高大接続特別部会(第7回) 議事録 平成25年5月24日

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高大接続特別部会(第7回) 議事録

1.日時
平成25年5月24日(金曜日)15時~17時

2.場所
三田共用会議所1階講堂

3.議題
 1.入学志願者の多様な能力・適性等の評価
 2.その他

4.出席者
委員
(部会長)安西祐一郎
(委員)生重幸恵,浦野光人,吉田晋の各委員
(臨時委員)荒瀬克己,及川良一,勝悦子,小林浩,近藤倫明,田邉恒美,垂水共之,土井真一,濵口道成,濱名篤の各臨時委員

文部科学省
大槻政策評価審議官,合田生涯学習政策局長,布村初等中等教育局長,板東高等教育局長,小松私学部長,関初等中等教育局審議官,山下初等中等教育局審議官,山野高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,池田大学振興課長,望月高等教育改革PTリーダー,田中高等教育政策室長,平野大学入試室長 他

オブザーバー
西岡加名恵(京都大学大学院教育学研究科・准教授)
林篤裕(九州大学基幹教育院・教授)

5.議事録
(1)入学志願者の多様な能力・適性等の評価について,西岡京都大学准教授及び林九州大学教授から,それぞれ資料1及び2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西部会長】  本日は,まず西岡先生にパフォーマンス評価等について御発表いただき,その後林先生に事例発表をいただいた後に,意見交換させていただきます。
 それでは,まず京都大学の西岡准教授にパフォーマンス評価等についての意見の発表をお願いいたします。 

【西岡准教授】  京都大学の西岡と申します。本日はこのような機会を頂きまして,ありがとうございます。
 私は,教育方法学を専門にしておりまして,近年は学校の先生方の御協力を得ながら,パフォーマンス評価の研究開発を進めております。本日は,パフォーマンス評価とは何かを御紹介した後,パフォーマンス評価を取り入れる場合に構想できる高大接続評価システムを御提案したいと考えてまいりました。どうかよろしくお願いいたします。
 まず,パフォーマンス評価とは何かについて御説明いたします。現在の評価研究では,学力評価の方法として,この図に示したような様々なものがあるとされています。この図では,評価方法を単純なものから複雑なものまで並べております。また,左側に筆記による評価,右側に実演による評価を配置しています。
 筆記による評価のうち,最も単純なものは選択回答式の問題,いわゆる客観テストの問題です。これはセンター試験をイメージしていただくと分かりやすいかと思いますが,丸バツで採点できるタイプの問題です。筆記による評価方法のうち,もう少し複雑なものとしては自由記述式の問題がございます。更に複雑なもの,例えばまとまったレポートを書くといった課題になりますと,パフォーマンス課題という分類になります。パフォーマンス課題には,実演によるものもあります。例えばプレゼンテーション,グループでの話し合いなどが考えられます。
 実演による評価でやや単純なものは実技テストです。理科の例で考えますと,一連の実験を計画・実施・報告するのはパフォーマンス課題,与えられた時間内で正確にガスバーナーを操作できるかといった技能をテストするのが実技テストとなります。更に単純なものになりますと,チェックリストなどを使いつつ活動を断片的に評価するものと言えます。
 これらの評価方法で測る学力の違いについて感覚的に理解していただくには運転免許を取る場面を想像していただくと良いかと思います。運転免許を取得するには,客観テストで法律などの知識が試されます。これは幅広い知識を身に付けているかどうかを見るものです。また,教習所のコースでS字カーブ,右折,左折など,個々の技能が身に付いているかが試されます。これは実技テストです。路上教習,路上検定になりますと,リアルな道路という状況において,必要に応じて身に付けた知識,技能を引き出しつつ,活用する力が試されます。これがパフォーマンス課題です。
 配付資料の19ページに参考に載せております資料がございます。資料○1はこのスライドと同じなのですが,○2の方には,「知の深さ」と評価方法がおおよそ対応するという,近年,評価研究で指摘されている対応関係を示しておりますので,御参照いただければと思います。
 このようにパフォーマンス評価は,知識やスキルを使いこなす,活用することを求めるような評価方法,問題や課題を指します。中でも特に様々な知識やスキルを総合して使いこなすような複雑な課題がパフォーマンス課題です。
 ちなみに,パフォーマンス評価という用語は,1980年代末から1990年代にかけてのアメリカにおいて登場いたしました。当時のアメリカでは客観テストによって学校の説明責任を求める政策がとられていました。それに対して,そのようなテストでは幅広い学力が保障できない,思考力や創造性といった力は保障できないのではないかといった批判が学校現場から起こったのです。なお,パフォーマンス評価の背景には,「真正の評価」論という主張があります。これは,現実世界において人が知識や能力を試される状況を模写したりシミュレーションしたりしながら評価をすることを主張するものです。芸術系や実技系の教科,職業科目などでは従来からパフォーマンス評価が取り入れられてきたわけですが,いわゆるアカデミックな教科でもパフォーマンス評価を取り入れることによって,単に暗記した知識を再生する力ではなく,内容を深く理解し,活用するような実力を身に付けさせようとしているのだと考えられます。
 ここで日本における実践例を二つ御紹介したいと思います。一つ目の事例は,高校の英語科のパフォーマンス課題です。京都府ではSELHiの指定を受けた園部高校でパフォーマンス評価や対応する評価基準を開発した先行事例がございます。園部高校の評価基準については,資料の21ページに載せております。その成功事例を参考にしつつ,2012年度からは4校の高校でパフォーマンス評価を取り入れた実践づくりを進めています。これから御覧いただくのはそのうちの1校,東舞鶴高校で,高校1年生が英語でスピーチをしている場面です。高校の教科書に忍足さんという耳の聞こえない女優さんを取り上げた文章があるのですけれども,その文章を踏まえつつ,自分の転機を振り返り,忍足さんへのメッセージとして発表するというような課題になっております。少し御覧いただこうと思います。 

(映像上映) 

【西岡准教授】  時間の関係でここまでにしますが,今,御覧いただいたのは高校1年生の平均的な学力層の生徒だと伺っているのですけれども,非常に堂々と発表している様子が御覧いただけたかと思います。
 もう一つの実践事例は中学校の社会科です。資料の23ページ,24ページを御覧ください。ここに載せているのは,「どうすれば戦争を防げるのか提案してみよう」,あるいは「国会議員のつもりになって経済政策を提言してみよう」といった課題の取組の際に,中学生の生徒が生み出した作品例です。○2の方は現在の日本の食糧をめぐる問題を捉え,自分なりの政策を提言するとともに,予想される反論に答えるといった内容になっています。

 どちらの作品も授業で学んだ知識や教科書・資料集などにある資料を活用しつつ主張を展開した,非常に迫力のある作品となっていることがお分かりいただけるかと思います。
 このような課題に取り組むに当たっては,こちらのスライドに示したように,意見を闘わせる討論の授業や,自分の成果を発表する授業などが行われました。生徒たちが生き生きと課題に取り組んでいる様子がこれらの写真からもお分かりいただけるかと思います。
 近年,日本の教育政策においても様々な場面でパフォーマンス評価が推奨されておりまして,今後ますます普及が広がることが期待されます。なお,最初にも御紹介したとおり,自由記述式の筆記テストも,あるいは実技テストもパフォーマンス評価の方法と言えます。特に筆記テストについては重要な概念や思考するプロセスなどを評価する問題の開発を進めることが求められております。こちらに示したのは平成13年度中学校教育課程実施状況調査において用いられた理科の問題です。与えられたデータをグラフに示す問題ですが,グラフ用紙に目盛りが示された場合の正答率が約7割であったのに対して,目盛りを打つところから出題された問題では正答率が5割を切りました。グラフを書く力が本当に身に付いているかどうかを見るためには,目盛りなしの問題を出す必要がございます。
 こちらはイギリスのGCSEで出されている歴史の問題です。GCSEというのは16歳の生徒が受ける資格試験なのですが,こちらの問題でも冷戦の原因について多様な事象を関連付けながら因果関係について考えさせる高度な思考力が問われているのがお分かりいただけるかと思います。
 パフォーマンス課題にせよ自由記述式問題にせよ,丸バツで評価できないとなると,評価基準が問題になります。パフォーマンス評価で用いられる評価基準をルーブリックといいます。ルーブリックというのは,こちらに示しましたとおり,数レベル程度の尺度でパフォーマンスの成功の度合いを捉えつつ,それぞれのレベルに対応するパフォーマンスの特徴を説明した記述語で構成される評価基準表です。
 特定課題のルーブリックを作る場合,こちらで示したようなテンプレートを用意します。それぞれのレベルに配置する作品番号を記載する欄と記述語を書く欄がございます。ルーブリック作りに当たっては,まず生徒の作品を数十個集め,できれば複数の評価者でお互いの採点が分からないように採点します。ぱっと見てすばらしいと思ったら5点,これなら合格だと思ったら3点というように採点をして,その結果を付箋紙に書き,作品の裏に貼り付けます。全員が全部の作品の採点を終えたら付箋紙を表に貼り直し,似た点数が付いた作品を集め,それらに見られる特徴について話し合うことで記述語を作っていきます。
 さらに,類似の課題に繰り返し取り組む場合,複数の課題に共通して用いられる長期的ルーブリックを開発することができます。資料2の先ほどの園部高校の英語科の評価基準の上半分,あるいは資料3の○3に掲載しているのはそのような長期的ルーブリックの例です。以上をまとめますと,人間の知というのは,ここに示したように階層構造を持っています。幅広い知識やスキルを身に付けているのかどうかを評価するためには筆記テストや実技テストが適しています。しかし,教科の中核に位置するような本質的な部分,いわゆる原理や一般化を深く理解しているのかを評価するにはパフォーマンス課題を用いる必要があります。評価基準としては,個々の知識やスキルが身に付いているかどうかを確かめるにはチェックリスト,原理や一般化を深く理解しているのかを捉えるにはルーブリックを使うということになります。
 では,このようなパフォーマンス評価を生かした場合,どのような高大接続の在り方を考えることができるのでしょうか。私としては,次のような高大接続評価システムを提案したいと考えています。これは,高校が教科ごとに10段階で学力評価を行い,評価結果を大学に提供する。大学は例えば5教科で10がそろっていれば自動的に合格,あるいは2教科で10,3教科で9以上なら二次選考の受験資格があるといったように,それぞれ求める水準を明示します。こうして受験生を絞り込めれば,大学は二次選考受験資格を持つ生徒を対象に追加の学力試験を行うことができますし,あるいは面接等でじっくり志望理由や高校での学習成果,大学での学習計画を尋ねることもできます。さらに,大学入学後,入学者の学力レベルに応じた教養科目を提供すれば,そこでの評価を踏まえて高校における評価の妥当性,信頼性を検証することもできるかと思います。
 端的に言いますと,高校の調査書をもっと信頼できるものにすることによって,序列化・選別の入試から資格型入試への転換を図るという提案です。高大接続評価システムと現行の入試システムのそれぞれに定員を割り振ることで,受験の複数機会を確保するということもできます。センター試験については併存させることもできますが,システムが完成すれば廃止しても良いのではないかと考えています。

