奨学金の返済困難者を支援 「全国会議」設立へ『東京新聞』2013年1月24日付

『東京新聞』2013年1月24日付

奨学金の返済困難者を支援 「全国会議」設立へ 

 大学卒業後に奨学金の返済で苦しむ若者が多い現状を打開したいと、全国各地の法律家や学者らが、三月にも「奨学金問題対策全国会議」(仮称)を設立する。返済困難者の救済だけでなく、奨学金制度の抜本的な改善を求める運動を展開する方針だ。 (白井康彦)

 会社員の平均給与の減少など家計の悪化が目立ち、大学生の奨学金利用者の割合は年々上昇。今は約五割に達している。卒業後、日本学生支援機構への返済が遅れている人も増え続け、二〇一二年三月末で約三十三万人に及ぶ。

 今後は、大学卒の男女が結婚した場合、およそ四分の一の夫婦は、二人とも奨学金を返済していくことになる。合計の返済月額は、二万~四万円程度の夫婦が多くなりそうだ。

 全国会議の代表幹事の一人に就任予定の大内裕和・中京大国際教養学部教授は「奨学金の返済ができるのか、という心配で結婚できなくなったペアの話も聞く。奨学金問題も一因に、少子高齢化が加速しかねない」と訴える。

 生活が厳しい家庭から大学に入学し、卒業後に非正規労働に就職したようなケースはさらに深刻だ。毎月十万円を四年間借りて、年利3%の金利で二十年間で返済するケースでは、返済総額は約六百四十六万円にもなる。大内さんは「非正規労働に就職した場合は、返済がかなり難しいのが現実」と説明する。

 全国会議の事務局長は、日本弁護士連合会貧困問題対策本部に所属する岩重佳治弁護士が務める予定。岩重さんはこの十九日、東京都内で開かれた消費者問題のリレー報告会で、これまでの経緯などを報告。十二日の大阪市内の会合では、多重債務問題に取り組んできた全国各地の法律家や市民団体幹部らと、今後の活動の進め方について協議した。

 岩重さんは「これまで奨学金返済に苦しむ人への支援活動は、教育現場に関わる労働組合などが中心だったが、多重債務を抱えているケースも少なくなく、法律家などがしっかり関わっていくべきだ」と強調。法律家らが賛同した。

 呼び掛けを受け、多重債務者の支援に取り組む市民団体「愛知かきつばたの会」は二十日の総会で、奨学金の相談対応に力を入れることを決めた。

 全国会議は、返済困難者を対象にした相談・救済活動を積極的に行うほか、奨学金問題の集会も頻繁に開く予定だ。

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 大学生や高校生にも、全国会議の活動に協力していこうという動きがある。昨年九月には、中京大の学生らが「愛知県学費と奨学金を考える会」を結成。同会の会合には名古屋文理大、名古屋大などの学生のほか、高校生も参加した。全国会議が開く集会では、こうした若者らの体験発表も想定されている。

 日本の奨学金制度では、一番の柱は日本学生支援機構の奨学金だ。これには、返済不要の給付型はなく、すべてが貸与型。貸与型の中でも、無利息のタイプの割合は小さくなる一方だ。

 これまでは、給付型の導入や無利息タイプの拡大などを求めて、労組などが中心の「奨学金の会」「奨学金連絡会」といった団体が国などに要望活動をしてきた。奨学金の会の関係者は「全国会議とはしっかり連携していきたい」と話す。

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