県立大基本構想の決定時期先送り、県議会など歓迎の声『信濃毎日新聞』2012年11月7日付

『信濃毎日新聞』2012年11月7日付

県立大基本構想の決定時期先送り、県議会など歓迎の声

 県短大(長野市)の四年制化による新設県立大学の基本構想をめぐり、阿部守一知事が決定時期を先送りした6日、基本構想素案に反発していた県会や県短大関係者は歓迎の声を上げた。来年度予算編成や来年度からの新たな総合計画策定が大詰めを迎え、知事側が県会側との対立の火種を取り払った格好だ。

 田中真紀子文部科学相がこの日、来年度新設を予定した3大学の設置不認可問題で、厳格な審査につなげる新基準を設ける考えを表明したことも、県側が四年制大学開学に向けて慎重に検討する要因に。阿部知事は情報収集を進める考えを示している。

 基本構想素案への異論が噴出した9月県会後、県側は和田恭良副知事ら幹部が県会各派に素案の再説明を試みた。しかし理解は得られず、知事は仕切り直しを指示したとされる。10月まで実施した県民意見募集で寄せられた800件近くの意見にも異論が相当数含まれているとみられる。

 6日朝も共産党県議団が「県短大の発展的改組という現在までの検討と議論の経過を踏まえてほしい」と知事に要望。解決の糸口を見いだせない知事がその後の県会正副議長らとの懇談会で基本構想決定時期の先送りを表明すると、県会側は「じっくり意見を聴いて結論を出してほしい」(平野成基議長)、「大変歓迎する」(改革・新風の寺島義幸副代表)と反応した。

 管理栄養士養成課程の設置を求め、素案に反発していた県短大同窓会「六鈴会」の岡村昭子会長は「素案の内容を早めに進めないという点で良かった」と好意的。ただ、議論の長期化による開設時期の先延ばしには懸念も示した。四年制化を求めてきた鷲沢正一長野市長は6日の定例会見で「困ったことだと思うが、時間が多少かかるのはやむを得ない」と述べた。

 一方、管理栄養士養成課程がある松本大学(松本市)を運営する学校法人松商学園の高橋慈夫事務局長は「私大も県立大も両方が発展する形でじっくり話し合うなら」という条件付きで「(年内にこだわらない姿勢は)評価できる」とした。

 関係者の認識には開きがあり、合意形成が容易でないことに変わりはない。県側が決定の先送りを経て、どんな内容の基本構想を示すかが議論の行方を大きく左右する。

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