 高校の調査書をもっと信頼できるようにするためには,統一的な学力評価計画を策定することが求められます。そのような学力評価計画のイメージは,イギリスの資格試験に見ることができます。例えばここに示したのは,日本で言うと国語に当たりますが,GCSE(英語)の科目明細の例です。「話す・聞く」「読む」「書く」力について,それぞれどのような内容に対応して,どのような評価方法を用いるのか,それぞれの配点は何点かが示されています。「統制された評価」というのは学校で取り組むパフォーマンス課題です。教師が実施し,採点しますが,採点結果については資格試験団体が抽出調査によって点検します。2時間の筆記試験も実施されており,そこでは読む力と書く力が評価されています。
 このように,イギリスの資格試験のシステムでは,能力目標,内容領域,評価方法の対応を明示した科目明細が用いられております。パフォーマンス課題と筆記試験を組み合わせて用いることで,幅広い学力が保障されています。一つの教科に対し複数の科目明細が用意され,学校や生徒が選択できます。評価の比較可能性を高めるためにも様々な工夫が用いられています。詳細は29ページ,30ページの資料4に載せておりますので後ほど御覧いただきたいのですが,そちらに挙げているのは実際にイギリスで用いられているモデレーションの方法です。採点のトレーニングが教師の力量向上プログラムとしての側面を持っている点も注目に値すると考えています。
 イギリスではOCR,AQA,EDEXCELといった資格授与団体が存在し,このような科目明細を開発しています。しかし,このようなシステムについては,二つの問題点を指摘しておく必要もあります。第1の問題点は,学校が予備校的な雰囲気になるということです。日本の教育水準の高さはそれぞれの学校で先生方が,教えるに値することとは何かを自問し,また,指導方法を様々に工夫することで保たれてきました。学校の創意工夫は学習指導要領においても強調されているところです。学校のカリキュラムに合わない資格試験を一足飛びに導入すれば,学校から創造的な文化が消える恐れがあります。そこで日本では,複数の学校が連合体として学力評価計画を作っていくようなシステムを構築することによって,評価の決定権,所有権を高校が持つ必要があると考えています。
 第2の問題点は学力格差の問題です。イギリスではレベル別クラスが採用されることで格差が固定化,拡大する様子が観察されました。統一的な学力評価計画を導入すれば,高校間,高校内の学力格差は今よりも目に見える形になります。場合によっては生徒や教師のやる気をそぐことにもなりかねません。日本の教育水準全体を上げるためには,全ての生徒に価値のある学力を保障するという原則をいま一度確認しておく必要があります。具体的には多様なニーズに応じる学力評価計画を作る,指導の改善を図る,困難校を支援する条件を整備する,高校間格差を縮小するといったことが求められるかと思います。
 では,具体的にどのようなシステムの構築が考えられるでしょうか。イメージの一つとしては,この図に示したように,県単位を一つのネットワークの単位にするということが考えられるかと思います。まず,国が学力評価計画を策定する上での方針を大枠として示す。各都道府県で学校間ネットワークを作って,学力評価計画の詳細を決める,それらを生かして各校で付けた成績を大学が受け取って入試に取り入れるという形です。都道府県別の格差が生じるのではないかという疑問は予想されますが,国が大綱的基準を示すとともに,データを集約して検証することで比較可能性を高めることは可能だと考えます。
 なお,実際に地域ぐるみで統一的な学力評価計画を作る計画が進んでいる例として,中学校レベルではございますが,京都府乙訓地方の取組の資料を末尾の資料5に示しています。これも後ほど御覧いただければと思います。
 もう一つのイメージは,複数大学と複数高校で学力評価計画を作り,徐々に加盟校を増やしていくという方式です。これについては,例えば工業大学と工業高校が連携するといった形で,特色ある学力評価計画を作ることも考えられるかと思います。このように,学力評価計画を整備することで高校からの調査書を大学入試の資料として信頼できるものにできるとすれば,それを基にある程度受験生を絞ることで,面接などでもより丁寧に個々の受験生の志望理由や学習履歴を評価することができるようになります。
 そうなった場合,生きてくるのがポートフォリオ評価法です。ポートフォリオ評価法というのもパフォーマンス評価の一種なのですが,ポートフォリオとはもともと画家や建築家,新聞記者といった職業の人々が雇い主に自らを売り込むときに用いる紙ばさみ,つまり,ファイルやスクラップ帳などを指す言葉です。例えば画家であれば,自分の代表作や個展のビラ,新聞に載った批評などをとじ込みます。それを見れば,その画家の力量や画風,更には社会的な評価が一目瞭然です。
 ポートフォリオ評価法においては,学習者(児童,生徒や学生)が自分の作品や自己評価の記録,教師の指導と評価の記録などを系統的に蓄積していき,折に触れて編集したりポートフォリオを使って対話したりします。それにより,学習者が自らの学習の在り方について自己評価することを促すとともに,教師も学習者の学習活動と自らの教育活動について評価することとなります。
 なお,ポートフォリオについては,所有権によって三つに分類できます。このときの所有権というのは,収める作品や評価基準の決定権です。教育者側が決めるタイプを基準準拠型ポートフォリオ,教育者と学習者が相談しながら作っていくタイプを基準創出型ポートフォリオ,学習者が自由に作るタイプを最良作品集ポートフォリオと呼んでいます。
 こちらに示したのは小学校で作られたポートフォリオです。各教科の観点別にポケットが用意され,それぞれの観点に対応する作品のうち,一番良いものを残すものとなっています。こちらは総合的な学習の時間で用いられたポートフォリオです。日々の記録用紙,子供が集めた資料や発表のために作った資料などがとじられています。この実践では単元末に資料を冊子の形にまとめ直しました。更にその中から厳選したものを永久保存版のパーマネント・ポートフォリオに保管しています。
 ポートフォリオについては,資料がたまるばかりでどう使っていいか分からないという声を聞きます。指導上は次の3点がポイントとなります。第1に,なぜ作るのか,なぜ残すのか,何を残すのか,どう役立つのかといった点について学習者と教師が見通しを共有することです。第2に,たまった作品を整理したり取捨選択したりして編集することです。先ほど御紹介したように,ワーキング・ポートフォリオからパーマネント・ポートフォリオを作るというのも一つの方法です。第3に,定期的にポートフォリオ検討会を行うことが必要となります。これが実際に検討会を行っている場面ですが,それまでの学習履歴を説明しつつ,今後の見通しを話し合うような会となっています。
 実際にポートフォリオを用いるとどのように学習の質が転換するのか,高校の事例で御紹介できると理想的だったのですが,高校でのポートフォリオは私自身まだ開発できておりませんので,ここでは京都大学の教職課程で用いられているポートフォリオを事例として御紹介したいと思います。京都大学の教職課程ポートフォリオは,教師に求められる力量を五つの柱で捉え,それぞれの柱に対応する必須の成果資料,学級経営案や学校での活動の記録,学習指導案など,あるいはその他の成果資料をためていくものとなっています。資料については,ここに示したような五つの柱に応じて整理をいたします。この五つの柱に対応して評価基準もルーブリックとチェックリストの形で整理しています。A,B,C,Dの四つの柱については基準準拠型のポートフォリオ,Eの柱は学生の主体性に任せる最良作品集ポートフォリオの形をとっています。
 実際にポートフォリオ作りに取り組んだ学生の声を御紹介いたします。「1・2回生のときは,自分の数学の専門性を高めることを意識して勉強してきました。3回生になってポートフォリオ作りを始めたとき,セクションAとBに入れる資料がほとんどないことに気付きました」。
 この学生は非常に熱心な学生だったのですが,その学生でも数学の専門性にばかり目が向いてしまったことで,授業で扱われていた様々な内容が自分の中に位置付いていなかったことにポートフォリオ作りを通して気付いたわけです。
 「そこで,セクションAについては,文部科学省のホームページや関連する書籍を読んで,自分なりにまとめるという作業を始めました。セクションBについては,実習に行くまで資料を入れられずじまいでした。それで,実習に行くときに,生徒と信頼関係を築くことを大事にしようと強く思って,臨みました。」
 実際にこの学生は,実習で全員の生徒の名前を覚えるために,座席表に生徒の似顔絵やエピソードを書き込むといった工夫をしました。こういった先輩の姿に後輩が検討会の場面で触れることで,非常にいい刺激となっていることも,このスライドに示したようなコメントからお分かりいただけるかと思います。高校でもこのようなポートフォリオ作りに取り組んでいただければ,大学でもそれを見ながら学習成果を評価しやすくなると思います。
 以上,御紹介しましたように,パフォーマンス評価には,こちらに示したような意義が認められます。さらに,そのようなパフォーマンス評価を取り入れた高大接続評価システムを構築することができれば資格型入試への転換が図られると考えます。高校間の連合体として学力評価計画を作ることで,高校の教育課程を踏まえた学力評価計画となります。パフォーマンス評価を取り入れることで高校教育の質,高校で育成される学力の構造が改善され,高校生の学習経験の正常化,意欲向上にもつながります。高校教育の目標と評価基準を明確にし,学力保障,格差是正の方策と組み合わせることで,高校教育の全体の水準の向上にもつながります。
 学力評価計画を作成し,採点するなどの作業に高校教員が参加することは,高校教員にとっての力量向上プログラムとしても機能します。ただし,パフォーマンス評価は新しい考え方ですので,教員免許状講習や教員養成などの場面で一定の知見を普及する方策も必要かと思います。
 さらに,こういうシステムが実現されれば,入学者に応じたカリキュラム開発に大学が取組,大学教育の改善にもつながると考えています。
 以上で御提案を終わります。 

【安西部会長】  ありがとうございました。大変示唆に富む御意見を頂きました。意見交換,質疑は後にさせていただきます。
 それでは,次に林教授から,選抜に実際,パフォーマンス評価を取り入れておられる九州大学21世紀プログラムについて御発表いただきます。よろしくお願いします。 

