認可保育所が「認可外」に 佐大病院の変更で波紋『佐賀新聞』2012年8月31日付

『佐賀新聞』2012年8月31日付

認可保育所が「認可外」に 佐大病院の変更で波紋 

 佐賀大学医学部附属病院(佐賀市鍋島)が来年度から医学部構内にある認可保育所を認可外保育施設へ変更する計画を進めており、保護者に戸惑いが広がっている。病院側は「受け入れ人数の拡充など柔軟な運用で医師、看護師らのニーズに応えるため」としているが、保護者の中には「協議もなく一方的」との声もある。佐賀市や佐賀県は、病院側が開設時に認可保育所を要望した経緯や保護者の意向を踏まえて現状維持を要請する。

 保育所は病院が園舎を建設し、2008年3月に認可保育所のひなた村自然塾(同市大和町)の分園として開所。病院関係者の子どもの入所が8割以上を占め、それ以外の一般利用者もいる。午後10時までの夜間保育も実施し、当初30人だった定員は現在、50人まで増えている。

 病院は、看護師らへのアンケートで佐賀市外在住者が利用しにくい実情や24時間保育の要望があったと説明。また、現在は別々に運営する通常保育と病児保育の一体化や看護職を今後100人増員する計画も踏まえて子どもの受け入れ拡大を課題に挙げる。

 認可保育所は定員、開園時間など細部にわたって行政の認可が必要で、運営面で一定の制約がかかる。そのため、病院は職員のニーズに合わせてより柔軟に対応できる認可外保育施設に切り替える方針を決めた。ひなた村自然塾との園舎使用貸借契約の期限が切れる来年度からの実施で、新たに運営先を公募するとしている。

 計画では、厚生労働省の事業所内保育施設に関する助成金も活用、保育士の配置や設備など現行水準を維持する。地域に開放していた利用者は病院関係者に限定し、新規に受け入れない。病院は「子育て中の職員が働きやすい環境づくりは地域医療を担う上で不可欠。保育園を利用しやすくするための運営の見直しは必要」とする。

 病院関係以外の保護者からは「利用者の意向も確認せず、病院の方針を突然聞かされた」「保育は保育士との信頼関係が大切。預け先があればいいという話ではない」「スタッフが変わることによる子どもの情緒面も不安」などと反発の声が上がる。

 病院側は現在の利用者に対し、保育料を据え置いて受け入れを継続するなど経過措置を提示している。「保護者が今の保育に満足なのは理解できるし、申し訳なく思うが、今の運用では預けられないでいる保護者が出ていることも考えるとやむを得ない」と話す。

 佐賀市教委こども課は「そもそも開設時に病院が認可施設を要望し、それに応じた経緯がある」と指摘した上で、「継続性は認可の前提であり、約束をほごにされた」と批判。保育所の許認可権を持つ県こども未来課は「保護者も現状を変えてほしくないという意向であり、病院に継続を依頼したい」と話す。

 ひなた村自然塾は「子どもにとって最善な方法は何かという視点が抜け落ちている。これまで安全で安心できる保育を行い、成長を見守ってきた責任もあり、継続した形を求めていきたい」と話す。厚生労働省は「行政支援がある認可から任意で認可外になったケースは聞いたことがない」としている。

 

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