大学入試改革 センター試験やめるなら 『西日本新聞』社説 2013年6月8日付

『西日本新聞』社説 2013年6月8日付

大学入試改革 センター試験やめるなら 

 大学入試センター試験を廃止し、替わりに高校在学中に複数回受験できる「到達度テスト」を創設してはどうか-。

 文部科学省が大学入試の抜本的改革の検討に入った。早ければ5年後にも導入する。政府の教育再生実行会議で議論し、9月にも提言をまとめる予定だ。

 センター試験をめぐってはさまざまな意見があるが、前身の共通1次試験を含めると30年以上続いており、定着している受験方式である。全面的に改めるとなれば、受験生はもとより、高校や大学など教育現場に多大な影響があろう。

 現行制度と比べ、どのような利点があるのかを具体的に示した上で、関係者の理解を得るための丁寧な説明と、現場の混乱を招かない十分な配慮が必要だ。

 マークシート方式の共通1次試験は1979年、国公立大に導入された。過度の受験競争の反省からだった。90年に始まったセンター試験には私大も参加し、科目を大学が指定できるようになった。

 2013年度入試では、国公私立合わせて840大学(短期大学含む)がセンター試験に参加し、全大学入学志願者の7割超に当たる約54万人が受験した。

 センター試験は本来、受験生の基礎学力を判定することが目的で、それに各大学が独自試験の結果を加味して入学者を選抜することを前提としていた。

 ところが、少子化によって数字上、希望者が全員大学に入れる「全入時代」の到来をにらみ、学生確保のために入試科目を少なくしたり、センター試験だけで合否判定したりする大学が相次いだ。

 さらに推薦入試や面接・論文で審査するアドミッション・オフィス(AO)入試が急増した。12年度に入学した大学生の4割以上は学力試験を受けていない。

 入試のハードルが下がるのに伴い、大学生の学力不足が問題視されるようになった。学力試験を課さない大学からは「高校で学習到達度を測る仕組みを」との要望が強まった。センター試験の開始当時と比べ、社会、教育環境は様変わりしている。時代に応じた手直しは必要だ。問題は何を、どう変えるか、である。

 文科省は、年2~3回程度の到達度テストを行い、最も成績の良かったものを受験に利用することを想定している。

 「一発勝負」をやめ、複数の機会を与えることで、学力をより公正に評価で

きるかもしれない。一方で、試験回数が多くなり、試験対策の期間も長くなれば、生徒の負担増が懸念される。部活動など学校生活にも支障が出かねない。

 授業内容の変更を迫られる学校側の反対もあろう。年数回の試験問題を誰が作り、どう実施・評価するかも課題だ。

 到達度テストは欧米の制度を参考にするという。こうした国の大学は、入学より単位を取得して卒業する方が難しいことが少なくない。見直すのであれば、大学合格をゴールとする受験教育を改め、大学で何を学ぶかを重視し、大学改革と連動した入試制度の再構築を求めたい。

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