大学入試改革 「真の学力」徹底議論を『北海道新聞』社説 2013年6月9日付

『北海道新聞』社説 2013年6月9日付

大学入試改革 「真の学力」徹底議論を

 政府の教育再生実行会議が、大学入試改革や高校教育のあり方をめぐる議論を開始した。

 高校在学中に全国統一の到達度テストを複数回行い、大学が選抜に利用する案が浮上している。一発勝負の大学入試センター試験の見直しや廃止も視野に検討が進められそうだ。

 センター試験は、大学の序列化や点数主義を助長し、暗記や知識に過度に偏った受験勉強を強いると批判を浴びてきた。

 高校の3年間で幅広い知識やものの見方、考え方を身につけることを阻害している面は否めないだろう。

 現行制度は課題が山積している。実行会議は9月をめどに結論を出すとしているが、時間を区切らず、慎重に議論を尽くしてもらいたい。

 到達度テストは、高校3年ないしは2年生が年に複数回受けられる方向で検討されている。授業の習得状況をみるとともに、一番いい成績を大学に提出して入試に利用する。

 もちろん大学は独自に2次試験を課すことができる。

 実現すれば大変革となるが、現行の統一試験を前倒しするのでは、学習負担を増すだけになりかねない。

 真の学力とは何か。この観点に立ち、高校から大学に至る学習のあり方を徹底的に議論するのが先決である。新たな選抜方法を一から作り上げる覚悟で変革を目指すべきだ。

 たとえば、フランスの高校生が受ける到達度テスト(バカロレア)は学力のとらえ方が日本と根本的に異なる。「国家がなければ人はもっと自由になるか」といった哲学的な命題を与え記述・口述で答えさせる。

 フランスに限らず欧米各国の入試制度も参考になろう。

 大学入試の統一試験は1979年から共通1次試験が始まり、90年からセンター試験に切り替わった。

 この間、2人に1人が大学に進む時代になり、学生の学力レベルも関心も多様化した。

 50万人もの受験生が1回のみの試験を一斉に受け、1点刻みで評価を受けるセンター試験は、もはや学力の把握に最適とは言えまい。

 一方で、学力試験を原則免除し、面接や書類で選考するアドミッション・オフィス(AO)入試や推薦入試を採用する大学が増えた。

 得意分野を持ち、意欲的な学生を発掘できる半面、最近は基礎学力不足で大学の授業についていけない学生が目立つという。こうした実態が到達度テストの導入検討にも影響を与えている。

 万能の選抜制度など、もとよりない。だが、入試は若者の人生を大きく左右する。理想に近づく努力を惜しんではならない。

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