なるほドリ:京大の教養教育改革とは?『毎日新聞』京都版2013年3月23日付

『毎日新聞』京都版2013年3月23日付

なるほドリ:京大の教養教育改革とは?

◇「高等教育院」で国際人育成へ 手続きなどめぐり反対運動も

なるほドリ 京都大のキャンパスで反対運動が起きているようだけど何に反対しているんだろう?

記者 それは「国際高等教育院」に対してですね。国際的に活躍できるグローバルな人材を育てるため、各学部が一元的に入学後の教養教育のカリキュラムを見直そうという、松本紘学長肝いりの組織改革です。しかし、「学内の手続きが一方的で問題がある」などと反対し、半ば公然と松本学長の辞任を求める教員もいます。

Q 難しい名前だけれど、一体何をしようとしているの?

A まず、京大の教養教育の経緯を知っておいた方がいいでしょう。現在、京大では総合人間学部(大学院人間・環境学研究科)や、理学部(同理学研究科)の教員が主体となって、哲学や歴史学、数学など、主に学部1、2年生の教養科目を担当しています。昔は「教養部」に所属する専任教員たちが担ってきましたが、各学部の専門教育の充実を求める社会的な要請もあって、教養部は93年に廃止されました。

 その後、各学部が専門科目の比重を高めていく一方で、経済界を中心に「大学を卒業しても、本当に必要な教養が身についていない」と松本学長へ苦言が寄せられているのだそうです。教養部廃止による組織再編では、教育改革が成功していないという意見が根強いのです。

Q じゃあ国際高等教育院は教養部みたいな組織ってこと? 昔に戻るから反対する人がいるのかな。

A 確かに、かつての教養部は教養科目の授業を専任で行ってきた組織ですが、今の総合人間学部の教員は、それぞれ独自の専門分野を持ち、研究活動にあたっています。大学側も「元の教養部には戻らない」と説明していますし、現段階で揺り戻しが起きるとは考えにくいですね。

Q 結局、何に反対なの? 本当に分かりにくいよ。

A 具体的な組織改革の中身は明らかにされていませんし、多くは新年度から検討することになりますが、少なくとも今の京大生が受ける授業に大きな変化はなさそうです。

 でも、外国人の教員数を今後5年間で100人ほど増やし、教養科目の講義の約半数を英語で行う構想が浮上しています。この構想にも教員の間から「本当にできるのか」と疑問の声がありますが、いずれにしても京大生の将来のためになる改革であってほしいですね。<回答・五十嵐和大>

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