【林教授】  林でございます。本日はこのような会議にお声を掛けていただきましてありがとうございます。
  今回このお話を伺ったときに非常に悩んだことがございます。委員には岡山大学のマッチングプログラムに関わっておられる垂水委員がおられまして,調べましたところ,12月17日の会議でマッチングプログラム等の御紹介をされております。既に垂水委員自身がいろいろと御存じでありますので,私がそれに加えて何を御紹介すればいいのかということは非常に悩んだというか,どのように紹介すれば皆さんの御期待に添えるのだろうかということを感じた次第でありました。私が準備いたしました資料のほか,もし,もっとここを聞きたいということがあれば,御指摘いただければそれについて御紹介したいと思っております。
  まず,九州大学でありますが,11学部があるということで,ここにおられる皆さん方であれば,東京大学の8割,西岡先生の京都大学の9割ぐらいの学生単位を持った大学であるというふうに御紹介すれば多くの委員の先生方にはイメージしていただけるかと思っております。1学年の定員が2,555名でございます。それの93%を一般入試,残りの7%をAO入試で採っているという大学でございます。
 さて,その右側のAO入試についてもう少し詳しく見てまいりますと,教育学部が10名,物理が10名,・・・,農学部が20名等々,185名,7.2%をAO入試で採っておる大学であるということであります。
 さて,本日の21世紀プログラムでございますが,定員は26名であります。全体の定員が2,555名だと申し上げましたが,文部科学省で認められている定員の範囲の中で採っておりますので,大体2,650名ぐらいが入学してまいりますので,ほぼ1%の学生が21世紀プログラムとして我々のところに入ってくるということになっております。
 次に,21世紀プログラムをどの程度まで御理解いただいているか分かりませんので,その紹介をざっとさせていただければと思っております。皆さんの机上配付の中に募集要項をお配りしているかと思いますが,その1ページ目に書いてございます。一番のキーコンセプトは,「専門性の高いゼネラリスト」ということで,それを支える三つのコンセプトがあって,21世紀プログラムということになっております。九州大学には11の学部,文系4,理系7の学部がございますが,この11の学部どこにでもアクセスができることで学生募集をしてやっておるということです。言ってみれば,左側が普通の大学生ということです。つまり,下から順番に上がってまいりますが,高校の段階で例えば工学を志願して工学部を選んで学部,大学院へと進んでいくわけですが,21世紀プログラムの場合はそうではなくて,より広い,複数の学部に興味のある学生を受け入れ,それを学部の中で,ちょうどおわんを引っくり返したような格好になっていますが,最初の3年間,おわんの湾曲した部分,3年間は自由に11の学部を泳がせて,糸尻の部分,あそこは1年間でございますが,一つの研究室に所属して卒論を書いてもらうということを行なっております。
 卒業生の特性だけ先に申し上げておきます。スライド8の暖色系の色が大学院に行っている者で,約4割でございます。九州大学,それから京都大学をはじめとする国内の大学,そして地球上の大学に,暖色系で示した4割の学生が行っております。寒色系の色が就職でありまして,約5割の学生が行っておる。それ以外は,他の国の大学院に行くための準備をしている者とか,公務員試験の準備をしている者等々で,卒業時点にはまだ決まっていなかった者ということになっております。13期生まで入っておりますが,実際の数字はこうなっております。ここまでが九州大学及び21世紀プログラムの紹介でありました。
 ここからは,多少ゆっくり御紹介ができるかと思っております。さて,机上資料の募集要項の5ページにも書いてございますが,21世紀プログラム,求める学生像というのはここに示したような五つの観点から書いてございます。自主性,幅広く学びたい,一定以上の教養があって,積極的に学ぶ,若しくは語学を身に付けようという意欲,そういうものを持っている学生を欲しいということを募集要項5ページに書いて,生徒たちに周知をしております。
 選抜の流れでありますが,9月下旬に募集をし,10月の中旬に一次合格を出し,11月の最初の土日で二次選抜をし,11月の下旬に発表するという手順になっております。では,具体にどういうものをそれぞれやっているかということが,おそらく委員の皆さんの御興味あるところではないかと思って準備をいたしました。
 まず,第一次選抜でありますが,募集要項をお持ちの方は,真ん中あたりに少し硬めの紙が入っておりますが,それが志望理由書(2面)と活動歴報告書(2面)でございます。読んで字のごとくでございまして,志望理由書というのは,なぜ21世紀プログラムに入りたいのかということを,文字のサイズは問いませんが2面で書いてくださいということであります。活動歴報告は,単に彼らが中学校からどういう活動をして,今,そこに立っているのかという事実を書いてもらえばいいということです。真ん中の調査書は高校から上がってくるものでございます。
 この書類を受け取って,我々は何をするかというと,これも大学の選抜に関わっておられる方は既に御存じと思いますが,AP若しくは求める学生像にフィットするかということでありますので,先ほどの学生募集要項の5ページとかスライド5に記載の理念に沿っているかどうかということになります。では,理念は何かというと,例えばF1のエンジンが作りたいというような工学部的な志望しか出していない学生については,それは工学部を受けたらよいのではないかということで,21世紀プログラムは志願先ではないのではないかということで辞退いただいていますし,若しくは看護師資格を取って世界に羽ばたきたいという希望がある学生については,残念ながら21世紀プログラムでは資格は取れないということが明記されておりますので,そういう資格が欲しいと書かれている場合には,残念ながらそれは21世紀プログラムでは実現できませんということで御辞退をお願いしております。
 この後,御紹介いたしますが,二次選抜のための許容量というか,部屋のサイズの都合上,どうしても80名というものがございますので,実質3倍程度ということになっております。皆さんの資料には78名,3.0倍と書いてありますが,昨年,13年度は実は2名の欠席があるのを失念しており,一次次選抜としては80名を選抜しました。実際の会場に来たのは2名減でございましたので78名と書いてしまいました。申し訳ありませんが,そこは訂正をお願いできれば幸いです。
 さて,二次選抜,おそらくここが本日一番のキーになる部分であろうと思います。最初の1日目,三つの講義をいたします。配付資料の一番最後,17ページに,その講義のテーマが書いてございますが,人文,社会,自然という,昔の教養の三本柱に相当する講義三つのテーマを立てます。それぞれの教員に50分の講義と,彼が設定した70分で解ける程度のレポートを書かせています。50分プラス70分ですから,ワンセットが120分になりますが,120分をそれぞれ人文,社会,自然という三つの講義を朝から晩までやって,1日目が終わります。
 2日目は,前日に聞いた三つのうちから二つを選んでグループ討論をいたします。グループ討論は後でも紹介いたしますが,16名程度になっていて,それを5グループでやっていますから,80名というのはそこから出てくるのですが,昨日聞いたあの講義について,私はこう思ったとか,こう改善すればいいのではないかというようなことを16名でディスカッションするのです。あなたが言ったことは,私はそうは思うけれども,ここの部分はこう変えた方がいいのではないかというような提案型のグループ討論ということで,決して誰かをおとしめるとか,そういうことではなくて,エンカレッジするような討論を三つのテーマで,二つは必ず参加するということになっています。必ずというのは,二つをセレクトさせて参加するということになっています。余った時間に関しては誰が討論に参加しても良いということになっています。
 午後は,講義を聞き,友達の意見を聞き,三つのうちから一つ選んで,自分で何かストーリーを決めて,A4の3面で小論文を270分で書いてもらう。それから,当日,あなたは例えば15時から15時15分という形で事前に時刻を通知してありますので,その時間には面接室に出てきてもらって個人面接をするという試験をやっております。
 これは間に夜があるものですから,彼らが夜の間にインターネットだとかいろいろな知恵者から知識を頂くのはあまり好ましいとは思っておりませんので,論題は当日の朝配付ということになっております。つまり,昨日聞いた講義で勝手に自説をとうとうと述べられても,それは,誰から聞いたか分からないでしょうということです。つまり,論題を回覧しておりますが,それの一番最後のところにありますが,そこのテーマについてこれを話しましょうということです。ですから,これに即していないものに関しては加点は難しいということになるわけですが,そういう形でなるべくほかからの知識ではなくて,彼ら自身が持っているものを我々は評価をしたいと思っておるわけです。
 蛇足になりますが,彼らは非常にアクティブでありまして,講義の一つ目と二つ目の間に,大体,机の周りで友達になります。二つ目と三つ目の間で,大体教室中が友達になります。つまり,「あなたは何のために21世紀プログラムに来たいのですか」と言うと,「私は世界でこういうことがしたい」ということを言うのですけれども,時間が経っていくに従って,「あなたと同じことを言う人が,会場の奥の方にいます」というように,入試ですから決してラフなことはできませんが,休み時間は彼らは自由に,まるでセミナーを聞いているかのような雰囲気になっております。「さようなら」と言って「おはよう」と出てくるという,非常に不思議なというか,私としてはおもしろい入試だと感じております。
 スライド14には近年6年分の講義題目が出ておりますが,先ほどの後ろには過去13年間分の39講義全部のテーマが出ております。基本的には大学の講義を提供し,それを彼らがどう受け取るかということで,一つ一つがおもしろいと思っておりますし,そのために用意したのが,今,回覧しておる講義資料でありますが,実際に講義を聞いていただかないと,その資料だけを御覧になってもわかりにくいかもしれません。
 ちなみに,学生たちにアンケートをとっておりますが,非常に楽しかったとか,いろいろなことを言ってくださっています。これは皆さんにはお配りしておりませんが,先ほども言いましたけど,エンカレッジしたということがいろいろな文面で出てまいります。これはいいものだけを集めてきたとか,そういうつもりはございません。下の方にありますけれども,我々が運営をしていて非常に恐縮をするというのですか,「会場運営してくださってありがとう」とか,「お忙しい中,試験をしてくださいましてありがとうございました」という意見には,我々はどう答えていいのか苦笑というか,うれしく感じております。
 これが基本的には表から見た場合の入試の流れということになっております。
 では,我々が裏で何をやっているのかというのをこういう機会ですので御紹介させていただこうかと思っております。一次選抜,書類選考は左側であります。4名の教員が三つの書類を評価いたします。下に書いてございますが,4段階評価をいたします。ただ,活動歴報告に関してのみは3段階ということになっております。
 次に,右側は二次選抜でございます。お配りしたタイトルでやる講義の担当者が赤い丸で書いてあります。それのテーマを研究しているほかの者がサブで2名付いております。ですから,講義担当者は実は3名いることになっております。今年はそれを78名全員が,レポートというところに書いてありますが,受けております。
 下の段に行きますが,翌日,面接,小論文をするわけですが,それは一つ一つの部屋に3名の教員が待機をしていて,そこで16名程度が議論,討論をする,若しくは面接をするということになっています。ですので,80名ということになっております。
 これ以外に運営に関わっている私等が10名程度いますので,大体35名程度の教員がこれに関わっているということになっています。
 申し遅れましたけれども,上側の表の下に書いてある小論文に関しては,三つのテーマのうちから一つを選べと言っていますので,それは受験生がどのテーマを選ぶか分かりませんので,45名程度,それがマックスということになっているということになります。これは毎年違います。
 一次から二次に進むときに,グループを五つ分けると言いましたけど,どのように分けるか。これはそんなに難しいことではございませんで,一次成績の均等化を一つのベースにしながら,男女比,現浪比,地域差,それから,同一の高校がいるとやはり雰囲気が変わりますので,なるべくそういうことが均等になるようにしています。もし同じグループになったらまたそこで考えざるを得ないと思っております。あとは成績を,蛇が動くような形に配置していくということです。
 さて,その評価の仕方でありますが,AからDという4段階,若しくは活動歴は3段階という形になっていますが,つまり,これはルービックキューブのようなビルを建てたような形になっておりまして,ここのフロアにおられる方,誰しもがA,A,Aであれば,それはトップだろうと,これは分かりますし,D,D,Cであれば多分ボトムだろうというのは分かるわけです。ですから,A,A,Aは,そこに1と書いてありますが,第1番目のセルだろうと。右後ろに書いてあります48というのは,セルが48個ありますから,48番目のセルのところにD,D,Cの学生が付置するということになります。左上の角から右下の角に,どの順番にオーダーを付けるかは,我々,決めております。つまり,A,A,BとA,B,Aと,Bが1個あって,ほかがAの場合にはどれを最初に採るかと,その辺は内部で決めております。当然,この一つ一つのセルには複数の学生が入りますから,その複数の学生のオーダーの付け方も決まっておりますが,いずれにしても大きな流れは,A,A,AからD,D,Cにということになって,それを順番に付けていくということになります。そのセルの中の同一順位も考慮した順位を付けるということになっています。
 その査定については,先ほど申し上げた35名程度の者が,「いや,彼はこういう討論をしていたから,非常に芯があるのではないか」とか「ここについてはやや甘かった」ということを35名,実際に受験生に接した者が一堂に会して議論をするということになっております。これには結構時間を要します。
 これは実際の受験生の動向ですが,4倍前後。今年やや増えて112名で4倍前後になったということであります。
 最後でございますが,御覧いただいてお分かりのように,非常に手間が掛かります。26名を採るのに35名程度は関与をしている。もちろん受験生は112名いましたが。講義を担当する教員を確保するのは相当大変でございます。若しくは,AO入試というのは受験生にある程度接するわけですから,公平に接するというのは当然注意が必要でしょう。等々で,非常に大学としては負荷が高いというのは事実だと思います。ただ,その結果として非常に“良い”学生を確保できていると思っております。良いというのは,先生方によって評価は違うと思うので,あえてダブルクオーテーションを付けてありますが,“良い”学生が採れていると私は思っていますし,理念に沿った学生が来ておりますし,入試というのは少しずつ改定をしていかないとなかなかうまくいかないということで,我々も少しずつではありますが,改良だと思っていますが,変化を掛けながら継続をしています。三つの講義,総合大学ならではの選抜ではないかと,私は思っております。
 一つ,参考情報としてですが,先ほど,二次に進むに当たって教室を五つに分けるときにというようなことを言いましたが,一次と二次の相関はそれほど高くはございません。高くないと言うと,「えっ」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,私は悪いことではないと思っています。つまり,一次で評価する軸と二次で評価する軸が違うということです。別のファクターを2回実施しているわけですから,別々のファクターで見ているということになります。
 逆に言うと,我々が実施面で注意をしないといけないのは,もし,万が一,優秀な学生を一次で取りこぼしてしまったら,それはもう取り返しがつかないわけですから,やはり二次には進めない,進んだとしても我々としては受け取れないという学生を,一次で御辞退いただいているということをしないと,非常に我々はまずいことになりますので,一次の選抜もラフなことはできないということです。
 やはり,これも皆さん御存じのとおりでありましょうが,志願者が少ないというのは余り好ましいことではありませんので,我々,アドミッションセンターとしても,是非たくさん受けてほしい。特に,どうしても西日本に偏っておりますので,東日本,北海道の方にも是非アクセスをしてほしいと思って,広報の重要性は申し上げております。
 そして,本日は私学関係の方もいらっしゃいますので,注意深く説明する必要がありますが,AO入試という呼称がやや独り歩きをしている部分がございまして,私たちと違う概念のAO入試という言葉を理解した学生が,我々のところにショーアップしてくることがございます。残念ながら,それは一次選抜でお帰りいただかざるを得ないわけですが,やはりAO入試というものがどういうものかということを高校生にもきちんとお伝えをし,それに対してフィットする学生に我々のところに来てほしい。ですので,志願者を増やす広報,及びAO入試というものの広報というのを我々はやっていきたいと思っています。
 これ以降の資料については,もしこの後,議論があればと思って用意しましたが,必要がなければこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 

