教育再生3次提言 どう実現するかが課題『秋田魁新報』社説 2013年5月31日付

『秋田魁新報』社説 2013年5月31日付

教育再生3次提言 どう実現するかが課題

 政府の教育再生実行会議が「これからの大学教育などの在り方」に関する提言をまとめた。2月の「いじめ対策」、4月の「教育委員会制度改革」に続き第3次の提言となる。矢継ぎ早の取りまとめは安倍政権の意気込みを感じさせる。

 大学をはじめ高等教育改革に必要なことはほぼ網羅したとされるだけに、内容は実に多岐にわたり、高い目標がいくつもちりばめられている。徹底した国際化を断行し、今後10年間で世界の大学トップ100に10校以上をランクインさせたいというのは代表例といえる。

 小学校の英語教科化や中学校英語の英語による授業、先進的な高校「スーパーグローバルハイスクール」(仮称)の指定制度もその一環だ。小学校段階から英語力や国際的素養の積み上げを図り、大学のレベル向上につなげるというのは自然な流れではある。

 グローバル化が急速に進む中、思い切った教育改革で世界に伍(ご)して活躍できる人材を育成していく。この狙いに反対する人はまずいないだろう。問題は別のところにある。どう実現するかだ。

 最大の課題はやはり、いかに財源を確保するかになる。提言には日本人留学生の12万人への倍増、研究支援の充実、社会人の学び直し支援といった項目も並ぶが、新たな予算が必要なものがめじろ押しなのだ。

 財政健全化が求められる中、あれもこれもというわけにはいかない。それでなくても安倍政権は公共事業費の増加や成長戦略の諸施策で歳出が膨らみそうな雲行きなのである。

 提言段階とはいえ、財源の裏付けが見込めないようなら、「絵に描いた餅」にすぎないことになる。言い換えれば、安倍晋三首相の本気度、あるいは実行力が試される。

 身近なところでは、小学校の英語教科化も課題として浮上してきそう。ただ本県は既に英語力向上対策に力を入れている。英語では全国的に評価の高い国際教養大も控える。小中学校の学力が全国トップ級という実績も強い味方となる。

 今後、文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」で議論される見通し。計画がいくら良くても、実現できないようでは意味がない。教育現場が無理なく取り組めるような具体策が欠かせない。

 安倍首相が「国の力を強める提言」「大学力が成長戦略の柱だ」と強調してやまない点もやや気になる。国力アップや経済成長に役立たない場合はどうなるのかという疑問が生じてくるからである。

 大学はまず何より真理探究の場としての顔を持つ。豊かな人間性を育むこともまた大事だ。役立つか役立たないか、実利があるのかないのかに力点が置かれ過ぎると、大学本来の存在意義が薄れることも頭に入れておきたい。

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