続き沖縄振興予算で運営していくのであれば、現在、取り組んでいる地域との交流事業や県内の小中高校を対象とした「出前授業」などの事業をさらに充実させていく必要がある。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)関係の要求額は198億円。13年度当初予算に比べ2倍近い大幅な増加である。

地域を挙げてOISTを応援していくという機運づくりと、OISTの成果を地域に還元し産業化に結びつけるという、補い合うような取り組みが重要である。

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防衛省は、与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊の配置に向け、155億円を要求した。航空自衛隊那覇基地に早期警戒管制機E2Cの部隊を編成し、現在13機あるE2Cのうち数機を那覇基地に常駐させる計画もある。

南西諸島の防衛強化に向けた動きが14年度以降、加速するのは確実な情勢である。

「基地の負担軽減」と「沖縄振興」とを切り離し、沖縄振興は法律に基づいて粛々と進める。「負担軽減」は民意に沿って着実に、目に見える形で進める-そうすべきだ。

 

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