研究費不正 萎縮させず監査の強化を『産経新聞』主張 2013年8月1日付

『産経新聞』主張 2013年8月1日付

研究費不正 萎縮させず監査の強化を

大学の科学研究費補助金(科研費)をめぐる不正行為が、また明らかになった。

補助金の不正受給で東京地検特捜部に逮捕された東京大政策ビジョン研究センターの教授は、架空発注で親族企業に公金を横流ししたほか、私的流用も疑われている。教授は否認しているが、事実なら言語道断だ。

科研費は、技術立国を目指す日本には極めて重要なものとして、充実が図られてきた。しかし、その一方で会計上の不適切処理や不正は後を絶たないのも事実だ。

自由闊達(かったつ)な研究を阻害するものであってはならないが、科研費の交付にあたって、これまでのコンプライアンス(法令順守)のあり方が改めて問われている。大学をはじめ研究機関は、信頼回復のため、不正行為を見逃さない、しっかりとした監査体制の再構築に取り組んでほしい。

逮捕された東大教授は、医療情報システムに関するデータベース作成などを業者に発注したように見せかけ、大学などから公金を詐取した疑いがもたれている。

架空発注ばかりでなく、取引業者に書類の改竄(かいざん)を指示するなどの不正は、これまでも繰り返されてきた。昨年も京都大学で遺伝子情報研究の第一人者が取引業者に海外旅行の代金などを負担させたとして逮捕されている。

文部科学省の調査だと、公的資金の不正使用は平成12年度以降、判明した分だけでも、46機関139人で計約3億6100万円にのぼるという。

科研費については、研究者側にも不満がある。単年度会計主義から複数年度にわたる研究には使い勝手が悪く、過剰な成果主義も疑問視されている。直ちに結果を出せない研究には交付されにくいからだという。

だが、科研費を受けながら成果報告書の提出義務を怠っている研究者は、会計検査院の調べによれば、11年度からの9年間で593人約58億円にのぼる。研究者側も公金意識を忘れてはなるまい。

国は科研費交付のガイドラインを定め、不正があった場合の応募資格の剥奪期間を今年度から最大10年に延長した。

成長戦略を進める上でも科研費の増額は今後も欠かせない。そのためにも、改善が図れない組織には国が積極的に指導や是正を講じることも必要だろう。

 

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