【濱名委員】  お二人とも,大変興味深い御報告をありがとうございました。
 共通しているのは,我々がふだんやっている筆記試験型のものと比べて,何と魅力的な選抜方法であり,真正な評価という考え方でいうと,社会で必要とされる評価に非常に近い選抜方法だと思うのですが,ただ,かなりそれぞれ違うと思いました。
 西岡先生にお伺いしたいのは,私は非常に驚いたのですけれども,大変ナショナルなシステムに,ルーブリック,定性的な評価を使うと言われているのですが,私が気になるのはAO入試や推薦入試,九州大学のような使い方というのは比較的現実的だと思うのですが,これらは,一挙にできるのだろうかということです。
 つまり,例えば評価の観点,基準を作ること自体,大学も含めてかなり苦しんでいるのですけれども,もう一つ,大きな問題は,この観点,基準の運用というのが標準化が大変難しい。私は,AHELOの高学歴フィージビリティースタディーの御苦労を伺ったときに,これは大変なことだと思ったのですけれども,こういう定性的な評価をナショナルなシステムに乗せるためにはどうすればいいのかというのを,私はかなり難しい点があると思うのですけれども,お考えをお伺いしたい。
 他方,林先生の方は,それと比べると規模が小さいところでインテンシブにやれるというところがメリットだと思うのですけれども,これを,では拡大するためにどうすればいいのかということと,九州大学のお話は,せっかくのパフォーマンス評価を相対評価で合否を決めているように聞こえたのですけれども,そのあたりの内部評価者同士の評価の観点,基準のすり合わせをどうされているのかということについて教えていただければと思います。 

【西岡准教授】  まず,ナショナルな制度にすることができるのかどうかということで言うと,イギリスでできるものが日本でできない理由はないだろうと思っています。ただし,制度を作るのには時間が掛かりますし,時間を掛けてやる方がいいだろうと考えています。
 前回の指導要録改訂に関する議論をしたワーキンググループに私も委員の一人として参加させていただいたのですが,あのときも評価の結果が進学等において活用される地域ごとに,一定の統性が保たれる方が良いと提言されてはいるのですけれども,そのための具体的な方策や制度作りにはまだ手が付けられていない状況なわけです。
 これは私の個人的な意見なのですけれども,もう個々の大学が優秀な学生を取り合って競争している時代ではなく,日本の教育水準全体をどうしたら上げることができるのかということを考えるべき時代に来ているのではないかと考えて,あえて冒険的な提案をさせていただきました。 

【林教授】  濱名委員はなかなか厳しいところを突いてこられますが,まず,拡大は可能なのかという御質問については,難しいとお答えするしかないだろうと思っています。先ほど申し上げましたが,26名を採用するために35名の教員がいるのです。しかも,その講義をある程度均質な環境で提供しないといけないということですから,それほど大きな体育館のようなところで提供するというわけには当然いかないわけでありまして,我々,2,555名の定員を持っておりますが,これを全部に拡大するということはまず不可能だろうと思っております。
 それと,もう一つ,評価をわざわざA,B,Cととったのをまたオーダーに戻しているということですが,確かにそういう観点はございます。ですから,実は先ほどあえて申しませんでしたが,Dという評価を付けた理由というのはスライド18にありますが,Dについては九大生として受け取りたくないという場合の評価にしてくださいということは,事前に評価者に申し上げています。それ以外にA,B,Cの頻度についてもある程度のガイドラインを実は用意をしております。用意をしていないと,それぞれの先生方が,いや,自分の評価としてはCかDだととられ,非常に低い点ばかりが続くということもありますので,A,B,Cの分布を,ぎちぎちとした分布ではございませんが,ある程度の範囲でお示しをし,その範囲で評価を頂いているということです。そういう意味でオーダーには直していますけど,先生方の意見としては,もちろん3名いるわけで,全く一緒であれば1名でいいわけですが,それほどに大きく違うということはございません。
 よろしいでしょうか。 

【濱名委員】  伺っていると,林先生の御報告は,せっかくおやりになるのであれば,それをルーブリックにしていかれるともっと拡大できるのではないかと思ったのですがどうでしょうか。あと,西岡先生にお伺いしたいのは,私もルーブリック評価は大好きなのですが,問題は初等中等教育でこういう仕組みを導入してこないで,高大接続のところでやり始めたら,これはうまくいかないだろうと思うのです。例えば,ポートフォリオ評価も大学ではあまりうまくいっていないです。つまり,とことん習慣付けとかモチベーションの喚起などいろいろなことをやらないとポートフォリオは定着しないのです。初等中等教育からこういうパフォーマンス評価を落とし込んでいって,その延長線上で入試のシステムにしていこうというのなら分かるのですけれども。かなり現在の初等中等教育の評価の実態との間の埋め方がかなり難しいと思うのですが,そのあたりはどのようにお考えでしょうか。 

【西岡准教授】  鶏が先か卵が先かといった議論になってしまいますが,実際に高校へ行きますと,入試が変わらないからできないと言われますし,私はできるところから全て始めるべきだと思っております。
 実際,初等中等教育でパフォーマンス評価を広げようと思うと,やはりイメージを作って共有していくというところが必要になります。したがって,一気に地域ぐるみでするのは難しいというのであれば,大学と実験校がネットワークを作って,まずはそういう共通のシステムを作ってみるというようなことから広げていくのでもいいのかもしれません。いずれにせよ,どの観点の意味がどういう評価方法に対応していて,どういう課題の与え方をして,どの程度のパフォーマンスが見られればどういうレベルと評価できるのかというようなイメージを共有し,それに向けて教育をしていくということができるのであれば不可能ではないと思います。
 実際,英語で園部高校をモデルにして4校に取り組んでいただいたら,園部高校で3年掛かったルーブリック作りが,ほかの学校では1年でできたということを現に体験していますので,日本の先生方の順応力というか,学ぶ力というのはすごいと感じています。 

