『河北新報』2012年8月28日付
被災企業の産学連携支援、東北で48事業 科学技術振興機構
科学技術振興機構(JST)は27日、東日本大震災の被災地企業と大学など研究機関のマッチングを支援する「復興促進プログラム」として初採択した56事業を発表した。東北では石巻市の企業が取り組む高級ナマコの養殖など48件が対象となった。JSTは1件当たり年間2000万円を上限に最長3年間、研究開発費を支給する。
採択事業の県別内訳は、青森2件、岩手15件、宮城23件、福島11件、茨城5件、千葉3件。一部事業は複数企業が県境を越えて取り組む。企業は今秋中に共同研究を始め、3年以内の実用化や商品化を目指す。
高級ナマコの共同研究は、石巻魚糧工業が弘前大と取り組む。宮城県内の他の3社・団体とともに、アワビも含めた高級食材の水槽内での養殖実現を目指す。養殖用魚粉などの製造販売を手掛ける同社は「食品流通企業とも連携し、将来は中国などへの輸出も目指したい」と意気込む。
水産加工業の丸辰カマスイ(釜石市)は一関高専とともに、加工後の廃棄物だったイカの中骨やサンマのうろこを原料とするサプリメント開発を目指す。東洋刃物(宮城県富谷町)も東北大と共同で、水産加工向けのさびにくい工業用刃物の開発に取り組む。
JSTは支援先を来年度にかけて追加募集する予定で「被災地の企業の売り上げ増や、雇用の拡大につながる研究に期待したい」と話している。
JSTは4月、仙台、盛岡、郡山の3市に「復興促進センター」の事務所を開設。企業から相談を受け付け、研究機関を紹介している。