『北國新聞 』2013年6月17日付
薬草生産で能登元気に 金大、産学連携で穴水に拠点
金大が能登に、漢方薬の原料となる薬用植物の生産拠点を構築する。金沢市の企業から穴水町の農地約13ヘクタールの提供を受け、薬用植物園として整備する方向で検討している。国内市場の8割を占める中国産薬用植物の価格が高騰する中、栽培地を拡大しながら安定した収穫量を確保するとともに、雇用創出などに貢献し、高齢化が進む能登の活性化につなげたい考えだ。
プロジェクトは金大医薬保健研究域薬学系の御影雅幸教授らのグループが担当。廃棄物処理を手掛ける「金剛」(金沢市)が、穴水町兜、旭ケ丘地区の農地約13ヘクタールの提供を申し出ている。
計画では秋までに、金大の研究者や学生、金剛の従業員が鎮痛効果があるシャクヤクを中心に栽培を開始。品種を徐々に増やす。
金剛は穴水町で食品廃棄物をリサイクルした肥料でキャベツを栽培するなど農業ビジネスでも実績があり、栽培が軌道に乗れば、地元で従業員を雇用して大規模生産を展開する予定だ。
将来的には、薬学生の実習の場としても活用するほか、美しい花が咲く薬用植物を多数栽培して植物園としての性格も持たせ、県内外からの観光誘客を図る。
漢方薬の原料となる薬用植物は、伝統医学の再評価を背景に日本や中国、欧米で消費が伸びている一方、主産地の中国では工業化の進展などで生産量が減少しており、今後、供給不足に陥る懸念もあるとされる。国内では北海道などで栽培されているが、十分な収穫量はまだ確保できておらず、金大は独自に能登で産地化を進めることにした。
金大はこれまで角間キャンパスの薬用植物園で、優良品種の種苗確保や栽培方法の開発を進めており、今年4月からは志賀町の農地約300平方メートルで先行的に薬用植物約1千株を栽培している。志賀町と穴水町のほかにも、能登各地の耕作放棄地などを利用し、生産を拡大する方針だ。
御影教授は、薬用植物は栽培にかかる労力が比較的少なく、高齢者に適した作物の一つとした上で、「能登を薬草産地にする取り組みは、国民の健康を守ると同時に、高齢化が進む能登を元気にすることにもつながる。企業や行政と連携し、成果を残したい」と語った。