予算執行抑制 異常事態の解消を急げ『秋田魁新報』社説2012年9月6日付

『秋田魁新報』社説2012年9月6日付

予算執行抑制 異常事態の解消を急げ

 国政の混乱が地方財政に深刻な影響を及ぼしつつある。政府は4日に予定していた地方交付税4兆1千億円の支払いを当面先送りした。赤字国債発行を可能にする公債発行特例法案の成立のめどが立たず、国の財源が枯渇する恐れがあるためだ。

 交付税のほか国立大学法人への運営費交付金支払いも先送りするなど、予算執行を抑制する前代未聞の事態である。長期化すれば国民の暮らしにも影響が出かねない。にもかかわらず国会は野田佳彦首相に対する問責決議が可決されて以降、事実上の休会状態となっている。責任放棄以外の何物でもなく、早急に法案を成立させるべきだ。

 公債法案は与党が強行採決して衆院を通過させたが、参院で可決される見込みは立っていない。野党が多数のねじれ国会では、公債法案が与野党間の駆け引きの道具に使われている。昨年も、当時の菅直人首相を退陣に追い込むために野党側の戦略に利用された。

 今回の異常事態も衆院解散をめぐる与野党の対立によるものだ。国会がねじれるたびに同じような事態が繰り返されるならば、国・地方を問わずに行財政運営に無用な混乱が生じる。たとえねじれの状況下であっても、暮らしに直結する予算の執行を政争の具にするようなことはあってはならない。

 国の本年度予算は、一般会計歳入の4割に当たる38兆3千億円を赤字国債で賄う。公債法案が成立しなければ、10月末にも財源が底を突くという。だからといって、交付税の支払いを先送りするというのは、地方からすればあまりにも一方的で乱暴な話ではないだろうか。

 交付税4兆1千億円のうち、2兆7千億円は今月中に配分されるが、道府県分は予定額の3分の1しかなく、残りは公債法案成立後になるという。道府県は金融機関からの一時借り入れなどを余儀なくされ、本県も330億円を借り入れる。

 借り入れによって、短期的には大きな影響はないかもしれない。だが、交付税は使途が限定されない一般財源で、地方財政の主要な歳入となっている。先送りが長引けば、事業の延期、縮小といった支障が生じる恐れもあるだろう。

 本県の佐竹敬久知事も「12月以降は大変厳しい状況になる」と法案成立がずれ込むことに懸念を示し、他の知事からは「来年になれば資金ショートする」など不安の声が上がる。政府は借り入れに要する金利の肩代わりを検討しているようだが、それも原資は税金であり、結局は国民の負担になってしまう。

 高齢化や経済の疲弊など地方では課題が山積し、予算執行の抑制による行政の停滞は避けなければならない。民主、自民両党内では党首選びが過熱するが、遅くとも秋の臨時国会までに公債法案を成立させることが最低限の責務であることを与野党は忘れてはならない。

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