【浦野委員】  二つ質問させていただきたいと思っております。
 まず,西岡先生の方ですけれども,実際のポートフォリオ学習といいますか,これを今,小中高などで実践しているところにおいては,この先に自分なりのキャリアといいますか,あるいは職業観といいますか,そういったようなものまで見えるようなポートフォリオ学習になっているのかどうか,その辺教えていただければと思います。
 それから,林先生の方には,このプログラムを通って九州大学に入った学生は非常にいい学生が採れているという言葉がありましたけれども,その関係で実際,入った後,チューターの指導を受けるとあります。このチューターはどういった方々がされているのか。あるいは,このチューターを学生は選択することができるのか。
 それから,もう一つは,今,西岡先生にもお伺いしたのですけれども,キャリアといいますか,職業観といいますか,そういったものを学生はこの中でどのように身に付けていけるのだろうかという,その辺を少しお伺いできればと思います。 

【西岡准教授】  大学の中でポートフォリオを使っている場面では,やはり教師という仕事のイメージが変わってきているように思います。実際,学生同士でこういう経験をしてきたということの交流もしてもらっている中で,中には,自分は教師という道は向いていないのかもしれないといったことに気付き始める学生も出てくるかもしれませんが,そういう生の学びの姿を共有したり,自分なりに整理をするという作業,あるいは対話をするということを通して自分のキャリアを考えるための一つのツールとしては機能していると思います。
 先ほどの御質問にもあったように,ポートフォリオがうまくいっていない事例というのは,一つはどういうポートフォリオを作らせようとしているのかを指導者側もうまくイメージをされていない例が多いのではないかと思います。更に言うと,ためっぱなしで終わっていて,そういうふうに基準に照らして自己評価をするだとか,編集をして振り返りをする,あるいは自分の振り返りを生かしながら他者と対話し,学び直すというような,その仕組みも併せて作らないとうまくいかないのだろうと思います。
 京都大学で教職課程ポートフォリオを作るときにも,教師が幾ら口を酸っぱくして説明してもなかなか分かってもらえないことが,先輩がモデルを見せればぱっと分かるということが起こりますので,システムを作るときに,まずは,いい先輩を育てるというところから始めたのですが,そういう作業は必要になってくるのだろうと思います。 

【浦野委員】  小学生,中学生の場合もやっていますが,その場合に実際,職業に結び付くようなことはあるのでしょうか。

【西岡准教授】  小学校・中学校で,総合的な学習の時間で取り入れている例を拝見している限りにおいては―私自身,自分自身が実践を作るというところに関わりますので,広く調査をしたわけではないのですけれども―小学校レベルで言うと,進路選択というよりは,やはりその前提となる自分の生き方を考えるといいますか,自分の価値観を問い直す例が見られます。例えば自分の地域について調べていたときに,地域の自慢といえば何かが1番であることだと思っていたような児童が,いや,そういうことではないという意識を持ち始めるとか,あるいは,全く自分に自信が持てていなかった子供に,教師がいいところを見つけて対話をするということを繰り返していくうちに,自分なりの問題意識を持って探究する力が飛躍的に伸びるというような事例は目にしております。 

【林教授】  御質問ありがとうございました。多分,スライド26を御覧になっての御質問だと思いますが,チューター制度についてでございますけれども,チューターは九州大学の教員にお願いしてやっております。誰がという,それほどきちんとしたルールはございませんで,ある程度21世紀プログラムに御理解のあると言うと語弊はありますけれども,ある程度分かってくださっている先生方にお願いをしております。私もその一人でありますが,大体4名の学生を1名の教員に付けております。
 選べるのかという御質問については,選べませんという回答です。彼らから事前に入学前からどういうテーマがやりたいということを出してもらっていますので,その中でなるべく重ならないように,つまり重なってしまいますと話題が一つになってしまいますので,なるべくその話題がばらばらになるというのですか,多彩な話題が1名のチューターの下にいる学生でできるようにということで分けてやっております。
 もちろん,今まで過去にはありませんが,どうしても変えたいという学生がいれば,それは隣の別のところに行ってもらっても構いませんし,チューターがそれほど厳しい何かのガイドをしているわけではありませんで,留学したいのでサインが欲しいとか,今,この学部に行こうかどうしようか迷っているというようなことの相談に乗ったり,もしチューターだけでは解決できなければ,それをある程度知っている先生方に,こういう悩みはどのようにすればいいのだろうといった窓口になったりということで,彼らの学習方向までを決めるというよりは,軽い相談相手といいましょうか,大学としてこういうことがあるということの助言者というイメージでございます。
 その辺でよろしいでしょうか。 

【小林委員】  非常に興味深いお話をありがとうございました。
 西岡先生に1点,濱名委員もおっしゃったのですが,ポートフォリオは大学ではほとんど,形を作って魂入れずという大学が多くて,これは多分,一つはポートフォリオを活用した指導が,先生方にとって非常に負荷が高いというのが1点と,あとは活用した後に何に使うのかということが非常に見えづらい点にあると思っております。そうしたときに,これが入試に使えるというある程度の目安が付くのであれば,もしかしたら高校で使えるかという点も感じたのですが,これを入試でどう使うのかについてのイメージがつかなかったものですから,入試との関係を教えていただければと思います。
 それから,林先生にも1点。良い学生とか,優秀な学生という言葉が結構出てきたのですけれども,これはアドミッションポリシーは分かったのですが,一般入試で入ってきた学生たちと入学した後にどのような違いがあるのかというところを比較して教えていただければと思います。
 よろしくお願いします。 

【西岡准教授】  入試でどう使うのかというときには,例えば面接のときに持ってきていただく,あるいは書類審査の段階で出していただくというようなことも考えられると思います。ポートフォリオだけ見てもよく分からないことも多いので,ポートフォリオを使ってプレゼンをしてもらって,それに関して質疑応答をする中で,その受験者の学習履歴などを評価するということは可能なのではないかと思います。
 多分,皆さんが一番疑問に思われるのが,コントロールされていない状況で作られたものを評価対象にして大丈夫なのだろうかというところだと思うのですが,大学院入試などでは論文を提出させて試問をするわけです。そういうことを考えますと,試問をする,対話をするということの中で,ある程度,本人の本当の学習履歴なのかどうかというのは確かめられるのではないかと感じています。
 そういったところでよろしいでしょうか。 

【小林委員】  ルーブリックと,評価基準とを見ながらポートフォリオをやっていってどこが足りないとかいうのを到達度を見ていくという使う方法があるとおっしゃいましたが,入試としてポーフォリオを提出し,基準と照らして判断するということなのか,それともファイルをそのまま持ち込んで,面接に使ったりするのかというところが分からなかったので。

【西岡准教授】  両方の使い方ができると思います。例えば高校で調査書を信頼できるものにするというときに,実際にスライドの9ページに載せているような科目明細を高校が共有していくとすると,文芸のテキストを読むときに行った課題三つの作品というのをファイリングさせておく。それを評価基準に照らして評価しつつ,実際の証拠物としてためていくというようなことは可能です。実際にパフォーマンス評価を取り入れてそういう評価システムを共有していくということになると,具体的なレポートといったものを残していくということが必要になってくると思います。
 一方で,特に最良作品集ポートフォリオのようなタイプになりますと,今度は自由に生徒たちが成果物を入れることになります。例えば課外活動の成果だとかボランティアだとか自由研究だとか,自由な成果物を入れていくということができるようになってまいります。そうしますと,各教科の基礎学力―基礎学力といっても思考力・判断力・表現力も含めた幅広い意味での基礎学力ですが―については基準準拠型ポートフォリオで評価しておいて,プラスアルファの個性的な部分を最良作品集ポートフォリオで評価をするというようなデザインも考えられるかと思います。 

【林教授】  良い学生という言葉ですが,私は自分の意思としては優秀という言葉を使っていないつもりであります。良いという言葉もダブルクオーテーション付きで使っている理由は,つまり,人によって違いますので,あまり一般的な「良い」ということで独り歩きをさせたくないということです。
 “良い”学生という意味ですが,彼らは極めてアクティブであります。先ほども御紹介しましたが全体の1%であります。しかも11の学部どこに行ってもいいということになっています。決して彼ら26名は連れ立ってどこかに行くということはしません。つまり,自分は生物に興味があるから,本日は農学部,明日は理学部の生物という形で,それぞれ自分でその教室に行くわけです。当然そこの教室には本来の学生がおります。他の学生は,彼らは一体何者だと感じます。彼らと申し上げてもクラスに一人か二人です。どうも21世紀プログラムの学生らしいが,なぜ自分たちのクラスに来るのだろうということで,本来の学部の学生は非常に奇異に感じます。もちろん,そこに行った21世紀プログラムの学生は当然,本来の学生に対して負けたくはないという心を持っています。1%ですが,そのことがいろいろな学部で起こっていますので,今,スライド画面に示しておりますとおり,「カナリア効果」という言い方をしています。一人しかいないのですが,九州大学全体の学生のアクティブ化につながっていると思います。
 なおかつ,21世紀プログラムの学生は実は学内にとどまっていません。学外のNPO,NGO,その他,町の活動に率先的に入っていって,企画運営,その他をやっていまして,学内で見つけるのが難しい学生も少なからずおります。
 あと,もう一つ,ひょっとすると御質問の中に学力的な意味を含んでおられるのかと思って,あえて言い過ぎかもしれませんが,実は,21世紀プログラムで落ちた学生が九州大学に入ってきております。今年,私の講義で,講義の題目しか見ずに教室に行ったら21世紀プログラム入試の司会をした先生がいてびっくりしたということもあって,そういう学生が少なからずいて,落ちた学生もやはり今度は負けられないということで,ほかの選抜で翌年以降に入ってきたりはしていますので,いろいろな意味で“良い”学生が採れていると思っております。
 よろしいでしょうか。 

