文科省「統廃合選択肢に」~山陰法科大学院への交付金削減『読売新聞』島根版2012年9月18日付

『読売新聞』島根版2012年9月18日付

文科省「統廃合選択肢に」~山陰法科大学院への交付金削減 

 存続か統廃合か――。受験者の減少や司法試験合格率の低迷が続く島根大大学院法務研究科(山陰法科大学院)。文部科学省は2013年度の同法科大学院への運営費交付金の削減を決定した。大学側は今後、将来の統廃合など運営方法の再検討を迫られる。「法曹の卵」を育ててきた拠点は今、岐路に立たされている。(寺田航)

■増えない受験者

 山陰法科大学院は、「地域に根ざした法律家を育てよう」と地元の要請を受け、法科大学院制度が始まった04年度に設立された。受験者数は09年度まで毎年、定員の30人を上回っていたが、徐々に減少。卒業後の仕事に恵まれた都会の法科大学院に流出しているとみられる。

 10年度は定員を20人に減らしたにもかかわらず、初の定員割れ。今年度も受験者は15人。合格後に入学を辞退したケースもあり、結局入学者は3人に。入学者数の伸び悩みもあって、今年度の司法試験合格率は5・88%と全国74校中63位だった。

 11日に今年度の司法試験合格者が発表されたのを受け、文科省は、合格率が過去3年とも全国平均の半分未満であることなどを理由に、同法科大学院への運営費交付金の削減を決定。将来的な統合・撤退を選択肢とすべき、とした。

 国立大の法科大学院が削減対象とされたのは島根大が初めて。同省専門教育課は「今後の統廃合などは、大学の判断に任せる」としながらも、「どんな地域にも法曹を適正に配置することは重要。ただ、受験者が増えないということは、地域にニーズがないということでは」と突き放す。

■灯を消すな

 一方、同法科大学院の藤田達朗・島根大法務研究科長は、存続に意欲を見せる。昨年までに、同法科大学院で学んで司法試験に合格したのは計16人。そのうち6人が地元で弁護士活動を行っている点を挙げ、「地域に密着した弁護士を育てて送り出してきた。司法過疎を解消する上でも一定の役割は果たしている」と強調。

 同大学は、交付金の削減で、人件費の6分の1程度が不足するとみている。当面、若手の教員を起用しながら、教員の人件費を抑えることや、募集定員の削減などを視野に対策を考えるという。

 山陰唯一の法曹養成機関の灯を消すな――。危機感を感じてきた県弁護士会の有志は7月、法科大学院の存続を求める要望書を島根大に提出。「山陰を離れて都会の法科大学院に通うことができない人もいる。そんな人たちにも法曹になる機会を与えてきた」と訴える。

 同法科大学院OBで、松江市で活動する西村信之弁護士(31)は鳥取県境港市出身。08年度に修了し、司法修習を経て、今年1月、晴れて弁護士になった。交付金削減に「制度が始まってまだ10年もたっていない。地元のために働きたいという若者のためにも、数字だけ見て早まった結論を出すべきではない」と語った。

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