国立大、来春の定員減 「学生の質の保証」狙いも 『朝日新聞』2012年12月27日付

『朝日新聞』2012年12月27日付

国立大、来春の定員減 「学生の質の保証」狙いも

 【小林恵士】国立大・大学院の入学定員の総数が来年度、減少に転じる見通しだ。文部科学省の集計でわかった。18歳人口が減る一方、例外措置があった年を除いて定員は増え続けていたが、大学進学率が5割を超す中、学生の質の確保を目的に定員を減らす大学も現れた。

 18歳人口は、第2次ベビーブーム世代が18歳になった1992年度に約205万人で60年代後半に次ぐピークを迎えた。その後は減少が続き、2012年度には約119万人まで減った。一方、国立大・大学院の定員は、92年度の13万5067人から、12年度は15万5212人に増えた。13年度はここから36人減って15万5176人となる見通しだ。

 過去には99、00年度に前年度比で減少した例があるが、18歳人口のピークに合わせた定員増特例の解除に伴う例外的な減少だった。

 また、大学院を除き、大学の学部定員に限った場合にも減った例はあったが、91年に旧文部省の大学審議会(現中央教育審議会)が大学院の整備充実を掲げたことなどを受け、ほとんどは同時に大学院修士課程の定員を増やしており、合計は増え続けていた。

 今回象徴的なのは、佐賀大。「学生の質の保証」のため経済学部の定員を275人から15人減らした。その分大学院定員を増やしたわけではなく、異例の「純減」だ。学内調査で、入試倍率が2倍を切ると入学者の学力が下がる結果が出ており、12年度に1.7倍だった経済学部の定員減に踏み切った。

 佛淵(ほとけぶち)孝夫学長は「学力が低いまま入った子は、辞めたり卒業できなかったりするケースが多い。母数(18歳人口)が減っているのだから、定員を減らすのは当然。後に続く大学も増えるだろう」と説明する。

 文科省の担当者は「国立大が、質の保証を目的に定員を減らすのは例がない」とし、「教育を受ける機会を奪わないよう、近くに同様のことが学べる大学があるかなどに配慮が必要だ」と話す。

 大学教育に詳しい矢野眞和・桜美林大学教授は「18歳人口が減る中、定員を今まで増やし続けてきたのが鈍感。定員を減らす動きは必然の流れ。経営戦略として、学生の質を担保するという考え方は合理的だ」と話している。

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