教育委員会 独断防ぐ仕組みがいる『朝日新聞』社説2013年04月20日付

『朝日新聞』社説2013年04月20日付

教育委員会 独断防ぐ仕組みがいる

 政治に振り回されない理念を守りつつ、市民の声を聞く「働く教育委員会」をどう作るか。そんな視点で考えたい。

 政府の教育再生実行会議が改革案を示した。近く中央教育審議会で議論が本格化する。

 教育行政の責任者を、今の合議制の委員会から、首長が任免する教育長に変える。それが提言の柱だ。委員会は大まかな方針を話しあい、教育長をチェックする役割に変わる。

 今より判断が速くなり、責任のありかが明確になる利点がある。一方で、首長がかわるたび方針が大きく変わる、首長や教育長が暴走したら止めにくい、といった心配がある。

 今の制度は戦前への反省から生まれた。住民を代表する委員らが、首長の顔色をうかがわずに独立して教育をつかさどる。

 理念は間違っていない。

 一方、制度疲労があるのも事実だ。「判断が遅い」「市民の声からかけ離れている」。相次ぐいじめ事件への対応で浴びた批判が、それを物語る。

 非常勤で原則5人の委員が、月1、2回の会合ですべてを決めるのは無理がある。

 多くの委員会は、事務方が出す案を追認するのが精いっぱいだ。実態としては、今も教育長が全体を仕切っている。委員の公選制はとっくになくなり、住民代表の性格もうすれた。

 理念と現実への対応を両立できる制度が求められる。

 教育長を責任者にするとしても、歯止めを置く。たとえば、教科書採択や学校統廃合など、大切なことは委員会の同意をえる。委員全員が一致すれば、教育長に異議を申し立てられる。そんな制度はどうだろう。

 さらに大切なのは、首長への歯止めだ。いいように教育長をかえられては困る。任免の基準を明確にすべきだ。チェックする議会の責任も重い。

 民意の反映のため、首長の関与を強める。提言をはじめ多くの改革論の考え方だ。たしかに首長は民意を代表する。ただ、選挙は教育だけが争点ではない。首長がかかわるだけで住民の声が常に届くわけでもない。

 民意の回路は複数ほしい。委員に住民からの公募や推薦を増やし、住民代表の性格を強めるのも一つの手だ。どんな制度も住民の関心と参加がなくては、魂が入らない。

 提言には、国から教委への指示をしやすくする提案もある。

 しかし、現行法でも、子どもの命や体を守る必要があるときなどは指示ができる。地方の自主性を尊重し、これ以上口出しを強めるべきではない。

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