法科大学院修了でも…司法試験は不合格、法知識活用へ就活サポート『産経新聞』2013年1月3日付

『産経新聞』2013年1月3日付

法科大学院修了でも…司法試験は不合格、法知識活用へ就活サポート

 法科大学院は出たものの、法曹への道は断念-。そんな法科大学院修了者の就職活動を支援する動きが広がっている。新司法試験で不合格となった修了者が一般企業に職を求めても、年齢の高さに対して社会人経験が乏しいため、企業側に敬遠されるケースも多かった。こうした中、修了者の法的知識に着目し、企業への紹介を行う会社が登場。法科大学院側も「就職支援をアピール材料に」と同社と提携を始めた。(滝口亜希)

■気がつけば30歳

 「学んだことを強みにできるのではないかと法務の仕事を希望したが、面接にさえ進めなかった」と就職活動の厳しさを振り返るのは関西学院大学法科大学院を修了した花(はな)畑(はた)雄(ゆう)さん(31)だ。

 新司法試験では法科大学院修了後5年以内に3回の受験が認められているが、花畑さんは平成24年試験までに3度不合格に。いわゆる“三振”となり就職活動を始めた。このときすでに30歳。資格は普通乗用車の運転免許しかなく、就職サイトから応募した5社は全て書類選考で落ちた。

 文部科学省によると、17~19年度の修了者約1万1500人のうち5年以内に合格したのは約5900人。ほぼ半分が受験資格を失った計算だ。企業への就職に切り替えても、さらに苦労する例は少なくない。

 人材紹介を行う「モアセレクションズ」(東京都渋谷区)の上原正義社長(31)は「20代後半から就職活動を始めることになる一方、ほとんどの人は社会人経験がないため、企業が採用に慎重になる場合が多い」と打ち明ける。

 ただ、同社では「契約内容の確認など法的素養がある人材が求められる場面は多い」と企業側のニーズに着目。修了生を対象に人材紹介を始め、インターンシップ期間を経て採用を検討してもらう方式などで、花畑さんを含めこれまで約120人の就職を斡旋(あっせん)した。

 修了生の採用を検討する広告代理店「オフ・ザ・ボール」(福岡市)の小松誠(たか)昌(まさ)社長(33)も「顧問弁護士は業務の細かい事情までは把握していない。法律を分かる人が社内にいれば、現状に即した形で弁護士に要望を伝えられる」と、橋渡し役を期待する。

■大学院も危機感

 法科大学院側にも“就職難”への危機感が漂う。新司法試験全体の合格率低迷などを背景に、入学志願者数が減少しているためだ。

 関西学院大学法科大学院職員の角(かど)谷(や)雄(ゆう)城(き)さん(32)は「本学の合格率だと、法曹になれない人の方が多い」と話す。24年試験を受けた186人のうち、最終合格者は27人。こうした状況を受け、同大学院では今年度からモア社と提携し、履歴書の書き方や面接方法を指導するセミナーを開催。希望者にはインターン先企業の紹介も行う。

 角谷さんは「初めから企業就職を志望する学生は少ないが、入学志願者を確保する上でも教育機関として『出口』を整えておく必要がある」と指摘。「志願者向けのアピール材料にしていきたい」としている。

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