奨学金延滞金利下げ 進学支援へさらなる見直しを『愛媛新聞』社説2013年5月9日付

『愛媛新聞』社説2013年5月9日付

奨学金延滞金利下げ 進学支援へさらなる見直しを

 文部科学省は、所管の日本学生支援機構が大学生らに貸与している奨学金の返済延滞金の年利を引き下げる方針を固めた。来年度にも実施の方向で検討している。

 就職難や非正規雇用の増加に伴って卒業後の収入が安定せず、奨学金の返済にあえぐ人の救済は喫緊の課題だ。延滞金の利下げは負担軽減の有効な手だての一つであり、速やかな実施を望みたい。ただし、十分とは言い難い。

 さらに延滞金そのものの撤廃や無利子型、返済不要の給付型奨学金の拡充など抜本的な制度の見直しが不可欠だ。

 同機構の公的奨学金は貸与型が基本。世界的にも高水準の学費や長引く不況で大学生の2人に1人が利用。分割返済が始まるのは、卒業から半年後だ。同機構によると、期限の過ぎた未返済額は2011年度末で過去最高の約876億円に上る。滞納者は約33万人。毎月の返済期限が過ぎると、返済額に対し年利10%の延滞金が課される。

 弁護士らでつくる全国組織の相談窓口には、延滞金も含め数百万円の奨学金返済に苦しむ人らの相談が数多く寄せられている。

 奨学金は経済的理由で進学を断念したりすることのないよう学生を支えるためのもの。なのに、返済が重荷となり、卒業してもまともな暮らしができないのでは本末転倒だ。返済の苦労を嫌って利用を控えれば、奨学金制度本来の役割が失われかねない。

 文科省は滞納当初の数カ月は延滞金の年利を1~2%とし、その後は最高5%程度にとどめる案を検討している。返済が遅れれば、延滞金が生じるのも通常の貸借なら当然だ。しかし、学生支援が本旨にしては年利が高すぎよう。

 延滞金自体の減免や、経済状態が悪化した場合に5年を上限に返済を猶予する現行規定はあっても、運用基準が厳しすぎて「使いづらい」と指摘されている。基準緩和や柔軟運用を図るべきだ。

 そもそも延滞金をとること自体がおかしいと言わねばならない。公的奨学金が教育ローン化し、厳しい返済を求めることで「返したくても返せない」低所得の人を窮地に追い込んでいる。返せるようになれば返してもらう環境を整えることこそ肝要だ。

 東京地区私立大学教職員組合連合の調べでは、首都圏中心の私立大に昨年度入学した下宿生の仕送り月額は、過去最低を更新した。保護者の収入が減り、奨学金などに頼らざるを得ないのが実態だ。

 家庭の経済力によって子どもの進学が左右されるような状況は許されない。国は教育の機会均等の原点に立ち返り、思い切った財政投入による大学の学費引き下げや、給付型奨学金の拡充などに取り組みたい。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com