【近藤委員】  まず西岡先生に2点ほど質問させてください。9ページ,先ほど御説明いただきましたけれども,その上の方の「完成イメージ」という,非常に魅力的なタイトルでパネルを御用意いただきました。その中の右側の大学の欄で,3番目のところで,入学者の学力レベルに応じた教養科目の提供とお書きになられています。通常,大学は入試の中でアドミッションポリシーを基に入学を許可します。逆に言えば,入学したからには,いわゆる教養科目を受けることができる能力を身に付けているという形で,カリキュラムポリシーの中でナンバリングの位置付けをしていると思います。この図では教養科目の提供におけるフィードバックというか,そういうものを目指しているような書き方ですので,その辺については少し御説明をお願いしたいと思います。
 それからもう1点は,教職課程で具体的な事例として教職課程のポートフォリオを作られたということです。実際それを受けられた学生さんの評価が,16ページの方に自己点検,自己評価という形で出ていると思うのですけれども,実際,大学の教育は実際の教員になった後,そのことが一体どういう形で反映されるのか。もしそういう資料がありましたら教えていただければと思います。
 それから,林先生の方ですけれども,先ほどから“良い”という評価,AO入試の方の募集要項の6ページに,先ほどありました独自のカリキュラムと,それから共通で受けるカリキュラムというものがあると思います。例えば,GPAという形で成績評価をやられているのであれば,その辺で一般の学生と,AO入試で入られた方の差があるのかどうか。
 それと,もう1点,11月に合格が決定するということで,これはいろいろな形で4か月,5か月,入学までの期間があるということになると思いますので,入学前教育を特別な形でAO入試の学生たちに対してはやられているのかどうか,教えていただければと思います。 

【西岡准教授】  まず,9ページの上の方のスライドに載せている大学の囲みの3点目についての御質問ですけれども,これは入試としては付け足しの部分なのですが,やはり高校で行われた評価結果をどう検証していくのかというところが問題になると思います。イギリスの場合は第三者機関である資格授与団体が出題から採点結果の検証まで全部やっているわけですけれども,日本の場合は,できるだけ高校と大学とのやり取りでやっていくということができないだろうかと考えました。例えば高校で英語のプレゼンテーション力やディスカッション力を評価し,その結果を大学に送っていただく。そうすると,英語のプレゼンテーションやディスカッションをするような授業を大学でやったときに,もし,ついていけるはずだと評価をされていた者が,大学の授業で与えた課題に対応できないということがあるとすると,その高校の評価には問題が生じているのであろうから,何らかの調査なり検証なりをするというふうに,評価結果の往復,照らし合わせができるようになるのではないかというイメージで書いております。
 それから,教職課程ポートフォリオのスライドでは,学生のコメントを二人分紹介しているのですが,これら二人の学生は,教員採用試験を突破して,この4月から就職しました。ですので,採用試験を突破できるようなレベルで自分の学習の振り返りや充実が図れたというのが一つの効果としてはあったかと思うのですが,その後どうなっているかという点は,採用後はまだお会いしていないので御報告できません。 

【林教授】  まず一つ目は,GPAはいかがかという御質問かと思いますが,26名いろいろおります。非常に優秀な者から,やや困る学生までいるのは,それは事実です。それはどの大学でも同じことだろうと思いますから,21世紀プログラムは優秀ですと言って,私がここで良い子ぶろうなどとは思っていません。それは事実としてお伝えすべきだと思います。
 ただ,それは先ほど御紹介したように,それぞれの部屋に,自分の興味のある専門のところに行ってそれぞれ活躍しているわけですから,その中でもトップクラスで帰ってくる学生もいれば,やや負けたような形で帰ってくる学生がいるのも,それは残念ながらというか,正直に申し上げてそうであろうと思っています。
 それともう一つは,入学前教育はいかがかという御質問かと思いますが,確かに11月の下旬に合格発表をして,4月まで5か月ほどございますので,それは英語の試験を受けるようにとか,読書をしてレポートを上げるようにとか,あとは理科系のものを与えて,それをメール等で,今はメールが使えますのでメールアドレスを登録させてメーリングリストを作っておりますが,それで事前に既に連絡を取っております。それと,今年は入学式の前に,4月に入った直後に合宿もいたしました。その中でもうほとんど彼らは,多分,メールでいろいろな意見を交換しているのでしょうけれども,昨日今日会ったわけではないような感じで,もう和気あいあいとやっております。そういう入学前教育ということはしております。
 その辺でよろしいでしょうか。 

【荒瀬委員】  ありがとうございます。
 お二人に御質問する前に,高等学校での総合的な学習の時間の評価について申し上げますと,評価をどうするかというのは非常に大きな課題としてありまして,その中でポートフォリオについても検討し,実際にやっている学校があります。ポートフォリオを使い、生徒自身が自分の取組を振り返って,どのように理屈付けられるか。それは私がおりました高校ではこじつけ力と呼んでいました。まして,そのように言わないと,こんなことやった,あんなことやったということでもって満足してしまって,足りないところを見ないで,やったという充実感だけで終わってしまっては次へつながらないと思って,そういった言い方をして活用しています。
 ただ,これを大学にどうつなげていくのかというのは,それぞれの生徒の中に蓄積された力という点ではつながっていくだろうとは思うのですけれども,入試のときにどう使うのかを考えると,なかなか難しいものがあるだろうということを思いながら伺っておりました。
 西岡先生には二つ御質問をしたいのですけれども,一つは,資料の21ページにあります京都府立園部高等学校英語科の評価基準ということで,大変詳細な評価基準,ルーブリックがここに書かれていますが,例えば6段階とか,5段階でもそうだと思うのですけれども,これだけのレベルにまで至るのは,先ほどのような授業を通してこんなところまで行くのかということです。ルーブリックを読む限りは,これは相当レベルの高いものだと思います。中高一貫校のコースと高校3年間だけのコースがあって,高校3年間の3年生もまたそのレベルにまで達するというのは,相当な指導の充実があるのでしょうが,それをどのように見ておられるのかということが1点。もう1点は,先ほど御提案を頂いたわけですけれども,今,各大学が入試改革に向けていろいろとおっしゃっている。特に,国立大学が盛んで,京都大学も新しい取組を発表になっていらっしゃいますが,学内で西岡先生の方から様々な御提案をなさっていらっしゃるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
 林先生にはやはり二つありまして,一つは,先ほどの御質問に対するお答えとして,必ずしも優秀かどうかは,というお話もありましたけれども,九州大学にとっては全体のアクティブ化につながっているというお話でした。その点について間違いないことかどうかということをあえてもう一度確認させていただいた上で,それなら,なぜそういったことを他の大学はなさろうとしておられないのか,あるいはしておられるのか。あるいはまた,九州大学から他の大学に対して発信しておられるのかどうか。そのあたりについてお考えをお尋ねできればと思います。 

【西岡准教授】  21ページの園部高校の英語の評価基準について,高校を卒業するまでに全員がレベル6に到達するかといいますと,そうはなかなかならないのですけれども,全員をレベル4以上にはしようと,先生方は意識をして取り組んでおられます。リーディングで言うと,例えば複文構造が理解できて,前から読み進めることができるというような評価基準がありますが,これは確かに大学で学術に取り組んでおりましても,そういう文構造が理解できるというのは一つの鍵になります。
 ただし,英語の学力差ということで言うと,単語力の差というのが出てきますので,単語力のレベルに合わせて複文構造の中でも単語のレベルの高いものと低いものを使うというような,内部での差異化というのも同時には図りつつやっておられます。
 複文構造が分かるということが英文理解の一番のコアになっていて,それを乗り越えることができれば,逆に単語に関してはあとでキャッチアップをして,受験が差し迫ってきたときにぐっと伸びると聞いておりますし,先ほど御覧いただいたような様々な学習活動に楽しく取り組むことを通して,英語嫌いが非常に減っているというようなことも聞いております。
 あと,下半分に書いてある知識面です。この文法事項だけはきちんと押さえておかなければいけないというところを学校としても共通理解をして,例えば文法の文構造を捉えるための板書の記号など,あるいはワークシートに使う記号なども学校として統一をすることで,確実な定着を図るべきところは図っているという様子を観察しております。
 京都大学での入試改革に関しましては,現在進行中の議論ですので,本日の発表は大学としての取組というよりも私個人の研究成果に基づいた提案だとお受けとめいただきたいのですけれども,京都大学の場合は学部単位で入試改革を議論していますので,私自身,教育学部の中での議論にはもちろん教員の一人として参加しております。いい入試をしようと思えば,九州大学でやっておられるようなスタイルの入試になるわけなのですが,果たしてできるのだろうかと考えれば考えるほど自問せずにはいられません。私はむしろ,九州大学でやっておられるAO入試のような評価を高校で一般化し,その高校の評価を大学側が受けとめるというシステムを作れたら理想ではないかと思います。そうすると,負担を高校におろすのかと怒られてしまいそうなのですけれども,高校の先生方は教育活動の一環として,それこそ荒瀬委員が前任校で取り組んでおられたように,既にもうそういう学習活動を取り入れながら授業をやっておられるわけです。その先生方の評価課題や評価基準をもう少し高校間で共有をしていただくということがあれば,その評価結果を大学側が受け止めることもできるのではないかというのが,この高大接続評価システムの基盤にございます。 

【林教授】  荒瀬委員から,あなたの答弁は間違っていないのかという御質問のように聞こえて,私はここで間違った答弁をしたとは思っていませんので,21世紀プログラムの学生はアクティブなのかと,カナリア効果は事実なのかということの確認ということでよろしいでしょうか。
 はい,そのとおりでございまして,非常にアクティブでございます。本当に学生を一人呼んでいただいて,ここで講演をさせた方が,私がここでつらつら言うよりもいいのではないかという気がしております。先ほど西岡先生の方からも,九州大学のようないい入試をと言っていただいたのも,何かちょっと気恥ずかしい思いはしておるのですが,では大学はきちんと広報しているのかというと,広報はしておりますし,九州大学に来ていただいた大学に関しては,我々の本日お示ししたようなものを含めて御紹介はしております。

 ではなぜ広がらないのかと私に質問されても,それは困るわけであります。聞かれれば正直に全て出しておりますし,秘匿するものはないですし,何でも聞いていただければノウハウはお出しします。ですが,先ほどのスライドの最後にお書きしましたけれども,やはり手間は掛かるのです。濱名委員からも御質問があったように,手間は掛かるのです。大変失礼な言い方ですが,これに取り組むだけの体力と,それだけの理解のある教員団がいる大学をどれだけ作るかです。大学というのはいろいろな人がいて一つです。九州大学の教員全てがこの21世紀プログラムを支援しているわけではありません。だから,それはほかの大学でも,21世紀プログラムを評価していても,それに賛同していただく教員がある程度のセットで集まるかどうかがその大学に懸かっているのだろうと思います。
 そういった答えで先生の意図に沿っているのかどうかは分かりませんが,必要であれば後でまた御質問いただければと思います。以上です。 

