大学入試改革(6)東大 推薦で「とがった才能」『読売新聞』2013年7月18日付

『読売新聞』2013年7月18日付

大学入試改革(6)東大 推薦で「とがった才能」

 筆記試験での選抜にこだわってきた東京大学が今年3月、2016年度の推薦入試導入を発表した。

 構想していた秋入学全面移行は当面見送る方針だが、同時に進めていた入試改革は一定の方向性を示しつつある。入試改革担当の佐藤慎一副学長に狙いを聞いた。

 ――なぜ推薦入試か。

 言語も価値観も多様なグローバル社会で活躍できるリーダーを育成するため、多様な人材、(特定の分野に優れた力を発揮するような)「とがった才能」を採りたい。

 今年の新入生は、過半数が首都圏出身で、女子の比率も2割弱にとどまった。外国人学生も少ない。キャンパスで中学校時代から同じ学校の友達と過ごすだけでは、異質なものに対応する力が育たない。米国の有力大も意図的に様々な国や地域の、多様な文化的背景を持つ学生を入学させ、刺激を与えようとしている。女子比率も5割近い。

 ――現行の入試ではだめなのか。

 全否定はしないが、1度の試験で選抜し、しかも合格者と不合格者の差はわずか。本当に公正・公平だろうか。試験で測れない才能があるのではないか。また、物理の才能がある学生と、歴史学への資質を秘めた学生を同じ尺度で比べることが本当に妥当なのか。学生を多様にしようとするなら、選抜も多様にすべきではないか。

 ――推薦入試は、どういう選抜になるか。

 学問分野の第一線で活躍する教員が「この学生はすごい。育ててみたい」と思える人材を採る。現在、各学部で選抜基準を立案してもらっており、今年度中に公表する。出願は11月で、どの学問分野に興味や関心があり、関連してどんなことに取り組んできたか、成果や業績も提出してもらう。書類審査で1次選考し、12月に面接を行う。

 面接の時間や形態も統一しない。各学部の教員が出願書類を熟読して、個別に質問を考えて実施する。場合によっては、模擬講義や口頭試問もあるかもしれない。各学部には「最善と思う方法で最善の人材を採ってほしい」とお願いしている。

 ――学力は不要か。

 学力は求める。面接試験のあと、年明けの大学入試センター試験を受けてもらい、一定水準を求める。達しなければ、面接の成績がよくても不合格となる。総合的な学力がないと、東大1、2年の教養課程を修了することができない。

 ――入学後はどうなる。

 大学入試は人材育成のプロセスで、ゴールではない。才能を見込んだ学生を、さらに伸ばす教育を用意する。例えば「メンター」と呼ぶ指導役の教員をつけたり、大学院授業にも参加できるようにしたり。そんなことも考えたい。(聞き手・伊藤史彦)

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