【進学と奨学金】希望をさらに支えよう『福島民報』論説2013年1月14日付

『福島民報』論説2013年1月14日付

【進学と奨学金】希望をさらに支えよう

 高校、大学の受験期を迎えた。生徒にとっては人生の大きな岐路となる。経済的な問題や格差が将来の妨げとなってはならない。公設の奨学金はあるものの、返還義務を負う「貸与型」が主軸だ。負担のない「給付型」を充実すべきだ。民間の支援にも期待したい。勉強や文化・スポーツ活動を通じて知識、技術、体験を得た若者は復興を目指す本県にも大きな力となる。

 日本政策金融公庫の平成23年度調べで、県内で高校入学から大学卒業までに必要な費用は子ども一人当たり1055万5000円。前年度と比べて25万円増えた。一方で、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故に伴う家屋修理費や収入減、家族分散などが家計に影を落とす。奨学金が助けになるはずだ。

 県奨学資金に「震災特例採用」が23年5月に設けられた。国の臨時特例交付金に基づく。震災や原発事故で被災した高校生や専修学校生に月額1万8000~3万5000円を貸与する。23年度は1545人、24年度は1332人が受給した。4月からも新たに募集し、26年度まで継続する。

 さらに進学した際には返還を猶予する。卒業後1年目の所得見込みが基準未満なら全額を免除する。高校卒で320万円、大学卒で360万円。大半が返済不要となろう。実質的な「給付型」として評価したい。

 ただ、大学生は特例採用の対象外だ。日本学生支援機構や県の貸与型奨学金などがあるが、近年は申請をためらう事例も目立つという。就職がうまくいかずに十分な収入が見込めない場合、返済が重い負担となるためだ。

 新政権の下村博文文部科学相は高校無償化に所得制限を採り入れ、浮かせた財源で低所得者向け給付型奨学金を創設する考えを示している。早期に実現してほしい。

 震災を機に民間の財団、団体が被災者向け奨学金を設けたり、拡充したりしている。支給額・数に限りはあるが、給付型が中心だ。昨年末発足したクリナップ財団は、大学生らに月額2万円を支給する奨学金制度をつくる。4月から募集する計画だ。東日本大震災復興支援財団による高校生対象の「まなべる基金 緊急支援奨学金」は8月末まで申し込みが可能だ。入学金や授業料の減額・免除措置を講じている大学や短大は多い。

 生徒、学生も活用を探ってほしい。志望先や家庭の状態などの条件次第で、恩恵を受けられる場合がある。希望を持ち、自ら動けば道はさらに広がる。(鈴木 久)

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