【吉田委員】  私が伺いたかったことは,ほとんど林先生から出てしまったのですが,実際に本日お話を伺っていて,子供たちを中心に考えたときに,我々も今,21世紀型の教育というか,対話型というか,参加型の授業をどんどん進めていきたいと思っていますし,英語一つとっても,先ほどの京都の例ではないですけれども,かなりそういう方向に進めたいとは思っています。しかしながら,大学入試全体の部分を考えてみると,やはりマークシート型というか暗記型の入試が進んできている。それとこの部分というのは非常に合致することが難しい。
 実際に今,西岡先生のお話の中で完成イメージとしてあった評価結果を大学に提供して,全体の評価,これを作るまでにはかなりまだ時間が掛かると思いますが,できるとすれば,例えばセンター試験のような部分をもう少し改良して,そういう思考力を求めるような入試というか評価を作って,そしてその上にこういうパフォーマンス入試のようなものをやっていただけるような体制を全大学がとれるという体制になると,子供たちは迷子にならないと思います。
 ただ,今の状況でいくと,今までどおりの入試の体制と,九州大学のこのAO入試もそうだと思うのですけど,それは林先生にお尋ねしたいと思っていたのですが,この入試を受けるための体制と,一般のセンターテストを使った入試を受ける体制は,勉強姿勢も変わってくるのではないかと思うのです。その辺のところで我々がどう持っていけるのか。そういう意味では高大接続という部分で考えたときに,できるだけそういう,先ほど来,いろいろお話しになっていますけれども,京都大学の中でも学部ごとに話が違うとか,それから,九州大学の中でもやはり反対していらっしゃる先生もいるとか,そういう部分でのまとめというものをいかに上から,国の教育の中央にある文科省なり何なりとして持っていくということに懸かっていると伺いましてありがたく思っております。
 林先生に最後に一つだけ私,質問させていただきたいのですが,このプログラムの合格者が,過去3年間のAO入試の要項の22ページに出ているのですが,女子生徒の多い理由というのは何かあるのでしょうか。それだけお教えください。 

【林教授】  聞かれていないことを申しますが,入試対策はできません。できないと思っています。つまり,センター試験や普通の試験の勉強と21世紀プログラムの入試それぞれに対応させるのは高校生に負荷ではないかと,まあ,そこまではおっしゃっていないかもしれませんが,そういうつもりはありません。
 つまり,対策を立てて入ってくる学生は非常に少のうございます。21世紀プログラムに入りたいといっていろいろ言いますけれども,これは対策の立てようがないのです。高校の先生方とお話をしますと,21世紀プログラムに対してはもう生徒を出すしかないとおっしゃいます。何か面接の仕方,その他について入れ知恵をしたからといって通るものではありませんので,ですから,日頃の生活で11月に来てくださいと言っています。日頃,センター試験に向けて勉強している2日間だけ九州大学の敷地に来てくださいと,それは特別な必要はありませんということで申し上げています。ですから,これに対策を立てて,万が一落ちた場合のダメージの方が私たち,心配ですから,そういうつもりはありません。だから,対策は立てられない入試を目指しています。日頃の高校生に来てほしいと思っています。
 女子生徒が多いというのは,これは非常に懸念しております。ですが,これも多分,先生方は御存じでしょうけど,18歳における言語運用能力は,やや女性の方が高いように思っております。そこが,私は男性ですが,やや悔しいところではありますが,これを解消するのは結構難しいと思っております。

 その辺で回答になっておりますでしょうか。 

【吉田委員】  ありがとうございます。
 それで,今,先生の前段の部分なのですけど,実際,私が今,言いましたが,ただ暗記・詰め込み型の勉強をしていくという部分と,やはり高校時代に思考力を育てるような,発表の力とかも含めて,そういう力が育っていないとやはりだめだということでしょうか。同じ勉強をしていても。 

【林教授】  いいえ。そういうつもりで回答したつもりはありません。日頃の高校の勉強の中で君は何を考えているのですかということを,別に朴訥(ぼくとつ)とした言葉でもいいですし,プレゼンテーションとしてきれいに発表するというようなことを我々は期待はしていません。あなたが何を考えていて,ほかの人の意見を聞いたときにどのように考えたのか,それがちゃんとして骨が通っているかであって,それを思考力という言葉でおっしゃっているのであればそうですが,それはそういうことです。 

【吉田委員】  それが理想だと我々も思うのですけれども,それができているかどうかという不安を感じているということです。

 【林教授】  もちろん私たちも感じていて,是非多くの学生に受けてほしいのはそういうつもりです。 

【及川委員】  ありがとうございます。
 西岡先生に確認といいますか,少しお伺いします。9ページの完成イメージのところで,高校で教科ごとに10段階で学力評価ということが書かれており,評価結果を大学に提供するとあります。これを見たときに,まずイメージしたのは,この下にありますように調査書が信頼できる状態ではないので,信頼できるものにするということで,高校が10段階で学力評価を行って,それを前提に九州大学の21世紀プログラムのようなパフォーマンス評価でアドミッションポリシーに基づいた学生を採っていくというように捉えました。しかし,教科ごとに高校が10段階で学力評価をするとなると,単純に共通のテストをイメージしたのですが,ところが,先ほどの御説明ですと,イギリスのシステムの紹介がありましたけれども,このような形で,教科ごとに10段階で学力評価をする,そのシステムそのものの中にパフォーマンス評価を取り入れるべきである,そういう意味でおっしゃったということなのでしょうか。 

【西岡准教授】  筆記テストでできる範囲は筆記テストでするということも考えられると思います。例えば,今のセンター試験は余りにも大規模でやるのでマークシートにならざるを得ないわけですけれども,地域ごとに自由記述式問題も含めた共通テストをやって,その採点は高校をシャッフルして行う。高校の先生方が実際に採点をするという形にすれば,もっと思考力を問うような共通テストを高校で実現することができますので,もうセンター試験をやめてしまって,そっちにエネルギーを割いたらどうかというのは一つのイメージです。
 加えて,イギリスの科目明細を見ていただいたら分かるように,例えば「話す・聞く」の課題では個人が貢献するとかグループ活動をするということも含めて評価の対象になっているわけです。そうすると,どういう活動を高校で提供し,その活動の中でどういう姿が見られればレベル何番と評価できるのだろうかというイメージを高校の先生方が共有すれば,高校の先生方が評価されたことを,大学側で受け止めていくシステムになるのではないかと思います。もちろん先生によって甘い辛いが出るということで言えば,先生方をトレーニングするというシステムが必要になると思いますし,あるいは評価者に第三者が加わるというようなシステム作りも必要かもしれませんけれども,理論的にはできますし,現にイギリスはそのシステムで回っているということを御紹介した次第です。 

【安西部会長】  ありがとうございました。
 時間が来ておりますので,一応ここまでにさせていただきます。御意見等々ある方,まだおられるかと思いますけれども,西岡先生,林先生には大変貴重な発表を頂きまして,また,真摯なお答えも頂きまして,改めて深く感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。 

(2)教育再生実行会議の状況等について,文部科学省から資料3及び4について説明があり,その後,意見交換が行われた。 

【安西部会長】  それでは,もう1件の方に移らせていただきます。前回,事務局からも御説明がありましたが,6月以降の政府の教育再生実行会議におきましては,高大接続・大学入試の在り方についても議論が行われていく予定だと伺っております。その審議に当たっては,この部会の審議状況を報告させていただく等々,この部会の審議を生かしていただくようにしたいと考えております。そのため,教育再生実行会議の状況等とともに,この部会の審議状況をまとめてもらっております。この資料につきましては,本日の審議,御意見等も踏まえて修正も可能だと思います。それでは,説明をよろしくお願いします。 

【田中高等教育政策室長】  まず,教育再生実行会議の状況について御説明をさせていただきます。資料3を御覧ください。
 教育再生実行会議は,内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進するために本年1月15日の閣議決定に基づき設置されまして,設置当初はいじめ問題の対応や教育委員会の在り方など,初等中等教育を中心に審議を重ねまして,これまで二つの提言を取りまとめているところでございます。本年4月以降は,大学教育などの在り方について審議を重ねまして,今週水曜日に行われた第8回の会議におきましては,資料3の5から13ページに別添3という形でお付けしておりますが,そこにございますような提言素案について審議が行われたところでございます。今月中にグローバル化に対応した教育環境作り,イノベーション創出のための教育研究環境作り,学生を鍛え上げ,社会に送り出す教育機能の強化,社会人の学び直し機能の強化,大学のガバナンス改革など,これからの大学教育などの在り方に関する提言が取りまとめられる予定となっているところでございます。
 そして,その後,6月以降におきましては,高大接続・大学入試につきましても,教育再生実行会議で議論を開始する予定とされているところでございます。
 このような中,教育再生実行会議と中教審との基本的な関係につきましては,教育再生実行会議が大きな方向性を取りまとめて,それを受けて中教審において具体的な改善方策を検討するというものが基本となっておりますが,この高大接続・大学入試ということに関しましては,昨年度から本特別部会で審議を行っていただいておりますので,6月上旬に開催予定の教育再生実行会議におきましては,高大接続特別部会の審議状況を報告するなど,本特別部会の審議も踏まえた検討が行われるための運営がなされることとなっております。
 また,今後,本特別部会においても,教育再生実行会議の議論の状況などを報告させていただきまして,それも踏まえた審議もお願いしたいと考えております。
 資料4を御覧ください。資料4は,教育再生実行会議への報告を念頭に置きまして,高大接続の現状を課題とともに,本特別部会のこれまでの議論の方向性を整理させていただいた資料でございます。資料4の1枚目で,まず現状,課題を整理しておりますが,18歳人口の減少や大学進学率の上昇,大学の収容力,大学入学志願者に対する入学者の割合が9割を超えるという,いわゆる大学全入時代と言われるような状況,定員未充足の大学の増加,諸外国における大学進学率の上昇,高校教育制度の多様化の進展,高校求人数の激減などを高大接続を巡る現状として掲げた上で,主な課題といたしまして,大学入試の選抜機能の低下により,入試での学力担保が困難になっており,特にAO・推薦入試の学力把握措置が不十分であること,いわゆる難関大学においては依然としてペーパーテスト偏重の入試が主流であり,学生の多様性の確保などに課題があること,高校教育において高校生の学習時間の減少,学習意欲の低下,入試のための学習の特化などの課題があることなどを記載しているところでございます。
 その上で,2枚目,3枚目は前回までも御説明をさせていただいた資料でございますが,これまでの会議での意見や議論を反映,あるいは修正を一部させていただきました主な意見の概要である2枚目,3枚目を基にいたしまして,1枚目の下にございますように,議論の方向性を整理しております。
 1枚目の下の方,特別部会におけるこれまでの議論の方向性というところでございますが,まず,各学校段階での教育が相互の連携の下に行われることが不可欠であること,そして大学入試の選抜機能が低下した現状においては,高校生の学習意欲の喚起や,学力状況の把握などの機能は高校教育においてしっかりと担っていくことが必要であること,そして3点目でございますが,このため,高等学校段階の学力状況の客観的な把握の仕組みの構築などの高校教育の質保障の取組を充実した上で,大学入試は能力・意欲・適性等の多面的・総合的な評価に基づく入試に転換することが必要であること。
 そして,総合力を見る入試への転換という観点から,活用力を問う問題も踏めた出題教科・科目の在り方の検討などの大学入試センター試験の改善,AO・推薦入試における学力把握の取組の充実,本会議でも御議論のありましたTOFLEや全国工業校長会のジュニアマイスター顕彰制度をはじめとした高校生の多様な資質,能力を判定する外部試験の活用が必要であることを記載しております。
 このような本特別部会の議論の状況を教育再生実行会議に御報告の上,今後の審議に反映していきたいと考えております。
 なお,前回,御説明させていただきましたとおり,自民党の教育再生実行本部におきましても,大学入試も含めた教育再生全般について検討が行われてきたところでございますが,昨日,第二次提言が取りまとめられたところでございます。参考までに机上に第二次提言の方を配付させていただいております。大学入試に関わる部分を簡単に紹介させていただきますと,第二次提言,めくっていただきまして,「はじめに」の後にページ番号がございまして,2ページ目でございます。「大学・入試の抜本改革」部会と上にございますところの,真ん中上あたりの1,大学入試の抜本改革の箇所にございますように,高校在学中,複数回挑戦できる達成度テストを創設,AO・推薦入試での達成度テストの活用による学力保証措置の徹底と,それを前提とした大学入試の多面的評価への抜本的転換といったことが提言をされているところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。 

