大学入試改革(5)「新思考」多彩な学生選び『読売新聞』2013年7月13日付

『読売新聞』2013年7月13日付

大学入試改革(5)「新思考」多彩な学生選び

 「行動力や思いやりなど、早稲田らしさを備えた学生を採りたい」。

 6月18日、早稲田大が進める入試改革について学内で開いた記者説明会で、沖清豪(きよたけ)・入試開発オフィス長(文学部教授)が強調した。

 新しい発想で選抜を行う「新思考入試」を同オフィスが中心になって開発。同大は数年のうちに実施する方針だ。そのたたき台として、志願者に討論させたり、講義を受けさせてリポートを書かせたりなど、様々な方式が検討されているという。

 狙いは、多様で優秀な学生の獲得。同大は様々なAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試を実施し、中には地方優先枠もあるが、一般入試の合格者は今春、東京を中心とした1都3県だけで75%に達し、かつて同大が持っていた出身地の多様性は薄らぐばかりだ。

 教育情報会社「大学通信」情報調査・編集部の安田賢治ゼネラルマネジャーは「『私学の雄』である早大の改革がうまくいけば、他大学も動くだろう。東京大、京都大が導入する推薦・AO入試と併せて、抜本的な変化につながるかもしれない」とみる。

 一方、高知大や香川大など、四国の国立大5校は5月、地域リーダーの育成を目指し、志願者の能力や意欲などを総合的に評価する「新入試」を共同で始めると発表した。早ければ2016年度から実施の見込みで、その業務を担う「連合アドミッションセンター」の本部を愛媛大に設置した。

 新入試では、高校での日常的な学習活動を重視する方針だ。高校から提出された調査書の内容をうのみにせず、担当者が高校へ出向き、調査書を作成した教師に会うなどして確認することを考える。

 センター長に就任した井上敏憲・愛媛大教授は「的確な審査には、実態に即した調査書が不可欠だ。高校と信頼関係を築いていく必要がある」と話す。

 しかし、高校側は大学が進める入試改革に冷ややかだ。全国高校長協会が12年7月に会員の高校長を対象に実施したアンケート調査では、国公立大のAO・推薦入試の定員について、生徒の大半が4年制大学に進学する高校の校長の3割が「少なくしてほしい」と答えたのに対し、「多くしてほしい」は1割に満たなかった。政府が見直しを検討し始めた大学入試センター試験についても、「学力レベルに応じた2種類あるのがよい」と回答したのは、全校長のうちたった1割だったという。

 早大で新思考入試にかかわる教員は「型破りな高校生はさほどいない。多くの高校が、生徒を型にはめる教育をしているからだ」と顔を曇らせた。手間のかかる入試に研究時間を割かれる大学教員の不満も強い。理想的な入試を目指す道のりは険しそうだ。(石塚公康)

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