生活不安 重い「借金」 奨学金 返済困難を支援『東京新聞』2013年4月1日付

『東京新聞』2013年4月1日付

生活不安 重い「借金」 奨学金 返済困難を支援

 長引く不況や就職難で奨学金の返済が困難になった人を支援しようと、弁護士らが三十一日、「奨学金問題対策全国会議」を設立し、東京都内で奨学金の在り方を考える集会を開いた。

 全国会議には現時点で、各地の弁護士や司法書士ら約五十人が協力態勢をとっている。集会では、奨学金を返せず派遣切りにあって抑うつ状態になり、自己破産を申し立てた女性の切実な訴えも紹介された。

 「将来のことを考えると不安でいっぱい」と話すのは、福島県出身の女性会社員(25)。高校卒業後、東京都内で一人暮らしをして私立大に通った。学費は親に払ってもらったが、生活費や米国への短期留学費は月十万円の奨学金とアルバイト代で賄った。

 卒業時の返済額は利子を含め計約五百七十万円。毎月約二万四千円を二十年かけて返さなければならない。保険会社の営業として就職したが、三年目から歩合給になった。給料が八万円の月もあって生活するのがやっと。それでも奨学金を返し続け、貯金も底をついた。

 転職を決め、結婚もすることになったが、婚約者から「子どもができたら産休の間、誰が奨学金を返すの?」と言われた。近く年金暮らしになる親に負担は掛けられない。子育てにもお金がかかる。「自分の力だけで返していけるのか。これは“借金”なんだと実感している。誰に相談していいのか」と戸惑う。

 奨学金事業の大半を担っているのは、二〇〇四年に日本育英会などが独立行政法人化した日本学生支援機構。同機構によると、〇一年度の滞納者十七万九千人、滞納額約三百五十六億円から、一一年度の滞納者は一・八倍の三十三万一千人に、滞納額は二・五倍の八百七十六億円に増えた。裁判所を通じた一一年度の支払い督促の件数は一万件を超えた。

 全国会議事務局長の岩重佳治弁護士は「終身雇用や安定収入といった返済の前提が崩れている」と指摘。「独法化した支援機構は奨学金回収を強化しており、金融事業化している。返済に悩み、精神的に追い込まれている人もいる」と話す。

 全国会議で設ける相談窓口では、返還猶予など現行の救済制度の利用や、自己破産など法的整理のアドバイスをする予定。岩重弁護士は「返済不要で欧米では主流になっている給付型奨学金を増やしたりするなど制度改革にもつなげていきたい」と話している。

 

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