国立大学法人法改正案(独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案による国立大学法人法)の解説(1)

国立大学法人法改正案(独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案による国立大学法人法)の解説(1)

                   2012年8月24日     国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局 

1.「独立行政法人」から「行政法人」に

政府は 2012年5月11日に独立行政法人通則法の改正案と関連整備法の2本を提出した。今国会で成立させ、来年の通常国会で統合する個別の法人の統合法案を提出し、2014年4月に新制度に移行する計画とされている。

主な内容は、「独立行政法人」を「行政法人」に改め、「中期目標行政法人」と「行政執行法人」に分類して、それぞれ別の管理運営形態をとることとしている。「中期目標行政法人」は、3~5年の中期目標を設定して裁量性のある事業を実施する非公務員型の法人であり、研究開発事業を実施する法人は研究開発行政法人としてこれにはいる。「行政執行法人」は裁量性のない事業を実施する公務員型の法人であり、文科省に関連する法人は該当しない。なお、法案の詳細については、内閣官房の提出法案の一覧(http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html)から「独立行政法人通則法の一部を改正する法律案」および「独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」を参照されたい。

変更のキーワードとして、「監査機能の強化」、「内部ガバナンスの強化」、「主務大臣の責任による確実な中期目標管理」などがあげられていることからも、独立行政法人の業務運営への関与を強化するという政府の目的を読み取ることができよう。

国立大学法人法には独立行政法人に準拠している部分が多くあり、その部分は連動して変更されるが、それにとどまらず、通則法に準拠していない部分についても政府の関与強化という観点から重要な変更点がいくつかある。しかしながら、これらの変更についてほとんど知られていないのが実態である。

本事務局では、今回の国立大学法人法改正案の内容を独立行政法人通則法改正案の内容と参照しながら、どのような変更が行なわれているのかを何回かに分けて解説する。変更点などの一覧表を掲載するので、それと合わせてお読みいただきたい。

なお、国立大大学法人法改正案は、独立行政法人通則法の関連法ということで350もの関連法と一緒に一括して総務委員会で審議されることが予想される。変更内容の重要さや国立大学法人法の成立の経緯、衆参両院での付帯決議などの観点から、国立大学の内部でも十分検討するとともに、衆院文部科学委員会および参院文教科学委員会で慎重に審議をするよう強く要望したい。

2.国立大学法人法の構造

(1) 現行国立大学法人法(以下、「法人法」)の本体は、41条の条文と附則から成る。しかし、これは見かけ上のことに過ぎない。法人法には、35条の規定により、独立行政法人通則法(以下、「通則法」)の3条、7条2項、8条1項、9条、11条、14条~17条、24条~26条、28条、31条~40条、42条~46条、47条~50条、52条、53条、61条、63条~66条が準用されており、これらを合わせるとその条文の数は80に膨らむ。通則法から準用されている規定の主なものは、「業務の公共性、透明性及び自主性」「財産的基礎」「登記」「監事」「職員の任命」「業務方法書」「年度計画」「年度評価」「中期目標期間評価」「中期目標期間終了時の検討」、そして財務会計に関する規定の大半である。 

(2) 通則法から準用される規定は、法人法の中では、それぞれ、「主務大臣」を「文部科学大臣」、「評価委員会」を「国立大学法人評価委員会」などと読み替えている。また、条文毎に必要な語句の読み替えを行っている。準用規定と読み替えが多いことにより、法人法の条文は大変にわかりにくい構造になっている。この点だけ見ても、主権者である国民を無視した悪法といってよいだろう。

3.改正案の構造

(1) 改正の内容の検討に先立って、法人法案の構造がどうなっているのかを確認しておきたい。現在、閣法として国会に提出されている通則法の改正法案(「独立行政法人通則法の一部を改正する法律案」)では、①法人法には準用されない通則法の条文の改正、②法人法に準用される通則法の条文の改正、が企図されている。③さらに、一括して提出されている「独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」において、法人法固有の条文にも、内容に踏み込んだ変更が目論まれている。 

(2) 改正案の構造および手続きに関して、二つの大きな問題がある。一つは、②の改正が行われることにより、法人法の準用規定も改正されてしまうことである。すなわち、固有の条文を一切いじらなかったとしても、事実上、法人法の改正を行うことができるのである。 

(3) もう一つの大きな問題は、③の改正である。これは本来、通則法の改正に伴う関連法律案として行われてよいようなものではない。 

(4) なお、②と③の改正が行われることにより、法人法の改正案は現在のものにも増してわかりにくい構造になっている。表では、改正の全体像を少しでもわかりやすくするために、条文毎に色分けしてみた。法人法の改正案において、まったく変更されていない条文はマーク無し(白)、細かな字句や条項の番号にとどまる条文は灰色、削除されたものは黄色、現行と同じ通則法の条項を準用するものは黄緑、新設された通則法の条文を準用するものは緑、法人法の固有の条文を変更するものは赤でマークした。通則法にも、さまざまな変更が行われている。新設の条項や内容上の変更があったと見なしうる条項は桃色でマークした。これらが法人法に準用されている場合(黄緑または緑でマーク)、法人法にも実質的な変更が行われたと見なすことができる。 

つづく

一覧表はこちらから

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com