山大不祥事とまらず、学長「対策思い付かない」『読売新聞』山形版2012年11月10日付

『読売新聞』山形版2012年11月10日付

山大不祥事とまらず、学長「対策思い付かない」

 山形大で今年度、学生ら関係者が相次いで逮捕されるなど、不祥事が止まらない。再発防止に取り組み始めた直後に4人目の学生が逮捕され、結城章夫学長は9日の記者会見で、「新たな対策は思い付かない」と困惑の表情を浮かべる。一方で、専門家からは「学生に対するメンタルケアが必要」との指摘も出ている。

 結城学長は同日の会見で、4人目となる医学部生が先月17日に逮捕されたことについて問われ、「誠に残念だ」と述べた後、「今までの対策をやっていくしかない。新たな対策はちょっと何とも、もう思い付かない」と力なく語った。

 逮捕前日の先月16日、結城学長は3人目の逮捕者が出たことを受けて、会見で「異常事態」と発言し、学生への指導を強化する方針を打ち出した。

 学内には「山形大の学生であるという誇りと自覚を持ち、行動を律するよう強く求める」と学長名の告示を掲示。学部ごとに学生を集めた集会を開き、学部長らが告示の内容を読み上げて注意喚起した。教授らにも直接指導を求め、必修の語学授業やゼミ活動の時間などを利用して、学生に節度ある行動を呼びかけた。

 同大関係者は「成人している学生らに伝える難しさはあるが、教育機関として私生活の指導は必要。一定の効果はあるはずだ」と強調する。

 山形大は今年度、学生のほか、付属病院医師の酒気帯び運転による検挙などを含めると、不祥事に絡んだ関係者は計8人に上る。

 このため、教職員の綱紀粛正にも力を入れる。10月には県警担当者による交通講習会を学部ごとに開催。小白川キャンパスの3学部では、同大理事が教授会に出席し、飲酒運転の禁止を直接呼びかけるなどした。

 だが、一方的に再発防止を呼びかける大学側の対応に、冷めた反応を示す学生も少なくない。

 理学部3年の男子学生(21)は「大学生を相手に、集会の呼びかけで対応しようというのが間違い」と指摘。人文学部3年の女子学生(21)は「逮捕されたのは一部の人。大学が集会を開いて注意を呼びかけても、気を付けようと思わない人には効果がない」と疑問を口にする。

◇メンタルケア不可欠

 教育評論家の尾木直樹・法政大教授の話 最近の学生は学力が高く、頭では「やってはいけないこと」と理解していても、悩みを抱えるなどして精神的に追い込まれ、衝動的に犯行に及んでしまうケースが多いのではないか。

 山形大のように、学生の意識改革のために集会を開いて注意喚起をするのは、ナンセンス。本当に大事なのは、メンタルケアだ。カウンセリング室に来るのを待つのではなく、大学側から積極的に心の健康状態をチェックしてあげる態勢づくりを進めないと、同様の不祥事が相次いでしまう可能性がある。

 ここ5、6年、精神的に未成熟な20歳代の学生らが、非常に多くなっている。大学側は「30歳までは思春期」と考えて、対応する必要がある。

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