【濱名委員】  取りまとめ,前回のより大分良くなったのですが,少し気になりますのは3ページ目の「5 個別入試の改善」のところで,二つ目のところで,「思考力や表現力,学習意欲等を丁寧に評価するため」はいいのですが,「入試方法の多様化,評価尺度の多元化の推進は引き続き必要」というような議論を余り明確にした記憶はありません。
 というのは,入試方法をどんどん多様化させてきた結果が現状であるわけですから,入試方法の見直しとか,そういうことはやっていると思うのですけれども,こういう書き方をすると,また新しい方法をどんどん増やしていくことを促進する。これは学士課程答申の審議の初期段階でもこういう書き方はやめた方がいいというので,多分,このようには書いていないと思います。つまり,観点とか見直しをしていかなければいけないということだと思うのですけれども,多様化と書いてしまうと,今あるものはおいておいて,更に新しいものを作るというように見えると思いますし,もう一つは,多元化の推進というのも同じような印象を与えてしまう。やはりそれは明確化であるとか可視化であるとか,あるいは整備であるとか,そこが十分できていないということだと思うのです。
 本日の西岡先生のお話にしても,方法を増やしていくというよりも,むしろ方法を妥当なものに変えていくという議論を我々はしているような気がするのですけれども,多様化,多元化という書き方をしてしまうと,その言葉が独り歩きして,別の会議体に持っていったときには,その部分が取られることが非常に危惧されるところなのですが,いかがでしょうか。 

【田中高等教育政策室長】  この入試方法の多様化,評価尺度の多元化につきましては,特に平成12年の中教審の答申などで使われている言葉でございますが,そこらの意味は,より受験生の能力や適性というものを学力以外のもので幅広く評価していこうという趣旨で使われていた言葉を,そのままこちらに使っているというものでございます。
 ただ,先生が御指摘のとおり,この特別部会での議論といたしまして,より思考力,表現力などを具体に測る方法というものをしっかり進めていこうという趣旨で議論が行われてきておりますので,平成12年当時はそのような趣旨でこういう言葉も使われてきたと思うのですが,この多様化という言葉につきましては,一方で選抜方法が多様になり過ぎているというような指摘も,最近は12年頃と違って,あるところでありますので,この部分につきましては,先生が御指摘のような言い方で修正をさせていただきたいと考えております。 

【吉田委員】  ここで一つだけ気になるので言わせていただきますけれども,「主な課題」の一番下に高校生の学習時間の減少,学習意欲の低下ということが書かれています。これにつきましては,私,再三にわたって,この現状のところの上に出ていますけれども,高校進学率が98%,戦後六十数年でもう倍以上になってほとんど義務教育化されてきた中で,中学校の卒業資格というのはありません。あくまでも学齢主義です。ですから,それを今度は,高校段階で,入学試験ということで,それぞれの学校に入る生徒の基準ができて,入ってきているわけですけれども,学習時間が減少している云々というよりも,それに伴って質の保証をする云々ということが可能なのか不可能なのか。
 そういう意味では,ここに高校生の学習時間の減少などと書かれると,学習している生徒はかわいそうです。それから,学習意欲の低下も同じです。そして,ここでまた大学入試においていろいろな方法が出てしまうなんていうことになるとしたら,もっと子供は迷子になります。ですから,そういう意味では,もう少し言葉遣いに気を付けていただきたいし,高校と大学の接続部会の話かもしれませんけれども,中学校までの教育の質の保証というものがないということははっきりうたっていただきたい。
 以上です。 

【安西部会長】  これは大変大事な文面でございますので,是非率直に御意見を頂きたいと思います。 

【土井委員】  3ページ,「個別入試の改善」のところで,一つ目のポツ,「各大学の個別試験では意欲や体験等を評価するとともに」と書いておられる部分ですが,各大学の個別入試で意欲や体験等を評価することは重要かと思いますが,この書き方だと,意欲や体験等のみを評価するようにも読めますので,表現としては,「意欲や体験等も評価する」とか「意欲や体験等をある程度重視して評価する」とか,何か表現を変えていただいた方がいいのではないかという気がします。 

【濱名委員】  吉田委員がおっしゃったところについては,おっしゃるのはよく分かるのですけれども,結局,学校教育全体の,いわばマスタープランだとか接続の問題は高大に限ったことではないというのは,どこか書いていただけるのなら書いていただければと思うのですけれども,ただ,先ほど指摘があったところは,やはり課題として,現状として,出されている部分については,これは大学生の学修時間も同様で,子供がかわいそうだからという議論で事実は事実としてやはり受け止めなければいけないというので,私はこれは残すべきだと思いますし,吉田委員が言われた趣旨は,逆に,高大接続だけの問題に限らないという背景をどこかで書いていただければと思います。

 それともう一つ,「主な課題」の2番目のところで,「学生の多様性の確保」というのはよく分かりません。「学生の多様性への対応に課題」というのなら分かると思いますので,そこはそう直していただいた方がいいのではないかと思います。 

【安西部会長】  一応,これについては,本日御意見を頂いて,できれば事務局におかれましてはメールで意見の聴取をしていただければと思います。その上で,時間の関係もありまして,できましたら私の方へ最終文面は一任ということにさせていただければありがたいと思っております。 

【吉田委員】  今の濱名委員のお言葉にまた返すようで申し訳ないのですけれども,この言葉を残すなら残すでも結構です。そうだとしたら,中学校段階までのことをしっかり書いていただきたい。それから,大学生だって学修していないということを書いていただきたい。大学生がアルバイト三昧で勉強していないということだって書いてくれなければ意味がありません。
 私は,高校生,中学生を守るということではなくて,やはり高大接続だからといって,その部分だけなのですけれども,その裏には高校生の質を保証するとか何とかだけではなくて,やはり高校から大学,そしてその基となる小中の教育というものがあって,初めてここは成り立っていると思っていますので,是非それはお願いします。 

【安西部会長】  私も,これが独り歩きすると学習意欲の低下というか,高校生が悪いかのように受け取られかねないので,高校生が悪いのではなくて,周りが悪いのだと思いますので,そこの書きぶりについては工夫していただければとは思います。
 私からも一つ,恐縮なのですけれども,「大学入試センター試験の改善」という項目があるのですけれども,これについてはしっかり審議をしたと言えるのかというのが,少し私にはよく分かりません。
 いろいろヒアリングというか,発表等はお聞きしたと思うのですけれども,どのぐらい議論したのかということについては,自分としては記憶が余りないというのでしょうか,そういうところがありますけれども,どうでしょうか。 

【田中高等教育政策室長】  大学入試センター試験につきましては,一度,大学入試センターの荒井先生から説明をいただいた上で御議論を頂きました。その時に幾つかの御意見を頂いたものを,例えば「4 大学入試センター試験の改善」の2番目でございますが,こういう意見もあったということで,指摘という書き方をしております。今後,センター試験の審議ということにつきましては,教育再生実行会議等の御議論も踏まえながら,御審議いただく場を設定させていただきたいと思っております。
 また,このペーパーにおきまして,先ほど,御指摘がございましたように,委員の皆様方につきましては,改めて意見等をメールにおいて募らせていただきたいと思います。
 また,例えば「大学入試」「入学者選抜」など,言葉の統一ができていないところもございまして,そこら辺は改めて整理をさせていただきたいと思います。 

【安西部会長】  ありがとうございます。
 今,私が申し上げたところも,主な意見の概要というところですので,そういう意味では言われるとおりかと思います。
 それでは,この件につきましては,先ほど申し上げましたように,メール等で意見を出す時間を取っていただければと思うのですが,いつまでであればよろしいですか。 

【田中高等教育政策室長】  1週間程度はお時間をお取りしたいと思います。改めてメールによりまして委員の皆さん方に御連絡をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 

【安西部会長】  事務局にはお忙しい中,恐縮ですけれども,よろしくお願いします。
 ありがとうございました。それでは,この件はそこまでにさせていただきます。
 教育再生実行会議への報告につきましては,私から行わせていただく予定になっているということであります。本日頂いた御意見も踏まえまして,またメールで御意見あれば頂いて,その上で修正させていただいて,最終的な文面は一任とさせていただければと思いますが,よろしいでしょうか。
 それでは,そのようにさせていただきます。
 どうも貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。
 それでは,本日の部会は終了とさせていただきます。御多忙のところ,ありがとうございました。また,お二人の先生方も改めてありがとうございました。

 ── 了 ──

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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