法科大学院の改革 弁護士の活躍の場拡大を『産経新聞』主張 2013年7月20日付

『産経新聞』主張 2013年7月20日付

法科大学院の改革 弁護士の活躍の場拡大を

 定員割れや司法試験合格率の低さといった多くの問題を抱える法科大学院に対し、自主的な定員削減や統廃合などを求める提言を政府の検討会議がまとめた。

 導入時に7~8割と考えられていた合格率は、最近の平均で2割台にとどまり、入学志願者は当初の約5分の1に減っている。法曹界に人材を送り出す使命を果たせない大学院が、自ら撤退の判断を迫られるのは当然といえよう。

 法科大学院は平成16年、受験技術に偏らない学識と実務能力を併せ持つ法曹人材を養成する機関として始まった。10年を待たず、改革の理念が揺らぎかねない状況を迎えた。

 成果の上がらない大学院が多くなった原因は明白だ。20~30校程度と想定されていた数が74校もの乱立となったことなどだ。実務指導を担当する教員が不足し、教育の質の低下は避けられない。

 大学側が既存の法学部に学生を集めるため法科大学院を利用し、経営的利害などを優先させた結果だとすればその責任は大きい。法令にある基準を満たすだけで、開校を認めた文部科学省の姿勢も問われねばなるまい。

 若者らが安心して法曹の道を目指せるよう、一刻も早く養成制度のあり方について方向性を示すことは政府の重い責任である。

 疑問なのは、提言が合格者を年間3千人に増やす政府目標の撤回に言及したことだ。本来は、質を高めながら法曹人口の増加を図るというのが改革の柱ではなかったのか。目標を捨てる前に、法曹人材の拡大、活用策を示すなどなすべきことは多いはずだ。

 約千人だった司法試験合格者は制度改革を経て2千人程度に増え、弁護士数は1・7倍になった。だが仕事の需要は想定されたほど伸びていない。これで法曹の世界に希望を持てるだろうか。

 検討会議では、自治体で弁護士らを職員に雇ってチームを作り、福祉分野の仕事にあたらせている事例などが紹介された。官庁や企業、社会をあげて、法曹有資格者を法廷以外の場で積極的に活用することを真剣に検討すべきだ。

 提言は政府の関係閣僚会議も了承し、新たな組織で検討が続けられる。統廃合の適用基準など具体的対応も新組織に委ねられる。作業を加速して、問題の先送りを避けてほしい。

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