予算執行抑制 政争のしわ寄せ国民に『北海道新聞』社説2012年9月2日付

『北海道新聞』社説2012年9月2日付

予算執行抑制 政争のしわ寄せ国民に

 赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の成立のめどが立たないことを受け、政府は2012年度予算の執行を9月以降、抑制すると発表した。

 4日に予定されている地方交付税の配分は一部、先送りする。赤字国債が発行できずに予算執行を抑制するのは初めて。

 高橋はるみ知事は、記者会見で「交付税が滞れば、行政サービスに大きな影響が出てくる」と懸念を表明した。

 特例公債法案は民主党が衆院で単独可決したが、衆院解散時期をめぐる与野党の対立のあおりで、たなざらしになっている。

 同法案を「政争の具」にして、国民生活を犠牲にすることは許されない。今国会の会期末は、8日に迫っている。与野党は今国会中の法案成立に向け、ぎりぎりの努力をしなければならない。

 政府は、本年度予算の一般会計(90兆3千億円)の4割強に当たる38兆3千億円分の財源を赤字国債で賄う。特例公債法案が未成立のまま今のペースで支出を続けると、10月末に財源が底を突くという。

 予算抑制策ではまず、各省庁の事務経費や庁舎の光熱費、職員の出張旅費などの行政経費(年間約3兆円)を半分以下にする。

 生活保護費や医療、介護などは抑制対象から除外するが、国立大学法人向けの運営費交付金や私学助成は半分以下に抑えられ、国民生活への影響も出そうだ。

 地方交付税の配分先送りも大きな問題だ。政府は4日、交付税を受けていない東京都を除く46道府県分として2兆1千億円、市町村分として2兆円を配分する予定だった。

 先送りの対象は財政力の弱い自治体を除き、道府県分を中心に検討するという。

 先送りされた自治体は財源の穴埋めのため、金融機関からの一時借り入れなどを迫られる。政府は、金利支払いの肩代わりをして自治体側の理解を得たい考えという。

 だが、肩代わり分は国の新たな財政負担となり、ツケを払うのは結局、国民だ。

 特例公債法案は昨年の菅直人前首相の退陣をめぐる政局でも、その成立が「退陣3条件」の一つだった。

 国会空転の原因は野田政権の強引な国会運営にある。しかし、国民生活に直結する法案の成立には野党にも重い責任がある。

 民主党内には「法案が成立しなければ、世論の批判は野党に向く」との思惑があるとされるが、党利党略と言わざるを得ない。

 与野党とも、国民に背を向けた政治に終止符を打つべきだ。

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