【大学改革プラン】福島大こそ先進事例『福島民報』論説2013年1月28日付

『福島民報』論説2013年1月28日付

【大学改革プラン】福島大こそ先進事例

 国公立大入学試験の出願がきょうから始まる。福島大は昨年、東京電力福島第一原発事故の影響で志願者が大幅に減ると心配されたが、実際には前年を大幅に上回った。県内出身者がかなり増えたためだった。景気が低迷する中で地方では国公立大への受験生回帰が進み、「地元の大学で学び、福島の復興に役立ちたい」との決意を持つ志願者が多かったものとみられる。

 福島大は高い倍率の翌年に、敬遠されて倍率が下がる傾向がある。大学側は、昨年受験生を送り出した県内外の500近い高校にチラシを送って放射線への取り組みや災害復興支援学の開設などをPRしてきた。今春も受験生が集まることを期待したい。

 福島大は東日本大震災直後から復興支援に着手、35件もの多岐にわたる緊急研究課題に取り組んだ。その成果を関係自治体に報告するなど、被災地の大学としての役割を果たしてきた。

 ただ、本県の復興に向けて歩む福島大に、文部科学省の大学改革実行プランが重くのしかかる。急激な少子化、国際化などが進む中で、大学・学部の設置目的や公的教育機関としての存在意義を問い直す内容で、昨年6月に公表された。

 改革プランが出た背景には、国立大への財政負担を減らしたい財務省の意向があるとみられる。改革が実行されれば、学部の再編ばかりか大学の統廃合すらあるのではないかとの懸念が出ている。特に規模が小さい地方の大学ほど苦しい立場にあるという。

 今後存続するためには、今ある学部が地域のために役立っているか、その地域に必要なのか-などが大きなポイントとなる。

 福島大は時代の要請を先取りするかのように、既に平成16年に学部を再編している。旧制福島師範時代からの伝統がある「教育学部」の名称をなくすなどして4学類で新たなスタートを切った。

 震災後は大学全体で地域のために一層努力してきた。地方の大学が自治体や住民と連携して地域を支援している例として、文科省は福島大生が避難所の子どもに勉強を教えたことを挙げている。

 本県の復興には福島大での研究と人材育成が欠かせない。放射線や除染、再生可能エネルギーなどの研究は地元大学ならではの「地の利」もあるはずだ。

 福島大には、本県が原発被害から立ち上がるために大きな使命を持つ。改革プランで画一的に縮小したり切り捨てたりすることはできない、と訴えたい。(佐藤 晴雄)

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